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第13章
すれちがう告白
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「本当に、楽しかったです」
私は、せいいっぱいの気持ちを込めてレイスさんにお礼を言った。
「それは、よかったです。ただ……急に仕事が入ってしまって、あまり時間が取れず、すみません」
「そんな……。私のほうこそ、お仕事でお疲れなのに、お付き合いいただいてしまって」
申し訳なくなって、思わずそう口にする。
けれどレイスさんは、やわらかく首を振った。
「謝らないでください。そもそも、お誘いしたのは私ですし……久しぶりに、本当に楽しかったです」
「ありがとうございます。それにしても……ここ、本当に町の明かりがきれいに見えますね」
丘の上から、眼下に広がる景色を眺める。
「以前、連れてくるとお約束していましたから。こうして果たせて、よかったです」
――以前。
それは、私がまだ別の姿だった頃のことだ。
半年と決めたはずなのに、気づけば一年以上の時間が過ぎてしまっていた。
「あの……レイスさん」
私は深呼吸をしてから、彼のほうへ顔を向ける。
レイスさんは、少し首をかしげながらも、静かに耳を傾けてくれた。
「本当は……もっと早く言うべきだった言葉だと思います。でも……なかなか、言い出せなくて」
一度、言葉を整える。
「レイスさん、以前の私におっしゃいましたよね。このような容姿では、好意を持ってくれる人などいない、と」
その瞬間、レイスさんは驚いたように私を見る。
「あ……ですが――」
言い終わる前に、私は顔が熱くなるのを感じながら、続けた。
「でも……私は、好意を持ちました」
一瞬、彼の表情が固まる。
それから、少し照れたように微笑んで、
「あの言葉に……私は救われました。本当に、うれしかったです」
その言葉に、都合のいい考えが一瞬、頭に浮かび、私はあわててそれを消し去った。
決意が鈍らないように、なんとか言葉を絞り出す。
「私……いつまでたっても、レイスさんに気にかけていただいて……すごく、うれしいんです」
正直な気持ち。
「本当に、うれしいんですけど……」
小さく息を吸ってから、
「もし……今の私のことが、レイスさんの中で引っかかっているのだとしたら……もう、心配なさらなくて大丈夫です」
言葉を選びながら、ゆっくりと続ける。
「女王陛下のおかげで、一人でやっていける仕事もいただきましたし……今は、自分の足で立てています」
胸の奥が、少しだけ痛む。
それでも――これは、伝えなければならない。
「ですから……どうか、レイスさんは」
顔を上げる。
「ご自身の幸せを、考えてください」
しばらく、沈黙が落ちた。
レイスさんはうつむき、表情が読み取れない。
言い方が悪かっただろうか。
これは、私の本心だ。
もちろん、私の傍にいることがレイスさんの幸せなら、それ以上のことはない。
でも……そんな都合のいい話があるとは、思えなかった。
黙り込む彼を前に、どうしていいかわからなくなって、
「あの……本当ですから。レイスさん、小さい頃はつらい思い出ばかりだったと伺いましたし……だから、幸せになってほしくて……えっと……」
言葉が、どんどん散らかっていく。
そのときだった。
「……私が、ほしいのは」
レイスさんが、低くつぶやく。
そして、まっすぐに私を見る。
「美桜……あなた一人です」
「ですから、私は――」
私が続ける前に、彼は静かに言葉を重ねた。
「私にとっては、ミオであっても、美桜であっても……どのような容姿であっても、関係ありません」
意味がわからず、私は首をかしげる。
「私のことを、きちんと見ていてくれたのは……今、目の前にいる貴方です」
ゆっくりと、噛みしめるように。
「確かに、最初は以前とまったく違う姿に戸惑わなかったと言えば、嘘になります。ですが……今は、その姿のほうが自然に感じています」
少しだけ、困ったように笑う。
「もっとも……今の姿が美桜なのですから、当たり前かもしれませんが」
私の思考は、完全に止まっていた。
何を言われているのか、理解が追いつかない。
固まった私を見て、彼は少し照れたようにしてから、
「すぐに、とは申しません。ただ……」
一度、言葉を切る。
「いずれ、私の妻となることを、今から真剣に考えていただけませんか」
真剣な眼差しが、私を射抜く。
――妻。
言葉の意味が、すぐには結びつかなかった。
頭の中で何度も反芻して、ようやく理解する。
「え……あ、えっと……その……レイスさん……」
それ以上、声が出ない。
顔が、どんどん熱くなる。
レイスさんは、困ったように微笑んだ。
「突然、このようなことを言われては……困りますよね」
それから、少し真剣な声で続ける。
「もし、ほんの少しでも私のことを想ってくれるのであれば……考えていただければと」
一拍置いて、
「もちろん、嫌でしたらすぐ忘れてください。その場合でも……これからは、良い友人として、お付き合いできればと思っています」
ありえない展開に、私は言葉を失ったまま立ち尽くす。
そんな私を見て、レイスさんは本当に困ったような表情になり、
「美桜……すみません。もし嫌でしたら、本当に忘れてください。もう遅いですし、送ります」
そう言って、私の背中をやさしく押す。
「あ……あの……私……」
必死に、声を絞り出す。
「考える……時間を……その……」
途切れ途切れの言葉。
それでも、彼はやさしく微笑んで、
