安全第一異世界生活

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イルグリット王国 魔道具編

156話 動き出す者達・魔道具祭典②

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「いらっしゃい!!いらっしゃい。最新型のパン焼きBOXだよ!!本格的なパンが家で焼けるよ!見て行って!!」
「最新式のパン焼き機で焼いたパンを使ったホットドックは如何?もちもちで美味しいよ」
「ママーあれ欲しい」
「フフフ、美味しそうね。2つ下さいな」

祭りの人の流れ、笑い合う市井の人々、露店の人々が客引きをしながら元気に声を出す。笑い合う…平和そのもの。なのに…

市井の元気な声が届くが、私たちが居るのは薄暗い路地。目的の場所とは少しずれた…ここは王都だよね…祭りが始まってる。私は抱きしめる様にウィル様を抱え息を整える。
ハァハァハァ…呼吸を荒くするウィル様、……いやだそんな、ウィル様のお腹からは大量の血が流れる…私の大切な、大切な人。

「ウィル様しっかりしてください。すぐにお城に飛びますから。だから死なないで」

この方はいつも悩み、苦しみ、それでもあがいている。私を救ってくれた大切な人。お願いこの人を助けて!!

「…紬木、無茶をするな。お前だって手負いだ」

「いいえ、いいえ、大丈夫です!ここからなら問題なく飛べます!だってここはもうイルグリット王国なんだから!!」

そんな二人の声にしわがれた男の声が入り込む

「誰か居るのか?」

ウィル様を抱きしめながら私は身を固くする。そんな私の腕を軽くポンポンとしてウィル様が、声に答える。

「すまない、すぐに移動する。少し待ってくれハァ…」

「なんじゃ、お前さんその血は…」

声の主はいかにも頑固そうな見た目のお爺さん…ウィル様のお腹から出る血を見て目を見開く…お爺さんは眉間に皺をよせ

「待っとれ。すぐ戻る」

そう言ってバタバタと路地の古い建物に入って行った。建物からすぐに出てきたお爺さんは、布と消毒液それと薬瓶をもってきた。青色の薬が入ったそれを紬木に渡し、

「飲ませろ。上級回復薬じゃ」

「ありがとうございます」

私は急いでふたを開けウィル様の口に瓶を持っていきゆっくり傾ける。少しづつ嚥下するとすぐに血が止まった。それに涙を流しながら安堵して体の力が抜けた…あぁ良かった。この方を失わなくて良かった。血を流しすぎているからすぐに立つことは出来ないウィル様は、私の手をまたポンポンと叩いて、

「心配かけたな。すまない」

そう笑った。その笑顔を見ながら私はまだ寝ているウィル様の身体を抱きしめて泣いた。その光景を見ていたお爺さんは、

「道で寝るよりはマシじゃ。中に入って休め。飯を持ってきてやる」

先ほどと同じぶっきらぼうな口調で建物を指さしそう言うと、ウィル様を支えて立たせてくれた。そしてベットがある部屋に運ばれ寝かせてくれた。

「ありがとうございます」

私が頭を下げてお礼を言うと、

「嬢ちゃんは、わしの恩人に似ておるからな。泣く姿を見たくなかっただけじゃ」

そう言って部屋を出た。「恩人」王様もお妃さまも、言っていた恩人……その方に一度…会ってみたい…お父さん、お母さん…お兄ちゃん…家族に会いたい…。そう思いつつ溢れてきた涙をぬぐいベットに向かい歩を進める。
ウィル様が寝ているベットの横に椅子を持ってきて、腰を下ろしてウィル様の手を握る。そうするとウィル様が手に力を入れて握り返してくれた。反対の手で、私の手をポンポンと叩く。これは私を安心させるときのウィル様の癖。愛しいと感じる彼の癖…。

「すまない紬木、君を泣かせてばかりだな」

私は首を左右に振って、へたくそに笑う

「そんな事より、早く良くなってください。ウィル様。王様やクロトさんに報告しなくては」

「そうだね。黒のドラゴンはどうなっただろうか…」

ウィル様はそうポツリとこぼし、目を閉じた。窓からは祭りの賑やかな喧噪や人々の声が入ってくる。

この街は、とても、とても平和なそんな時間が流れている。

***

【フリムスト王国・王太子の離宮】

入口の扉に背中を預け、隣にいる黒いローブ男の手に身体を寄せて女が笑う。

「アハハハ、おじさん鬼やばな奴じゃん。アハハ」

声の高い女が笑う。声は高く、意味の分からない言葉を話し、馴れ馴れしい。

「そんで~王様にショタ王子の置き去り告げ口されて、王太子刺すとか、ウケルゥ~」

私が女を睨め付けると女は肩を上げ、やれやれと言った風な態度をとりながらまた不可思議な事を言い放った。

「異世界転移ってやば!って見てたけど~マジドロドロえぐくって、アタシ関係ないし、ここらでドロンするわ。アハハ~」

私は眉根を寄せて、女が言った言葉を理解するよりも早く、

「じゃ~ね~バ~ィ」

そう言って、近くに居た黒ローブを羽織った魔法使いと消えた。どういう事だ…あの女。さんざんこの国の騎士を喰っておきながら、消えやがっただと…

「ふざけんな!!」

手を血で赤く染めた私は空に向かって叫んだ。
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