婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第300話 顔色の悪いビアンカ

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「ふむ。あのバカ王子は行くところまで行ったな」
「そうね。まさか魔王だなんて」
「アニエスよ。今まで命までは取っていないが、人ではないというのであれば、もう良いのではないか?」

 イナリの発言の意図としては、今まで手加減してきたが、もう本気を出しても良いだろう? という事。
 つまり、トリスタン王子を亡き者にしてしまう。
 イナリは、助けられる人は助けたいと言う私の想いを汲んで、これまで人に対してきてくれた。
 だけど、トリスタン王子が人間でなくなってしまったというのであれば、他の多くの人たちの命を守る為にも……仕方のない事なの? 元は普通の人間だったのに。

「あ! ま、待ってください。あくまで今のトリスタン王子は、魔王の力を取り込んでいるので能力的に人を越えているという話で、身体はあくまで人間だという意味です」
「えーっと、要は占いの対象外になってしまったけど、まだ人間……という事かしら?」
「そうです。ですが、更に魔王の力を取り込んだり、魔王の力を増幅させていくと、もう人間には戻れなくなるそうですが」
「……まだ人には戻れるという事なのね?」
「えぇ。一部の星はそう言ってくれています。大半の星は、もうトリスタン王子の事については、沈黙してしまっていますが」

 なるほど。まだ助けられる可能性はあるんだ。
 だけど、あのイナリが負傷させられた程の力を、大勢の無関係な人々に向けたら……それはもう、幾ら身体が人間であっても、人間に戻れる可能性があったとしても、魔物に等しい行為だと思う。

「ふむ。我としては、余計な事をしないように始末しておくべきだと思うが……」
「……無差別に、大勢の人を攻撃するような事をするようであれば、もう庇えないのかもしれないわね」
「そうでない事を願いたいが……ひとまず、太陽の聖女に話を聞いてみるとするか」

 イナリが街の壁をあっさり跳び越え、人間の姿に戻る。
 バーセオーナの街の中心に向かって行くと、開いている宿を見つけたので、しっかり休み……翌朝。ビアンカさんの所へ。

「貴女は……聖女様のご友人のアニエス様でしたね。ビアンカ様は、現在重要な会議に参加されておりますので、少しお待ちいただけますでしょうか」
「待ってください! 本当に重大な……この国どころか、世界に影響を与える出来事が起こっているんです」
「ビアンカ様は会議中ですので、お待ちください。こちらも重要な会議中なのです」

 バーセオーナの大教会に行くと、聖職者さんが私の事を覚えていてくれたのだけど、絶対に譲らない……という強い圧で止められてしまった。
 ただ追い返すのではなく、あくまで大事な会議が終わるまで待てと、応接室へ案内されているけど。

「むぅ。会議などをしている場合ではないのだがな。太陽の聖女の位置はわかるから……ちょっと行って連れ出して来るか」
「だ、ダメよ、イナリ。気持ちはわかるけど、ビアンカさんは偉い人なんだし」
「僕がハムスターの姿で行って、ちょっと様子を見てこようか?」

 イナリやコリンと、どうしようかと話をしていると、扉が開き……随分と顔色の悪いビアンカさんが入ってきた。

「ビアンカさん! ちょっとお話が……って、大丈夫ですか!?」
「残念ながら、大丈夫ではないのですが……もしかして、アニエスさんも国の危機に関する話でしょうか」
「そうですが、私も……って、何かあったんですか?」
「はい。昨日の夜に南の方で激しい落雷があり、大規模な森林火災が起こっているんです。幸い、海に近いので火は何とかなりそうではあるのですが、消火に海水を使うので塩害が起こって……すみません。こちらの話です」

 南で激しい落雷!?
 それって、まさか……トリスタン王子の仕業なのっ!?
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