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転移と出会いとコルドナ街
21 【ギルドマスター スパイク視点】愚者の後悔
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『ホント、歳だけ重ねて、何も見えてないんですね』
そう言った少女の顔は愚者を見る目をしていた。
少女は、ジャルの森で何かに守られるように眠っていたと発見者は言った。
実際『月の神の愛し子』の少女は神に守られていたんだろう。
彼女と同じ…不思議なステータスの少女。
ワシは、若い頃から大抵の事はそつなくこなしてきた。
伯爵家の三男。
家柄も良い。
代々、我が伯爵家は騎士の家系であり、そのお陰もあって、ワシは体格もよく、力もあった。
長男のスペアの次男とは違い、
三男と言う気楽な立場で、自由があった。
冒険者になって、魔物を倒して、倒して、倒して。
気が付けば、A級と呼ばれる冒険者になって、ジジイになっていた。
順風満帆な人生を歩み、苦労も知らずここまで来たせいか、
人の痛みと言うものに、あまり関心がなかった。
傷ついた人が居ても、気にもならなかった。
いつも何に対しても、やる気がでなくて。
でも周りから持ち上げられて。
いつの間にか、ギルマスなんて地位に就いていた。
多少の我が儘も周りがカバーしてくれた。
苦手な仕事は部下がどうにかしてくれる。
そうして出来上がった
張りぼてのワシの世界は、幼い少女によって瓦解した。
『そうですね。此処にきて1日しか経っていない私が、気づく事が出来た違和感に』
そんな事は知らない。
『おなかを空かせた子供たちが搾取されている現実に気づかず』
そんな事は知らない。
『歳を重ねただけの大人に取る体裁はございません』
うるさい!
10にも満たない子が
「死ぬかと思った」と泣いていた。
見てない・知らないで済む話ではない。
『その量をずっと1人でしてましたよ。睡眠時間削って削って』
見てなかったで済む話ではない。
『上がすれば、下は自分も良いんだって思うものなんですよ』
したくなかったで済む話ではない。
20年の付き合いがあるアイツが、何も言わずワシの下を去った。
去ったことに1週間も気付かずにいた、己の薄情さに呆れてしまう。
アイツの診断書には
心身共に重篤な過労症状有り。
入院及び長期療養を勧めます。
と、書かれていた。大きな溜め息が出る。
「……愚かだなワシは」
小さなワシの呟きを耳聡く拾って、声の低い女が言う。
「その通りですね。ようやくお気付きになりましたか?
気付いていただけて何よりです。
では次の書類をお願いします。」
ツンツンとワシに仕事を促すのは、
新たに就任した副ギルドマスター。
鬼火のリオーナの二つ名持ちの元A級冒険者。
仕事しなければ、鞭でしばき回してくるのだ。
「癒しがない…フゥ」
リオーナの目が据わる。
「あなたの愚かな行いで一人の優秀な職員がギルドを辞めていったのよ。癒しなんて、あなたには不要だわ。
それとも、私の鞭が癒しに感じるくらい、その身体を躾て差し上げても良いのよ?フフフ」
リオーナは両手で鞭を伸ばし音を立てる。
「ヤッ、やるから鞭はしまえ!!お主はおっかないのぉ!!」
既に叩かれ過ぎて尻が悲鳴を上げとる。
もう真面目にやるしかない。
窓の外を不意に見たリオーナが、珍しく悪意のない笑顔を溢した。
どうしたのかと思い、窓の方を見ると、
小さな少女
カナメを肩に乗せたクロトが、幸せそうに笑っていた。
「彼、保護した子の養父になったそうよ」
そうか。20年前、一人孤独に耐えていたアイツに。
そうか。
家族が出来たのか。
「そうか」
ワシは一言だけ答え、そのまま書類との睨めっこに戻った。
『ねえねえ、オジサンさー、うちの国じゃ『情けは人のためならず』って言うんだよねー。
人に優しくするってさ、その人の為だけじゃなくて、自分にも良いことが返ってくるって意味の諺なの。
うちのバーちゃんがいつも言ってたんだー。昔の人って、マジ良いこと言うよねー。
オジサンもさー、もうちょい周り見た方が良いよー。
きっとその優しさが自分を救うから、うちのバーちゃんみたいにね!』
黒髪の少女は、暴漢から己を助けたクロトが居る方向をみて
『クロトはさー、うちにした優しさが、絶対巡り巡って返ってくるよー!クロトにはマジで良いことしか起こらないからー!』
そう言って、黒髪の娘は屈託なく笑った。
その娘のステータスには解読できない記号がいくつもあった。
その後、その娘は召喚されて逃げ出した聖女様ってことが判った。
判った時には、娘はもう街には居なくて。
ずっと後になって、教会に戻ったと言うことを聞いた。聖女様にはそれ以来会っていないが。
もし会えるなら。
クロトに幸せが来たことを伝えてみようか。
そして、勝手に召喚した国の人間に掛けた情けが戻ってきたのか聞いてみたい。
