安全第一異世界生活

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妖精との出会い

241話  女装少年ミハイルの不安な冒険⑤

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湖に水が流れ込む滝の周囲の岩場には、階段のような段々があり、その一段一段が個別の牢屋になっていた。
牢屋の入口には、不思議な仕掛けが施されているらしい。
上部にある排気口のような小さな穴は、格子がある見た目に関係なく妖精なら出入りできる構造で、しかもその入口は妖精の精霊魔法でなければ開かない魔法が組み込まれているという。
牢を開けるには、妖精が「中の人間を助けたい」と思わなければならない。
ここに連れてこられた人間の中で、僕と同じくらいの年の少女が、唯一助け出されたと聞いた。
その子がどこへ連れて行かれたのかは、誰も知らないけれど――。

『いや~凄いよね。出入口使わずに出る子初めて見た』
『でもさ、この子ほんと変だったよね~』
『うんうん!泣きもしないし、あの格好!あれ絶対変!』
『わたし爆笑したもん!』

妖精たちが口々に僕の周りで話し始めた。どうやら僕は変な存在だったらしい…
そっか…変か―――

――扉が使えなければ、壁を殴れ。

誰かが昔、そう言った気がする。
でも、誰だったんだろう。
思い出そうとしても、頭の奥で靄がかかったように引っかかるだけだった。
でもその教えを実践しただけなんだけどね。

そんな事を考えながらでも昨夜、必死で掘った穴が今は、凄い速さで掘れていく。
妖精たちの力は凄かった。
特に今回は土妖精に力を借りて小さなトンネルを掘っていく。

「イグナ…こんなに大きな音立てても大丈夫かな?
離していた邪悪な奴って言うのに見つからない?」

『あぁ――奴らは今精霊の森には日が揺らぐ日の出か、日の入りの短時間ぐらいじゃないと来ない』

『日中は日の力の強い妖精たちが嫌がらせをして迷わせ、夜は闇の力が強い妖精たちが惑わす。妖精に忌み嫌われた存在になり果てたからね』

「なら、急がないと。掘れるうちに掘って、助け出したら――安全な場所を探そう」

『そうだな』

僕は中の子供たちを助けるべく穴を掘りながら思う

今回の一件って、結局邪悪な奴らのせいって事だよね…
妖精を捕まえて、それが見える人間を探して攫って、妖精に認められるかを見ていると…。
結局、妖精の愛し子を害した人間が、自分たちでどうにもできなくて、
妖精をどうにかして欲しくて、攫っているって事だろ…
それに僕は巻き込まれたって事か…
そこまで頭の中で考えて、腹の奥底から苛立ちが沸き上がってくる…

その怒りをスー、ハー…と、深呼吸してどうにかやり過ごす。

この事件本当に身勝手で最悪だ

でもこれで大まかな全体像が見えた。
そうか…そんな事であの骨の子供は亡くなったんだよね…そして馬鹿な奴らのせいで死にかけている小さな命を救わなければ!

決意を新たに、妖精たちに教えてもらい掘り進み夕方には一人、また一人と少女2人を助け出した。

滝の裏に洞窟があり、その洞窟には奴らが入ってこないと聞いて子供たちを連れてそこでリリンゴをすりおろして少しずつ子供達に食べさせた。
僕の履いていたスカートを布団代わりに下に敷いて近くで焚火をして暖を取れるようにして過ごした。
助け出した昨夜は子供たちは話せる状態じゃなかったけれど、今日も少しずつリリンゴを食べさせた。そして水を飲ませていると、青い目の5歳くらいの少女の目の前に白く光る妖精が立っていた。
青い瞳の少女は指を妖精の前に置くと妖精はふふっと笑ってその手に口づけた。

その様子を見た僕は、少女に伝えた。

「その妖精さんともっと仲良くなりたいなら名前を付けてあげて。きっと君の力になる」

僕の言葉に目を見開いたその子は、戸惑いながら…辺りをキョロキョロしてそして

「あのキラキラちゃんで良いかな…」

『キラキラか、可愛らしい名前だ。君の名前は?』

「あたし…コニー」

『コニー。可愛い名だな。
私は癒しの魔法を得意とする妖精キラキラ。
コニー、今日からよろしく頼む』

「うん。よろしくお願いします」

青い瞳のコニーの隣に居た茶色い髪の少女は不思議そうにしていた。
そしておもむろに少女は口を開いた。

「何とお話ししているの?」

妖精たちの中でも土属性の妖精たちが彼女の周りに集まっている。
翠の瞳に茶色い髪の7歳くらいの少女は不思議そうに僕とコニ―を見ている。
この子は見えない子なのかな?

「僕の名前はミハイル。こんな格好で悪いがお兄さんだよ。君の名前を教えて欲しい」

「わたしアンナ。ココどこ?あんまり覚えてなくて…魔獣に捕まってお空飛んだのは覚えてるんだよ~?その後はずっとお腹空いてボーっとしてて」

アンナは明るく、そう言うとまたしても首をコテンと傾げた

「それで何と話していたの?」

僕は掌の上にイグナに立ってもらい少し光ってもらう。僕から見たその姿は神々しくありとてもきれいだ。アンナにその姿が見えるか聞いてみた。

「僕の手の上に今”イグナ”って言う名前の妖精が要るんだ。見える?」

「赤い小さな光が見える」

そうか、光だけを視認できるんだねこの子は。

「コニーの側に白く光る光はある?」

「うん。1個光ってる」

「その光はキラキラって名前の妖精だよ。仲良くしてあげて」

「へー妖精なんて本の中の話だけかと思ってた。カワイイ光だね。」

この子は強くは見えないみたいだけど何かのきっかけで友達になれるかもしれないね。
ひとまず生きている子達を助け出せたのは幸いだ。
コニ―とアンナが寄り添って寝始めたので、僕は洞窟から出て通信機を鳴らす。

プルルルル……

プルルルル……


プル、
『はーい、もしもーしイルイル?だよね?どうしたの?』

通信機から聞こえる明るい声を聞いた途端僕は安堵に涙が出た。

「ズッ…突然ごめん…ターちゃん……お願い、僕たちを助けてください」

僕の声は弱弱しくかすれたものだった。聞きづらいその声に通信機の向こうでターちゃんはブヒヒンといななき、

『何があったか分からないけれど!安心して!
伊達に神獣名乗っちゃいないわ!黄昏さまにドーンとお任せよ!!』

元気よくそう言ってくれたターちゃんの言葉に、僕は希望を掴めたと気を抜いて頷いていた。
背後で、小石がひとつ、音もなく転がったことにも気づかずに。


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読んで頂きありがとうございます✿次回は3日後8日00時に更新します。
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