120 / 143
第6章 太陽の聖女と星の聖女
第290話 宝物庫の奥
しおりを挟む
宝物庫へ着くと、黒ずくめの人たちと戦ったというコリンの無事を喜び、頭を撫で……建物の中へ入る。
ファイアー・ドレイクの封印の場所とは異なり、黒ずくめの人が物陰にいて、何かを投げてきた!
だけど……
「鬱陶しい」
イナリが呟くと、床に飛んできたナイフや矢が落ち、更に物陰から黒ずくめの人が倒れて来る。
「い、イナリ!?」
「大丈夫だ。命は奪っておらぬ」
眠っているだけだと聞いたので、そのまま奥へ。
前に来た時は、宝物庫は空で何もなかった。
だけど、私たちが見つけられなかった何かがあるの?
不思議に思っていたけど、その疑問がすぐに氷解する。
「地下!?」
「なるほど。魔力の宿った武器や魔槍で結界を無理矢理破ったか」
イナリによると、床の下に認識を阻害させ、かつ防護も兼ねた結界の残滓があるみたい。
それが、床に大きな穴が開けられると共に、雑に壊されているそうだ。
「トリスタン王子は、この為にポートガへ? ……いえ、これだけの為なはずないわよね」
「うむ。金品の為だけなら、花の女王に手を掛ける必要はなかったはずだからな。何かよからぬ事を企んでいるのだろう」
イナリでさえ気付けなかった……いえ、もしかしたら結界があるからあえて言わなかっただけかもしれないけど、宝物庫の下に隠された何かがある事を、トリスタン王子はどうやって知ったのだろう。
穴の下にはイナリの身長より少し高いくらいの通路があって、宝物庫の更に奥へと続いている。
「来たぞっ! 奴らだ!」
「黙れ」
通路には身を隠す所がないからか、黒ずくめの人たちが私たちに立ち塞がるようにして現れるけど、あっという間にイナリが戦闘不能にしていく。
そして、最奥には既に開かれた重厚な扉があって、黒ずくめの人が手に何かを持っていた。
「ふふっ、トリスタン王子の読み通りだ。だが、遅かったな。これは既に我らの手の内に……ぐっ!」
黒ずくめの人が何か言いかけている間に、イナリが男性を床に倒し、手にしていた何かを奪っていた。
「喋れるように加減した。これは何だ? 何かの資料のように思えるが」
「お前たちに話す義理はないな」
「そうだな。では、我もお主らを生かしておく義理もない」
イナリが古い紙の束を眺めながら怖い事を言ったところで、ロレッタさんが慌てた様子で口を開く。
「ま、待ってください! トリスタン王子がいません!」
「お姉ちゃん! 魔槍もないよっ!」
言われてみれば……ここへ来るまでの間、隠れるような場所はなかったはずなのに、トリスタン王子の姿もないし、肝心の魔槍が見あたらない。
「ポートガから盗んだ槍はどうしたの!?」
「槍? 何の事かわからんな……ぐはっ!」
「正直に答えた方が身の為だぞ。我は今、機嫌が悪い」
イナリが黒ずくめの人を踏みつける。
だが、黒ずくめの人は顔を歪めるだけで、一向に喋る気配を見せずにいると、イナリが小さく溜息を吐く。
「この力は好きではないのだが……話せ」
「――っ!? ……槍は王子が持っている」
イナリの言葉で、黒ずくめの人の目の焦点が合わなくなり、どこか虚空を眺めているように見える。
確か、ゲーマの偉い人が使っていた、精神支配系の力だったかな?
「あのバカ王子は何処にいるのだ」
「……太陽の神殿」
「奴は何を企んでいる」
「……魔の力でこの国を一度滅ぼし、新たに支配する」
何て事を! 急いで止めなきゃ!
慌てて走り出そうとした私を、イナリが制止する。
「アニエス、待つのだ。まだ聞く事がある……この紙の束はなんだ」
「……魔の力の使い方が載っている」
「その内容は、ここに居る者たちしか知らぬのか?」
「……かなり前に伝令を出して王子へ伝えている」
「お前たちがここに居る理由は?」
「……時間稼ぎだ。とはいえ、もうとっくに準備は済んでいるはずだがな」
そう言うと、イナリが力の行使を止めたのか、黒ずくめの人が動かなくなった。
私たちは……間に合わなかったの!?
