婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第267話 対峙

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「皆、そろそろ起きるのだ」
「ん……ありがとう、イナリ」

 それぞれが旧聖都の復興のお手伝いをした後、食事を済ませて仮眠を取り……イナリに起こしてもらった。
 仮眠を取る場所については、半壊している空き家を一つ借りたんだけど、イナリが具現化魔法で壊れている壁を塞いでくれたので、安心して休む事が出来ている。

「この黒い壁……凄いですね。どうやっているのか分かりませんが、便利です」
「この壁のおかげで僕たちもゆっくり休めたし、街の人たちも喜んでいたよね」

 ロレッタさんとイナリが、イナリの具現化魔法を褒めているけど、何を隠そう、このイナリ。
 私の護衛をしながら出来る事しかしない……と言っていたんだけど、私の近くに居ながら、この家みたいに壊れた家を幾つか修復していたんだよね。
 当然、いきなり黒い壁で大きな穴が塞がれていて、驚く人も居たらしいけど、最終的には皆喜んでくれていた。
 やっぱり安心して休める場所があるって大切よね。

「さて、アニエスよ。夜になったが、まだ起きている街の者も多く、普通に街から出入りしているようだ」
「そうね。今日は月明もあるし、明かりが無くてもまだ周囲が見えるから、活動している人も居そうね」
「うむ。だが、あの光魔法を使う者たちであれば、魔力で判別出来るのだが、あのバカ王子は魔力が皆無であるが故に、街の者と判別出来ぬ」

 イナリは特徴的な魔力を持つ人……例えば、私やロレッタさんは凡その位置がわかるけど、トリスタン王子はどこに居るのかわからない。
 つまり、もしもトリスタン王子が一人で行動していた場合、この街へやって来たかどうか探知出来ないそうだ。

「じゃあ、トリスタン王子たちが目指しているはずの、宝物庫……って、どこが宝物庫か分からないから、元々神殿があった場所へ行ってみましょうか」

 太陽の神殿はファイヤー・ドレイクに破壊されてしまったけど、街の中心にあるのは覚えているので、早速向かい……絶句する。
 というのも、私が氷魔法で作った神殿が未だに残っていた。
 ……いや、私の氷魔法は自然には溶けないので、残っていて当然と言えば当然なんだけど、すっかり忘れてしまっていたのよね。
 この氷で作られた神殿の地下か、近くなのかはわからないけど、何処かに宝物庫があるはず……なんだけど、神殿の中で隠れて待っておく……というのは無理かな。
 という訳で、氷の神殿の近くで辺りの様子を伺っていると、暫くしてイナリが口を開く。

「アニエス。来たぞ……あの光魔法を使う者たちの集団だ。十人程居て、その中に一人魔力を持たぬ者が居る。おそらく、あのバカ王子だろう」
「ついに来たのね。もう魔の力は絶対に復活させたりはしない! ここで、トリスタン王子を止めるんだからっ!」

 少しすると、イナリの言った通り、黒づくめの集団が現れる。
 こんな夜中に集団で来るなんて、怪し過ぎるでしょ! 絶対に何かを企んでいるはず!
 この集団の様子を見ていると……居たっ! トリスタン王子だっ!

「そこまでよっ! トリスタン王子っ!」
「ん? お前は……アニエス!? どうしてこんな所にっ!? という事は、あの変な力を使う男も……チッ、しかもロレッタまで!? お前ら、俺様に一体何の用だ!」
「それはこっちのセリフよっ! トリスタン王子! 太陽の神殿の宝物庫の鍵を盗んで、何をしようとしているのっ!」

 月夜の明かりの中で、トリスタン王子と対峙する事になった。
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