43 / 79
第2章 精霊と学校へ通う元聖女
挿話10 家の中を漁る元王女ユフィ
しおりを挟む
「じゃあ、ユフィさん。学校に行ってきますねー!」
「私の名前はユフィじゃなくて、ソフィよっ!」
「ふふっ。行ってきまーす!」
人の名前も覚えられないバカ女が、学校へ出掛けて行った。
ふっふっふ……あの毒だか何だか分からない謎の腹痛も治ったし、バカ女は夕方まで家に帰ってこないし、今からこの家は私の家よっ!
アメーニア王国の王宮と比べればもちろん小さいし、私の部屋とは比べ物にならないくらいに貧相だわ。
だけど、この家全体を私の家と考えたら、少なくとも王女時代の部屋よりは広いわね。
そもそも、一国の王女だというのに、一部屋しか無かった事がおかしいんだけど。
「さて、過去の話は置いておいて、あのバカ女の秘密を探らないとね。これまでは薬を探すくらいしか出来なかったけど、絶対に尻尾を掴んでやるんだから」
先ずは一階の一番玄関に近い所にあるバカ女の部屋……は流石に鍵が掛かっているわね。
この部屋は後に回して、他の部屋よ。
リビングは薬探しの時に十分探したから、こっちの部屋は……あら、クローゼットかしら?
「へぇ。中々良い趣味をしてるじゃない。この、如何にも貴族って感じのドレスなんか、私にピッタリじゃない。……あのバカ女は、いつも同じ服ばかり着ていて宝の持ち腐れだし、きっと私が着てあげる方がドレスも幸せよね」
スカートの丈が短く、膝上までしかない真っ赤なパーティドレスに身を包み、姿見の前でクルリと回ってみる。
ふふ……うん。このドレスは私が貰っておきましょう。
沢山あるから一着くらい……あら、こっちの黄色いドレスも良いじゃない。こっちのオレンジのも。
……気付けば、クローゼットの中にあるドレスの半分近くを、出してしまっていたけれど、まぁ大丈夫でしょ。
あのバカ女はドレスなんて着ないから、絶対に気付かないわよ。
手にしたドレスを全て二階へ運び、私の部屋にあるメイド服しか入っていないクローゼットへ。
「さて、思わぬ戦利品を獲た所で、続きね」
私好みの赤いドレスに身を包み、上機嫌で一階の部屋を漁っていると、バタンと扉を開ける大きな音が響き渡る。
あら? 誰か来たのかしら?
前に私のお尻を見た商人だったら、一発殴ってやらないと。そんな事を思いながら部屋から出て、玄関の様子を見に行こうとした所で、
「なっ!? どうして聖女が居るんだっ!? この時間は学校じゃないのか!?」
聞いた事のない叫び声が届く。
聖女……あぁ、この男も、あのバカ女に騙されている口らしい。
でも、私を見ながら聖女って言ったし……私の内から溢れる気品と美しさで、つい私の事を聖女だって思ってしまったのね?
まぁでも、それは仕方がない事よね。だって、私は綺麗で美しいもの。
「いや、まぁ良い。逆に手間が省けた」
そう言って、男が一直線に私に向かって来る。
どこの商人かは知らないけれど、用件くらい言いなさいよね。
まぁ今日は気分が良いから、許してあげなくもないけど。
「悪く思うな」
「えっ!? あ……な、何を!?」
「他所で聖女と呼ばれていたみたいだが、アンタはやり過ぎたんだよ。調子に乗り過ぎたな」
突然、お腹に鈍い痛みが走り、思わず床に倒れ込む。
いきなり殴られた!? どうして!? 私は元王女で聖女なのに!
止めて……せっかくお腹が治ったのに。あぁぁ……何か出ちゃいそう。
「お嬢の方が無駄になってしまったが、こっちの方が人目に付かないから、結果としては良かったか。まぁ安心しな。命までは取らないさ。ただ、目が見えなくなるだけだ」
「何を言って……」
「はっはっは。この毒を目に垂らすだけで、一時間後には失明する」
「や、やだっ! やめてっ! やめなさいっ!」
「アンタの力じゃ、俺には勝てない。あぁ、そうだ。主様が、アンタのアクセサリーは良かったと仰っていたぞ。まぁ、それでアンタが本物だって分かったんだがな」
男から意味不明な事を言われた直後、目に何かの液体がかかる。
それから、私を押さえ付けていた男が離れたけれど、
「な、何これ」
私の視界から、色が失われていた。
「私の名前はユフィじゃなくて、ソフィよっ!」
「ふふっ。行ってきまーす!」
人の名前も覚えられないバカ女が、学校へ出掛けて行った。
ふっふっふ……あの毒だか何だか分からない謎の腹痛も治ったし、バカ女は夕方まで家に帰ってこないし、今からこの家は私の家よっ!
