婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第283話 トリスタン王子の行方

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「ところで……魔の力を持った槍、魔槍が神殿から出されてしまった訳だが、今すぐ魔物が凶悪になってしまうのだろうか」
「すみません。正直なところ、わかりません。ただ魔剣の時は、その剣の近くにいる魔物や土地、その地に生えている植物が魔の力に侵されてので、場所によって差がありました」
「つまり、その魔槍を持っている奴が移動した先が、ヤバくなっていくという事か」
「あ、あくまで剣の時はそうだった……という話なので、今回も同じとは限らないので、警戒はお願い致します」

 セルジオさんの疑問は当然と言えば当然なんだけど、そもそも魔の力を持った武器の効果が全て同じかどうかもわからない。
 だけど、どんな効果にせよ、良くない事が起こりうるのは確かだろう。

「えっと、私からも聞きたいのですが、その魔槍はどのようにして保管されていたのでしょうか。何か祭壇のようなものがあった……とか?」
「祭壇? いや、そういったものはないですね。どの武器も、歴史的価値のあるものとして神殿の宝物庫に飾られていました。時々、一般公開もしていましたし」

 セルジオさんによると、ガラスのケースにしまわれた状態で、床に置かれていたり、壁に飾られていたりするらしい。
 タリアナで見た美術館のような感じだろうか。
 一般公開されるという事で、神殿というより博物館といった様子みたいだけど。

「……祭壇がないのに、どうやって魔の力を抑えていたんだろ?」
「ふむ。こればかりは、この国の歴史を紐といてもらわぬと、わからぬな」
「そうよね。またモニカちゃんに来てもらう必要があるかもしれないけど、そもそも祭壇が無いっていうのがね」

 良い方に考えると、火の聖女の祭壇が無い事から、実は魔槍は普通の槍で、トリスタン王子たちが盗んだものは魔の力に関係無かった……という事もありえる。
 ポートガの国の方々には悪いけど、このケースが一番有難い。
 いえ、もちろん物を盗む事自体が悪いし、国の……いえ、世界の一大事に楽観的な考えは出来ないけど。
 そんな事を考えていると、誰かが部屋に飛び込んできた。

「失礼します! 国境警備隊から支援要請です! 身分証を提示せずに、国境を強引に越えようとしている者たちがいるとの事です!」
「どこだっ!」
「フィカルホの街です。相手は複数人で、剣や槍で武装しているとの事!」
「そこだっ! 急げっ!」

 セルジオさんの言葉で騎士さんたちがバタバタと忙しそうにしているけど、フィカルホは南東にある国境の街だと教えてもらった。
 そのまま南に行くと海があり、広い海に出られたら、船の国ボートガといえども、捜索はかなり難しいらしい。

「けど海に出るなら、イスパナ側行かずに、そのままポートガから海に出た方が逃げる側からすれば良いのでは?」
「考えられる理由としては二つですね。一つはボートガは船の国。港は勿論ですが、沿岸の警備は非常に厳しいのです」
「なるほど。それで、一旦イスパナに出ようとしていると」
「もしくは、もう一つの理由として、ボートガ内が警戒されている事がわかっているので、イスパナで海へ逃げる為の物資を調達しようといているののかもしれませんね。水や食料なしに海へ出るなど自殺行為ですから」

 なるほど。
 ただ、いずれにせよポートガからの脱出は何としても阻止しないといけないという話だった。
 というのも、国境警備の兵士さんたちはまだしも、騎士さんたちが国境を越えてイスパナには入れないらしい。
 仮にイスパナへ入られてしまったら、イスパナへ連絡して、様々な手続きの上で騎士さんたちの一部がイスパナで捜索を行うか、イスパナの騎士たちに捜索を依頼するか……いずれにせよ、時間がかかってしまうそうだ。
 既にトリスタン王子たちが国境へ到着している事から、かなりマズい状況みたい。
 何とか、兵士さんたちが取り押さえてくれると良いんだけど。
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