悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第14話 森の中のモフモフ

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「ごっはん! ごっはん! ごっはんー!」

 ローランドさんに借りたナイフを手に、お米の収穫しようと陽が落ちる前に森へとやって来た。
 けど、私が作った田んぼを見て、思わず固まる。
 一畳程の小さな田んぼに、季節を無視した黄金色の稲穂があったはずなんだけど、思いっきり食べられていた。
 というか、今も目の前でリアルタイムに食べられている。大きな茶色のクマのぬいぐるみに。

「……いやいやいや、本物っ!? 動いてる……というか、どうしてこんな学園のすぐそばにクマがいるのっ!?」

 状況が理解出来ず、若干パニックになりかけながらも、手にしたナイフで突撃するのは何とか思い留まった。
 おそらく若いクマなんだろうけど、私と同じくらいの大きさだもん!
 お米が食べられているのはショックだけど、こんなナイフで向かって行ったら、返り討ちにあうのが目に見えている。
 というか、クマってお米を食べるものなの? ゲームの世界だから!? 実は変な夢を見ているとか?
 あぁぁぁ……でも、でも私のお米が、もそもそ食べられていくーっ!

「そ、そうだ! こんな時こそ、魔法! 離れた所からブランチ・アローを……いや、相手はクマだし、木の矢ではダメかも! ゆ、ユリアナ、助けてー!」

 困った時のユリアナ……という訳で、助けを求めると直ぐにユリアナが現れる。

『あらあら、困った状況ですね』
「そ、そうなのよ。何とか出来る魔法ってないかな?」
『ありますよ』

 サラッと何とか出来ると言われ、教わった通りの魔法を使用してみたんだけど……何も起こらない?

「ユリアナ。この魔法は? 何も起きていない気がするんだけど」
『いえ、正しく発動していますよ。先程使われた魔法は、翻訳魔法です。あのクマさんとお話ししてみては如何でしょうか?』
「お話し? クマ……と?」
『はい』

 ユリアナはニコニコと微笑んでいるけど、クマだよ?
 言葉が通じたとして、会話になるの!?
 一先ず、夢中でお米を食べているクマに少しだけ近付き、

「あ、あの。そのお米、私が植えたんですけど」

 思い切って話し掛けてみた。

「えっ!? ご、ごめん。道に迷ってお腹が空いていたから、つい……」

 言葉が返ってきたーっ!
 けど、迷子なのか。見た目は大きいけど、まだ子供なのかな?
 自分の家に帰って……って言っても帰れないんだよね?
 どうしたものかと考えていたら、

「あ、あの……怒ってる?」

 クマが小さくなりながら、悲しそうに聞いてくる。
 うっ……こ、こんなの怒れないじゃない。

「怒っているというか……こ、困っているかな」
「ボクが稲を食べちゃったからだよね? でも、ボクもお家に帰れないし、お腹も空くし……そ、そうだ! お姉ちゃんがボクを使い魔にするっていうのはどうかな? ボク、今度からはこの稲を守る! この稲、物凄く美味しかったんだー! ……ダメ、かな?」

 あ、あれ? 会話が出来るからかな?
 このクマ……身体は大きいけど、可愛いっ!
 大きなモフモフのぬいぐるみみたいで……あー、思い出した。
 幼稚園の時に買ってもらった、大きなクマのぬいぐるみに似ているなんだ。
 いやまぁ、色々とリアルとぬいぐるみで違う場所はあるけど、この抱きつけるくらいに大きな感じがそっくりで、懐かしさが込み上げる。

「し、仕方ないなぁ。家に帰れないのは困ったし、お腹も空くよね。じゃあ、お願いしようか。ただ、クマさん用のお米も作るから、私用のお米は食べちゃダメだからね?」
「うん! お姉ちゃん、ありがとー!」

 あぁぁぁ……抱きつきたい! モフモフしたーいっ!
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