アメーニア王国の王宮と比べればもちろん小さいし、私の部屋とは比べ物にならないくらいに貧相だわ。
だけど、この家全体を私の家と考えたら、少なくとも王女時代の部屋よりは広いわね。
そもそも、一国の王女だというのに、一部屋しか無かった事がおかしいんだけど。
「さて、過去の話は置いておいて、あのバカ女の秘密を探らないとね。これまでは薬を探すくらいしか出来なかったけど、絶対に尻尾を掴んでやるんだから」
先ずは一階の一番玄関に近い所にあるバカ女の部屋……は流石に鍵が掛かっているわね。
この部屋は後に回して、他の部屋よ。
リビングは薬探しの時に十分探したから、こっちの部屋は……あら、クローゼットかしら?
「へぇ。中々良い趣味をしてるじゃない。この、如何にも貴族って感じのドレスなんか、私にピッタリじゃない。……あのバカ女は、いつも同じ服ばかり着ていて宝の持ち腐れだし、きっと私が着てあげる方がドレスも幸せよね」
スカートの丈が短く、膝上までしかない真っ赤なパーティドレスに身を包み、姿見の前でクルリと回ってみる。
ふふ……うん。このドレスは私が貰っておきましょう。
沢山あるから一着くらい……あら、こっちの黄色いドレスも良いじゃない。こっちのオレンジのも。
……気付けば、クローゼットの中にあるドレスの半分近くを、出してしまっていたけれど、まぁ大丈夫でしょ。
あのバカ女はドレスなんて着ないから、絶対に気付かないわよ。
手にしたドレスを全て二階へ運び、私の部屋にあるメイド服しか入っていないクローゼットへ。
「さて、思わぬ戦利品を獲た所で、続きね」
私好みの赤いドレスに身を包み、上機嫌で一階の部屋を漁っていると、バタンと扉を開ける大きな音が響き渡る。
あら? 誰か来たのかしら?
前に私のお尻を見た商人だったら、一発殴ってやらないと。そんな事を思いながら部屋から出て、玄関の様子を見に行こうとした所で、
「なっ!? どうして聖女が居るんだっ!? この時間は学校じゃないのか!?」
聞いた事のない叫び声が届く。
聖女……あぁ、この男も、あのバカ女に騙されている口らしい。
でも、私を見ながら聖女って言ったし……私の内から溢れる気品と美しさで、つい私の事を聖女だって思ってしまったのね?
まぁでも、それは仕方がない事よね。だって、私は綺麗で美しいもの。
「いや、まぁ良い。逆に手間が省けた」
そう言って、男が一直線に私に向かって来る。
どこの商人かは知らないけれど、用件くらい言いなさいよね。
まぁ今日は気分が良いから、許してあげなくもないけど。
「悪く思うな」
「えっ!? あ……な、何を!?」
「他所で聖女と呼ばれていたみたいだが、アンタはやり過ぎたんだよ。調子に乗り過ぎたな」
突然、お腹に鈍い痛みが走り、思わず床に倒れ込む。
いきなり殴られた!? どうして!? 私は元王女で聖女なのに!
止めて……せっかくお腹が治ったのに。あぁぁ……何か出ちゃいそう。
「お嬢の方が無駄になってしまったが、こっちの方が人目に付かないから、結果としては良かったか。まぁ安心しな。命までは取らないさ。ただ、目が見えなくなるだけだ」
「何を言って……」
「はっはっは。この毒を目に垂らすだけで、一時間後には失明する」
「や、やだっ! やめてっ! やめなさいっ!」
「アンタの力じゃ、俺には勝てない。あぁ、そうだ。主様が、アンタのアクセサリーは良かったと仰っていたぞ。まぁ、それでアンタが本物だって分かったんだがな」
男から意味不明な事を言われた直後、目に何かの液体がかかる。
それから、私を押さえ付けていた男が離れたけれど、
「な、何これ」
私の視界から、色が失われていた。
85
あなたにおすすめの小説
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
聖女をクビにされ、婚約者も冷たいですが、優しい義兄がいるので大丈夫です【完結】
小平ニコ
恋愛
ローレッタは『聖女』として忙しいながらも充実した日々を送っていたが、ある日突然上司となった無能貴族エグバートの機嫌を損ね、『聖女』をクビとなり、住んでいた寮も追放されてしまう。
失意の中、故郷に戻ったローレッタ。
『聖女』でなくなったことで、婚約者には露骨に冷たい態度を取られ、その心は深く傷つく。
だが、優しい義兄のおかげで少しずつ元気を取り戻し、なんとか新しい生活に馴染み始めたころ、あのエグバートから手紙が届いた。『大変なことになっているから、今すぐ戻ってこい』と。
報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?
小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。
しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。
突然の失恋に、落ち込むペルラ。
そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。
「俺は、放っておけないから来たのです」
初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて――
ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ
マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
恋愛
聖女『神龍の巫女』として神龍国家シェンロンで頑張っていたクレアは、しかしある日突然、公爵令嬢バーバラの嫌がらせでリストラされてしまう。
さらに国まで追放されたクレアは、失意の中、隣国ブリスタニア王国へと旅立った。
旅の途中で魔獣キングウルフに襲われたクレアは、助けに入った第3王子ライオネル・ブリスタニアと運命的な出会いを果たす。
「ふぇぇ!? わたしこれからどうなっちゃうの!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる