消えるはずだった予知の巫女は、今日もこの世界で生きている ――異端と呼ばれる騎士さんが、私には綺麗すぎる

豆腐と蜜柑と炬燵

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第12章

幕間 遠くから見ている

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広場を巡回中。

たいまつの灯り。
音楽。
人々の笑い声。

その中を歩いていると、
ふと、視界の端に見慣れた姿が入る。

――美桜だ。

ルビーの木の下に立ち、
祝賀の様子を静かに眺めている。

作業着のまま。
いつもと変わらない、
食堂職員の姿だった。

それなのに。

どこにいても、
すぐに見つけてしまう自分に、
レイスは内心で苦笑する。

少しだけ近づいて、
表情が分かる距離まで来たところで、
足を止めた。

彼女の顔は、
どこか楽しそうで――
それでいて、
ほんのわずかに、寂しげにも見えた。

以前のように、
警護として傍にいることはない。

会話を交わすことも、
確実に減ってしまった。

それでも。

彼女がこの世界に存在している。
こうして、姿を捉えられる。

それだけで、
十分だと思うようにしている。

ただ。

時折見せる、
あの表情だけは、
どうしても胸に引っかかった。

――また、消えてしまうのではないか。

そんな不安を覚えてしまう自分を、
否定できない。

けれど。

どれほど不安が積もっても、
彼女をここにとどめることはできない。

傍にいてほしいと、
願うことも、頼むこともできない。

レイスは、
そっと美桜から視線を逸らし、
小さく息を吐いた。

距離は、
以前よりも、確実に遠くなった。

どこか、よそよそしい。

彼女のほうから話しかけてくれることは、
ほとんどなくなった。

――これでは、友人以下だな。

そんなふうに思って、
胸の奥が少しだけ沈む。

それでも。

巫女だった頃の彼女が、
自分に向けていた感情には、
確かに好意が混じっていると、
あの時は思っていた。

「偽りの自分では、気持ちに応えられない」

赤い顔でそう言われたら、
勘違いしてしまうのも、無理はない。

けれど今になって思えば、
あれは同情心が大半だったのかもしれない。

知り合いがいない不安からくる、
一時的な刷り込みのようなものだったのだろう。

それでも。

容姿のこともあり、
愛されることを知らずに生きてきたレイスにとっては、
それが同情だったとしても、
嬉しいと感じてしまうほどの言葉だった。

だから、今は。

ただ、美桜が幸せでいてくれればいい。

そう願うだけで、
十分なのだと、
自分に言い聞かせる。

レイスは、
もう一度だけルビーの木の方を見やり、
そして静かに、その場を離れた。
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