安全第一異世界生活

文字の大きさ
158 / 244
イルグリット王国 魔道具編

157話 動き出す者達・魔道具祭典③

しおりを挟む
コンコンコン、建物の扉が叩かれる。
その音に気づき紬木は目を覚ました。窓から入る光は少しオレンジ色に色づいている。あれから半日くらいたってるのかな…外から入る音は変わらず賑やかで楽しそうな音が溢れている。
コンコンコン、また扉が叩かれた。私は席を立ち部屋を出てお爺さんを探した。手が離せないようなら代わりに対応しようかと思っての事だけど、お爺さんどこだろう?

室内はだいぶ暗くなっていて、人の気配がしない。どうしよう…勝手に出るわけにはいかないし…どうしよう…そう思いキョロキョロしていると、奥の部屋から光が漏れていた。そちらを覗くとお爺さんが何かを組み立てている。その背中を見ていると、また玄関の方で扉が叩かれた。私は迷いつつも

「あの、お爺さん誰か訪ねて来られてるみたいです」

私の声にお爺さんは顔を上げて、私の顔を見た。

「飯は喰ったか?まだならお前さんだけでも食べておきなさい」

「あ、はい。ありがとうございます」

私に一声かけて、席を立って玄関に向かった。お爺さんは慎重に横の窓から訪ねてきた人物を確認してから、玄関を開けた。私はお爺さんが出て行った作業場を見ていた。その作業場に飾ってある写真の人物に見覚えがあったから…
お爺さんとお婆さん、それから若い男女が映った写真…私はどうしようもなく焦った。どうしよう、ダメ…急いでウィル様を連れてすぐに逃げなければ!!
私は来た道を戻って行こうとしたら、目の前にこちらを睨みつける、頭に猫耳がある銀髪の男性が立っていた。

「お義父さん、なんでここに、この女が要るんだ!!」

男性の大声に私は身体が強張るのを感じた、怖い…凄く怒ってる…この人は写真の男性、猫獣人の彼だ…そうフリムストに居た魔道具技師達を束ねていた……

「黙りなさい」

それは静かで重い声だった。お爺さんが怒り出した男の人と私の間に身体を入れて、私を庇った…どうして…

「お義父さんこいつは、フリムストの「ワシは黙れと言った」

再度怒鳴ろうとした男の人にお爺さんは指を口の前に立てた。そのジェスチャーでお爺さんが言わんとしていることが男性にも分かったのか、怒気をはらんだ顔から何かを飲み込んだ表情に変わって頷いた。

お爺さんは男性が持っている箱をそっと開けると中にびっしり張り巡らされた魔法回路を読みだした。先ほど怒っていた銀髪の男性も、私も回路を呼んで適切に寸断していくおじいさんの姿に見入っていた。どのくらいの時間がたったのか分からない頃、お爺さんは一息ついて声を出した。

「よし。良いじゃろう。まだまだ組み方が少々甘いがの16年修行に出た甲斐はあったかの。ジュウゴ君」

「お義父さん…ただいま帰りました」

銀髪の男性が顔を少し緩めてそう言った。やっぱりそうだ…イルグリット王国からフリムストに来ていた魔法具技師のリーダー的存在の彼…何度か見かけたことがある…そんな彼がお爺さんの家族…そんな男性が立ち尽くしている私の方を睨みながら言葉を出す。

「お義父さんあの女はフリムストの王太子の愛妾だ。そんな奴がなんでこんな所に居るんだ」

男性が発した言葉が私を切りつけた。愛妾…私は唇をかんで俯いた。陛下もそんな事を言っていた…でもウィル様は私を大切にしてくれる…

「お前の目は節穴なのか…また思い込みか?周りに言われたか?」

ガタンと音がした方を見るとウィル様が壁に手を付きゆっくり歩いて来ているのが見えて、私は急いで彼の側に行き支えた。ウィル様は「ありがとう」そう言って男性の方に顔を向けて言葉を紡いだ。

「陛下はそんな事を確かに言っていた。だがね私は紬木をそんな日陰者にする気も無ければ、彼女以外娶る気も無い」

そう言ってウィル様は私を抱きしめてくれた。私たちのその姿より男性はウィル様が来ている服に付いた血痕が気になるようで、顔を少し青ざめさせて問うてきた。

「なんだその血の跡は」

「血だらけなのにこちらの迷惑にならないようにしようという心意気が気に入って休憩場所を貸しただけじゃ。もういいのか坊主」

「ご老体、場所をお借り出来て助かりました。私たちはご家族に歓迎されてないご様子、今日はこのまま失礼致します。お礼は後日させて頂ければと思います。ありがとうございました」

そう言って優雅に礼をしたウィル様を、銀髪の男が止めた。

「そうじゃないだろう!!何で王太子が血だらけなんだって聞いてんだよ!!」

ウィル様は振り返り男に言う。

「今回の総責任者ドルマン卿に刺されたからだよ。私は結局君たちの力になることは出来なかった。今回の君たちの事はすでにイルグリット王国の王族は承知の上だ。だから君たちはようやくフリムストから解放され祖国に保護される。安心してくれ」

ウィル様は困ったように笑うと、私の手を引き先ほどのベットの部屋に置いていた荷物をもって家から出ようとして、銀髪の男性に手を掴まれた。

「俺は、俺達はあんたに感謝していたんだ!!だから居て良い。無理に出て行くな!!」

私もウィル様も男が放った言葉に驚きを隠せず言葉を失い困惑したのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...