こういうのが、カナメに腹黒って呼ばれる所以か。
まぁ…自分の性格が悪いのは自覚してるんだ。
自覚してるだけ、まだましだろ。
そう言った少女の顔は愚者を見る目をしていた。
少女は、ジャルの森で何かに守られるように眠っていたと発見者は言った。
実際『月の神の愛し子』の少女は神に守られていたんだろう。
彼女と同じ…不思議なステータスの少女。
ワシは、若い頃から大抵の事はそつなくこなしてきた。
伯爵家の三男。
家柄も良い。
代々、我が伯爵家は騎士の家系であり、そのお陰もあって、ワシは体格もよく、力もあった。
長男のスペアの次男とは違い、
三男と言う気楽な立場で、自由があった。
冒険者になって、魔物を倒して、倒して、倒して。
気が付けば、A級と呼ばれる冒険者になって、ジジイになっていた。
順風満帆な人生を歩み、苦労も知らずここまで来たせいか、
人の痛みと言うものに、あまり関心がなかった。
傷ついた人が居ても、気にもならなかった。
いつも何に対しても、やる気がでなくて。
でも周りから持ち上げられて。
いつの間にか、ギルマスなんて地位に就いていた。
多少の我が儘も周りがカバーしてくれた。
苦手な仕事は部下がどうにかしてくれる。
そうして出来上がった
張りぼてのワシの世界は、幼い少女によって瓦解した。
『そうですね。此処にきて1日しか経っていない私が、気づく事が出来た違和感に』
そんな事は知らない。
『おなかを空かせた子供たちが搾取されている現実に気づかず』
そんな事は知らない。
『歳を重ねただけの大人に取る体裁はございません』
うるさい!
10にも満たない子が
「死ぬかと思った」と泣いていた。
見てない・知らないで済む話ではない。
『その量をずっと1人でしてましたよ。睡眠時間削って削って』
見てなかったで済む話ではない。
『上がすれば、下は自分も良いんだって思うものなんですよ』
したくなかったで済む話ではない。
20年の付き合いがあるアイツが、何も言わずワシの下を去った。
去ったことに1週間も気付かずにいた、己の薄情さに呆れてしまう。
アイツの診断書には
心身共に重篤な過労症状有り。
入院及び長期療養を勧めます。
と、書かれていた。大きな溜め息が出る。
「……愚かだなワシは」
小さなワシの呟きを耳聡く拾って、声の低い女が言う。
「その通りですね。ようやくお気付きになりましたか?
気付いていただけて何よりです。
では次の書類をお願いします。」
ツンツンとワシに仕事を促すのは、
新たに就任した副ギルドマスター。
鬼火のリオーナの二つ名持ちの元A級冒険者。
仕事しなければ、鞭でしばき回してくるのだ。
「癒しがない…フゥ」
リオーナの目が据わる。
「あなたの愚かな行いで一人の優秀な職員がギルドを辞めていったのよ。癒しなんて、あなたには不要だわ。
それとも、私の鞭が癒しに感じるくらい、その身体を躾て差し上げても良いのよ?フフフ」
リオーナは両手で鞭を伸ばし音を立てる。
「ヤッ、やるから鞭はしまえ!!お主はおっかないのぉ!!」
既に叩かれ過ぎて尻が悲鳴を上げとる。
もう真面目にやるしかない。
窓の外を不意に見たリオーナが、珍しく悪意のない笑顔を溢した。
どうしたのかと思い、窓の方を見ると、
小さな少女
カナメを肩に乗せたクロトが、幸せそうに笑っていた。
「彼、保護した子の養父になったそうよ」
そうか。20年前、一人孤独に耐えていたアイツに。
そうか。
家族が出来たのか。
「そうか」
ワシは一言だけ答え、そのまま書類との睨めっこに戻った。
『ねえねえ、オジサンさー、うちの国じゃ『情けは人のためならず』って言うんだよねー。
人に優しくするってさ、その人の為だけじゃなくて、自分にも良いことが返ってくるって意味の諺なの。
うちのバーちゃんがいつも言ってたんだー。昔の人って、マジ良いこと言うよねー。
オジサンもさー、もうちょい周り見た方が良いよー。
きっとその優しさが自分を救うから、うちのバーちゃんみたいにね!』
黒髪の少女は、暴漢から己を助けたクロトが居る方向をみて
『クロトはさー、うちにした優しさが、絶対巡り巡って返ってくるよー!クロトにはマジで良いことしか起こらないからー!』
そう言って、黒髪の娘は屈託なく笑った。
その娘のステータスには解読できない記号がいくつもあった。
その後、その娘は召喚されて逃げ出した聖女様ってことが判った。
判った時には、娘はもう街には居なくて。
ずっと後になって、教会に戻ったと言うことを聞いた。聖女様にはそれ以来会っていないが。
もし会えるなら。
クロトに幸せが来たことを伝えてみようか。
そして、勝手に召喚した国の人間に掛けた情けが戻ってきたのか聞いてみたい。
こういうのが、カナメに腹黒って呼ばれる所以か。
まぁ…自分の性格が悪いのは自覚してるんだ。
自覚してるだけ、まだましだろ。
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