消えるはずだった予知の巫女は、今日もこの世界で生きている ――異端と呼ばれる騎士さんが、私には綺麗すぎる

豆腐と蜜柑と炬燵

文字の大きさ
11 / 15
第11章

建国祝賀祭の夜

しおりを挟む
「ミオ、まだ衣装借りてないの?」
食事休憩中、向かいに座ったマリアさんが、呆れたように言った。
「え、はい。
ほとんど休憩も取れてないですし……様子だけ見て回ろうかなって」
「もう。若いんだから、踊りくらい出なさい」
背中をぱしぱし叩かれる。
痛い。普通に痛い。
「はは……でも、衣装借りるのもお金かかりますし。
それに、踊る相手もいませんから」
建国祝賀祭は、朝から晩までお城の外の広場や城下町で踊りが続く。
たいまつの周りで、男女が輪になって踊る――
この国では、交際のきっかけになることも多い。
でも私には、まったくご縁のない話だった。
「だったら、ダイスでも誘えば?」
その名前を聞いた瞬間、嫌な予感がした。
案の定。
「聞いてくれるか、ミオ」
ため息混じりの声とともに、
食事を持ったダイスさんが隣に座る。
マリアさんは、
何も言わずに、さっと姿を消していた。
……逃げ足早すぎる。
結局、
私はダイスさんの失恋話に延々と付き合うことになった。

 ________________________________________


その日は、文字通り目が回るほど忙しかった。
建国祝賀祭の二日間、
厨房はほぼ休みなく稼働し続ける。
翌日の仕込み、今日の片付け。
食事は広場で振る舞われ、
「足りなくなる」は許されない。
深夜に近い時間になっても、
私は皿を洗い続けていた。
何度目かのため息をついたところで、
「ミオ、休憩入っていいぞ」
チーフの声がかかる。
「はい。ありがとうございます」
用意してもらった食事を持って、
食堂の端の席に腰を下ろす。
夜勤の騎士たちも、何人か食事をとっていた。
「ミオ」
背後から、聞き慣れた声。
振り返ると、
そこにいたのはレイスだった。
「こんばんは」
「こんばんは。ここ、いいですか」
返事をするのとほぼ同時に、
彼は私の向かいに腰を下ろした。
……正直、今はあまり話したくなかった。
疲れ切った顔。
汗の匂い。
絶対、ひどい状態だ。
それでも。
「二日間、勤務ですか」
話題を振る。
「ああ。ミオも、似たようなものですよね」
「私は、明日の昼から結構休めますから。
レイスさんほどじゃないです」
騎士たちは、この期間ほぼ四十八時間体制だ。
短い休憩を挟みながら、城の警備にあたる。
レイスは、
その合間の食事休憩なのだろう。
会話を続けながら、
手早く食事を口に運んでいる。
……相変わらず何をしてても、絵になる。
そんなことを考えていると、
胸が少しだけざわついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?

宮永レン
恋愛
 没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。  ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。  仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり―――――― 🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました

相馬香子
恋愛
ある日、クローネは婚約者であるレアルと彼の友人たちの会話を盗み聞きしてしまう。 ――男らしい? ゴリラ? クローネに対するレアルの言葉にショックを受けた彼女は、レアルに絶交を突きつけるのだった。 デリカシーゼロ男と男装女子の織り成す、勘違い系ラブコメディです。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

隣国の王族公爵と政略結婚したのですが、子持ちとは聞いてません!?

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
「わたくしの旦那様には、もしかして隠し子がいるのかしら?」 新婚の公爵夫人レイラは、夫イーステンの隠し子疑惑に気付いてしまった。 「我が家の敷地内で子供を見かけたのですが?」と問えば周囲も夫も「子供なんていない」と否定するが、目の前には夫そっくりの子供がいるのだ。 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n3645ib/ )

処理中です...