安全第一異世界生活

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妖精との出会い

240話  女装少年ミハイルの不安な冒険④

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イグナが僕の肩に乗り、二人で美しく広がる湖をリリンゴの実を齧りながら探索する。

目が覚めてからすぐに、僕のお腹が大きな音を立てたことにびっくりしたイグナがリリンゴが実っている所に案内してくれた。
僕のマジックバックは武器もろとも無くなっているので…リリンゴの採取に落ち込んでいるとイグナがある程度なら空間に保存できると言ったので、20個ほど採取した。数日間の食事はこれで何とかなるかな。
空間魔法ありがたい。僕も使えるようになりたいな…

そんな事を思いながら歩いていると、ふいに滝の上を指さしてイグナが説明を始めた。

『滝の上に聖域がある。その聖域の中にこの山に巡る水の源泉があるんだ。そこが水の精霊王様の住処なんだ』

「水の精霊王…?」

僕はイグナを見て不思議に思う。
イグナは赤い髪に褐色の肌。黒い瞳。どう見ても属性が…

「イグナは火の精霊だよね?水の精霊の領域とかは関係ないのかな?」

イグナは泉の向こうにそびえたつ大きな山を今度は指さす。
その指さされた山からは黙々と湯気の様なものが山頂から出てきている…

『あの火竜王様が眠るグレンファルド山の隣にあるこの山は、セレノア山。
別名精霊山と言われるほど精霊が多い所。だから問題ない。』

「グレンファルド…山脈…大陸の中心部に位置する山脈。そしてここが、セレノア山…」

学園で習った世界地図を思い浮かべながら、イグナの言葉に一致する場所を探す。
そして確かめるように口を開く。

「ここって…セリーヌ公国?」

『そうだが?ミハイルはどこから来た?』

イグナは僕の質問に不思議そうに首をかしげ、こちらに問いかけてきた。

「オーラシアン王国から…」

僕が言うと、瞳を見開き…呆れたような反応をする。

『まだ小さいのに、こんな遠い、危ない国によく来たな』

「いや…来たくて来たわけじゃないんだけど…危ないってなんで?」

『ここは精霊のいとし子が管理する山だった』

僕の質問に美しい滝に視線をやり、イグナは話し出す。
過去形になった言葉に、自然と眉間が寄った。

『それをおぞましい闇を背負う人間が追い出した。
この山は近い将来、火竜王の熱に覆われる土地になるだろう…』

とても、とても寂しそうに――イグナがこぼす言葉に僕は自然と手に力が入る。
そんな僕の気持ちを察したのか、イグナが今度は僕が出てきたあたりへ視線を移し、話を続ける。

『なにやら我らの愛し子を追い出した奴らが土地が荒れていくのが分かって、最近はおかしなことをしでかしている』

「おかしな事?」

『精霊が見える可能性がある人間をこの山に捕らえて、精霊と話せて生き残れるかを見ている』

僕は息を呑む。
精霊が見える可能性…
そう言えばあの時カミラが精霊が苦しんでると言われ、光に目を奪われて…捕まった。
もしかして…冒険者の人が言っていた…

――最近、この辺りで子供がさらわれたらしくて――

――街道を少し外れた場所で野営していた商人の子供だ――

 ――親が目を離した、ほんの数分の間に――

さらわれたのってもしかして…僕は昨夜見た小さな白骨を思い出し、ぞっとした。
それと同時に胸にむかむかとしたものがこみ上げ、僕の気持ちがあふれ出しそうになる…僕は奥歯を噛み締め目を瞑った。
そして大声を出したくなる気持ちを抑えながらイグナに問いかけた。

「…僕以外に、連れて来られて、生きてる子は、居る?」

一節一節区切って言う言葉に、僕の怒りに気づいたのか戸惑いながら教えてくれた。

『小さなものが2人まだ生きている。あとミハイルと同じくらいの娘は生きているうちにどこかに連れていかれたな』

その言葉を聞いた途端、僕はイグナを見据えて叫んでいた。

「イグナ……その子たちの牢はどこ? 教えて。
すぐ助けに行く!」

駆けだそうとした僕は、突然身体が動かなくなった。
困惑している僕の眼前に肩に居たイグナが移動してきていた。
イグナの黒い瞳が細められ、僕を見る。

『……お主は気持ちの良い奴だな。
お前のような者は、嫌いではない』

そう言われて嬉しいのか、戸惑いか、子供を助けたい焦燥か、困惑している僕に、
イグナがクスリと笑い、僕の見開いて固まっている眼球に唇が触れた途端、
色彩が色濃く広がり、薄暗い森の中が明るく照らし出された。
そしてイグナや僕の周りに楽しそうに飛び回る小さな光。
今まで見えなかった光景が一気に視界に入ってきた。

「なに…これ…」

突然動けるように戻った口から出た言葉は、心の中の戸惑いそのままの言葉で
それを聞いたイグナが嬉しそうに笑う。

『気に入ったからな、お前に妖精の祝福を授けたんだよ。』

僕は嬉しそうに言うイグナを見る。
イグナは周りを見回して、頷いて告げた。

『―――我らも手を貸そう。小さき者を救うために 』
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