ファイアー・ドレイクの封印の場所とは異なり、黒ずくめの人が物陰にいて、何かを投げてきた!
だけど……
「鬱陶しい」
イナリが呟くと、床に飛んできたナイフや矢が落ち、更に物陰から黒ずくめの人が倒れて来る。
「い、イナリ!?」
「大丈夫だ。命は奪っておらぬ」
眠っているだけだと聞いたので、そのまま奥へ。
前に来た時は、宝物庫は空で何もなかった。
だけど、私たちが見つけられなかった何かがあるの?
不思議に思っていたけど、その疑問がすぐに氷解する。
「地下!?」
「なるほど。魔力の宿った武器や魔槍で結界を無理矢理破ったか」
イナリによると、床の下に認識を阻害させ、かつ防護も兼ねた結界の残滓があるみたい。
それが、床に大きな穴が開けられると共に、雑に壊されているそうだ。
「トリスタン王子は、この為にポートガへ? ……いえ、これだけの為なはずないわよね」
「うむ。金品の為だけなら、花の女王に手を掛ける必要はなかったはずだからな。何かよからぬ事を企んでいるのだろう」
イナリでさえ気付けなかった……いえ、もしかしたら結界があるからあえて言わなかっただけかもしれないけど、宝物庫の下に隠された何かがある事を、トリスタン王子はどうやって知ったのだろう。
穴の下にはイナリの身長より少し高いくらいの通路があって、宝物庫の更に奥へと続いている。
「来たぞっ! 奴らだ!」
「黙れ」
通路には身を隠す所がないからか、黒ずくめの人たちが私たちに立ち塞がるようにして現れるけど、あっという間にイナリが戦闘不能にしていく。
そして、最奥には既に開かれた重厚な扉があって、黒ずくめの人が手に何かを持っていた。
「ふふっ、トリスタン王子の読み通りだ。だが、遅かったな。これは既に我らの手の内に……ぐっ!」
黒ずくめの人が何か言いかけている間に、イナリが男性を床に倒し、手にしていた何かを奪っていた。
「喋れるように加減した。これは何だ? 何かの資料のように思えるが」
「お前たちに話す義理はないな」
「そうだな。では、我もお主らを生かしておく義理もない」
イナリが古い紙の束を眺めながら怖い事を言ったところで、ロレッタさんが慌てた様子で口を開く。
「ま、待ってください! トリスタン王子がいません!」
「お姉ちゃん! 魔槍もないよっ!」
言われてみれば……ここへ来るまでの間、隠れるような場所はなかったはずなのに、トリスタン王子の姿もないし、肝心の魔槍が見あたらない。
「ポートガから盗んだ槍はどうしたの!?」
「槍? 何の事かわからんな……ぐはっ!」
「正直に答えた方が身の為だぞ。我は今、機嫌が悪い」
イナリが黒ずくめの人を踏みつける。
だが、黒ずくめの人は顔を歪めるだけで、一向に喋る気配を見せずにいると、イナリが小さく溜息を吐く。
「この力は好きではないのだが……話せ」
「――っ!? ……槍は王子が持っている」
イナリの言葉で、黒ずくめの人の目の焦点が合わなくなり、どこか虚空を眺めているように見える。
確か、ゲーマの偉い人が使っていた、精神支配系の力だったかな?
「あのバカ王子は何処にいるのだ」
「……太陽の神殿」
「奴は何を企んでいる」
「……魔の力でこの国を一度滅ぼし、新たに支配する」
何て事を! 急いで止めなきゃ!
慌てて走り出そうとした私を、イナリが制止する。
「アニエス、待つのだ。まだ聞く事がある……この紙の束はなんだ」
「……魔の力の使い方が載っている」
「その内容は、ここに居る者たちしか知らぬのか?」
「……かなり前に伝令を出して王子へ伝えている」
「お前たちがここに居る理由は?」
「……時間稼ぎだ。とはいえ、もうとっくに準備は済んでいるはずだがな」
そう言うと、イナリが力の行使を止めたのか、黒ずくめの人が動かなくなった。
私たちは……間に合わなかったの!?
127
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。