瓦解する甘い盾

流音あい

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六度目の接触、やり直し

21、対等

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 二人は脱力感に身体をソファに預け、言葉もなく寄り添っていた。先に口を開いたのは彼だった。

「好きな子にあんなことされたら、やっぱり我慢できないよ」
「直前まで余裕に見えましたけどね」
「余裕なわけないじゃん。身体は正直に反応してたし。きよみちゃんエロすぎ」
「それはどうも。先輩も色っぽかったですよ」

 穏やかな空気に、きよみの心も落ち着いていた。身体もすっかり満足しているようで、心地良い疲労感が身体を包み込んでいる。

「でも、やっぱり一回しか出来ませんね、先輩とは」
「うん?」
「入れる前に何度もイかせようとするんだもの。疲れちゃう」
「きよみちゃんが敏感だからでしょ」
「先輩がイかせようとするんでしょ」

 顔を見合わせて笑い合う。前にも似たような会話をしたのを覚えている。

「前戯もほどほどにしてくれないと、本番が持たないわ」
「でもイってる姿見るの、たまらないんだよね」
「……それはちょっとわかります」
「わかっちゃうんだ?」

 彼がきよみの手の中で果てたときのことを思い出す。彼の苦悶に満ちた表情と、彼女によって快感を得ているという事実は、確かに味わい深いものがあった。一番敏感な場所を刺激し合っているでもなく、互いを迎える場所に受け入れているのでもなく、自分が与える刺激に酔いしれる相手の姿を見るのは、他には代えられない満足感と快楽があった。

「私、先輩の苦しそうな顔見るの好きなんで」
「それはなんか怖いなー」

 ふふ、ときよみが笑うと、彼も釣られるように笑った。相手の笑顔に、今はなんの不快感もなく、むしろ胸が温かくなっていく。胸にあったしこりは、すっかり消えているようだ。

「でも先輩の笑った顔も好きです」
「急な素直さも怖いんだけど」
「全部怖いんじゃないですか」
「俺って臆病だからさ。きよみちゃんに嫌われちゃったかなーとか思って、すごく怖かった」

 彼が手を繋いでくる。

「でも仲直りできて良かった」

 また唐突に、少年のような、素直な彼が姿を見せる。こういう顔を見せられると、きよみの胸も少女のように高鳴った。

「晴れて恋人になれたし」
 そういって、ちゅ、と可愛らしく唇を寄せてくる。
「先輩はすぐ調子に乗りますよね」
「そりゃ嬉しいときはテンションも上がるでしょ」

 満面の笑みで見つめられ、きよみはすっかり気が緩んでいるのを自覚した。緩む頬を引き締め直し、だらりとしていた背筋を伸ばす。

「でも先輩の好き勝手にされるのは、性に合いません」
「何の話?」
「一方的にやられるのは気に入らないって話」

 彼のきょとんとした顔には、混乱が滲んでいた。

「次は私が先輩を翻弄する番です」

 彼への怒りは消えた。誤解も解けた。けれど、まだ勝負は終わっていない。やっとスタート地点になったのだ。恋人として、対等な相手として、勝負ができる。一方的な快楽や恋心を与えられるのではなく、与える者同士として勝負ができる。
 企みが滲んだ顔で彼を見遣ると、相手はぼそりと呟いた。

「……十分いつも翻弄されてるんだけど」
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