「わかりました」
そう、答えてくれた。
私は、せいいっぱいの気持ちを込めてレイスさんにお礼を言った。
「それは、よかったです。ただ……急に仕事が入ってしまって、あまり時間が取れず、すみません」
「そんな……。私のほうこそ、お仕事でお疲れなのに、お付き合いいただいてしまって」
申し訳なくなって、思わずそう口にする。
けれどレイスさんは、やわらかく首を振った。
「謝らないでください。そもそも、お誘いしたのは私ですし……久しぶりに、本当に楽しかったです」
「ありがとうございます。それにしても……ここ、本当に町の明かりがきれいに見えますね」
丘の上から、眼下に広がる景色を眺める。
「以前、連れてくるとお約束していましたから。こうして果たせて、よかったです」
――以前。
それは、私がまだ別の姿だった頃のことだ。
半年と決めたはずなのに、気づけば一年以上の時間が過ぎてしまっていた。
「あの……レイスさん」
私は深呼吸をしてから、彼のほうへ顔を向ける。
レイスさんは、少し首をかしげながらも、静かに耳を傾けてくれた。
「本当は……もっと早く言うべきだった言葉だと思います。でも……なかなか、言い出せなくて」
一度、言葉を整える。
「レイスさん、以前の私におっしゃいましたよね。このような容姿では、好意を持ってくれる人などいない、と」
その瞬間、レイスさんは驚いたように私を見る。
「あ……ですが――」
言い終わる前に、私は顔が熱くなるのを感じながら、続けた。
「でも……私は、好意を持ちました」
一瞬、彼の表情が固まる。
それから、少し照れたように微笑んで、
「あの言葉に……私は救われました。本当に、うれしかったです」
その言葉に、都合のいい考えが一瞬、頭に浮かび、私はあわててそれを消し去った。
決意が鈍らないように、なんとか言葉を絞り出す。
「私……いつまでたっても、レイスさんに気にかけていただいて……すごく、うれしいんです」
正直な気持ち。
「本当に、うれしいんですけど……」
小さく息を吸ってから、
「もし……今の私のことが、レイスさんの中で引っかかっているのだとしたら……もう、心配なさらなくて大丈夫です」
言葉を選びながら、ゆっくりと続ける。
「女王陛下のおかげで、一人でやっていける仕事もいただきましたし……今は、自分の足で立てています」
胸の奥が、少しだけ痛む。
それでも――これは、伝えなければならない。
「ですから……どうか、レイスさんは」
顔を上げる。
「ご自身の幸せを、考えてください」
しばらく、沈黙が落ちた。
レイスさんはうつむき、表情が読み取れない。
言い方が悪かっただろうか。
これは、私の本心だ。
もちろん、私の傍にいることがレイスさんの幸せなら、それ以上のことはない。
でも……そんな都合のいい話があるとは、思えなかった。
黙り込む彼を前に、どうしていいかわからなくなって、
「あの……本当ですから。レイスさん、小さい頃はつらい思い出ばかりだったと伺いましたし……だから、幸せになってほしくて……えっと……」
言葉が、どんどん散らかっていく。
そのときだった。
「……私が、ほしいのは」
レイスさんが、低くつぶやく。
そして、まっすぐに私を見る。
「美桜……あなた一人です」
「ですから、私は――」
私が続ける前に、彼は静かに言葉を重ねた。
「私にとっては、ミオであっても、美桜であっても……どのような容姿であっても、関係ありません」
意味がわからず、私は首をかしげる。
「私のことを、きちんと見ていてくれたのは……今、目の前にいる貴方です」
ゆっくりと、噛みしめるように。
「確かに、最初は以前とまったく違う姿に戸惑わなかったと言えば、嘘になります。ですが……今は、その姿のほうが自然に感じています」
少しだけ、困ったように笑う。
「もっとも……今の姿が美桜なのですから、当たり前かもしれませんが」
私の思考は、完全に止まっていた。
何を言われているのか、理解が追いつかない。
固まった私を見て、彼は少し照れたようにしてから、
「すぐに、とは申しません。ただ……」
一度、言葉を切る。
「いずれ、私の妻となることを、今から真剣に考えていただけませんか」
真剣な眼差しが、私を射抜く。
――妻。
言葉の意味が、すぐには結びつかなかった。
頭の中で何度も反芻して、ようやく理解する。
「え……あ、えっと……その……レイスさん……」
それ以上、声が出ない。
顔が、どんどん熱くなる。
レイスさんは、困ったように微笑んだ。
「突然、このようなことを言われては……困りますよね」
それから、少し真剣な声で続ける。
「もし、ほんの少しでも私のことを想ってくれるのであれば……考えていただければと」
一拍置いて、
「もちろん、嫌でしたらすぐ忘れてください。その場合でも……これからは、良い友人として、お付き合いできればと思っています」
ありえない展開に、私は言葉を失ったまま立ち尽くす。
そんな私を見て、レイスさんは本当に困ったような表情になり、
「美桜……すみません。もし嫌でしたら、本当に忘れてください。もう遅いですし、送ります」
そう言って、私の背中をやさしく押す。
「あ……あの……私……」
必死に、声を絞り出す。
「考える……時間を……その……」
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それでも、彼はやさしく微笑んで、
「わかりました」
そう、答えてくれた。
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