婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第301話 星の聖女

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「あの、ビアンカさん。たぶん、その落雷の話と関係があるのですが……聞いてもらえますか?」

 旧聖都とボートガで起こった事、トリスタン王子が魔王の力を得たという話を手短に説明する。

「そんな事が……」
「はい。イスパナの南で起こったという落雷も、おそらくトリスタン王子が自身の力を試したか、使い方を練習していたと思うんです」
「だとしたら……許される事ではありませんね。火を消す為に海水を使わざるを得ず、あの森に大きな影響があります。それに、森に棲む魔物が逃げ出して近隣の街や村で被害が出ていますし」
「ビアンカさん。私たちはトリスタン王子を止めたいんです。だけど、旧聖都の太陽の神殿……あそこにある台座は何ですか? どうやら、あの台座と時間という条件で、トリスタン王子が魔王の力を得たみたいなだけど」

 私の言葉でビアンカさんが少し待っていて欲しいと言い、紙とペンを持って戻ってきた。
 どうやら太陽の神殿について教えてくれるらしく、神殿と空、そして太陽の図が描かれる。

「宝物庫にあったという日付と時刻の一覧については、日の入りと日の出の時間……ではないんです。あれは、太陽の力が最も弱まる時間を記したものなのです」
「太陽の力が弱まる時間? 夜でも、太陽の力は働いているんですか?」
「はい。太陽は常に燃えていて、その力を我々に与えてくれています。ですので、夜であっても太陽の力はこの世界に届いているのですが、直接受けられない為に弱まっているのです」

 ビアンカさんの話によると、夜でも弱い太陽の力を使う事が出来るけど、全く使えない時間があるらしい。
 トリスタン王子が空へ魔の矢を放ったのは、その最も弱い時間帯のなのだとか。

「アニエスさんたちが、そのトリスタン王子と対峙したのは夜ですよね? また、昨日の落雷も深夜に限った話で、明け方になってからは一切起こっておりません。おそらくですが、魔の弓というのは夜にだけ力を得られるか、太陽の力を不得手としているのではないでしょうか」
「なるほど。そう言われると……トリスタン王子は戦いを長引かせたくなかったのかな?」

 とはいえ、夜明けまではまだまだ時間があったので、本当に魔王の力の使い方を練習したかっただけなのかもしれない。
 あの人は、完璧主義なところがあるから……全然、完璧じゃないのに。

「そう考えると、トリスタン王子は日中帯に姿を現す事がなく……私が直接力を貸す事は出来ないかもしれません。先程申し上げた通り、夜は太陽の力が弱まってしまうので」
「そうですか……」
「ですが、代々の太陽の聖女に伝わる書物によると、太陽の聖女と対を成す星の聖女という聖女がいるそうなので、その方を見つける事が出来れば、何かしらの手が打てるかと」
「星の聖女……ですか?」
「はい。太陽の聖女とは逆に、夜の星が瞬く間だけ力を使う事が出来、太陽が出ていると力が弱まってしまうそうです」

 星の聖女っていう方もいるんだ。
 星が出ている間だけ力を使えるというのはロレッタさんみたいな感じかな。

「お姉ちゃん。もしかして、ロレッタお姉さんが星の聖女さんじゃないかなー? 星が出ている間だけ占いが出来るし」
「それは、私が占星術師だからですよ。星の聖女というのではないと思います」

 コリンがロレッタさんに目を向けるけど……本人の口から即座に否定される。
 わかるよ……私だって、イナリに言われた時は何の事だろうって思ったし。

「ふむ。だが、有り得ぬ話ではない。ロレッタの魔力はアニエスに匹敵するからな」
「そういえば……結局、アニエスさんの何でも治してしまう水の事を聞いていないのですが」
「あ、忘れてた! えっと、私……水の聖女なんです」

 そういえば、バーセオーナに着いたら説明するって言ったのに、あまりにも眠くてそのまま寝ちゃったんだ。
 という訳で、今更ながらに私が水の聖女だという話をすると……

「そ、そんな大事な話を、ついでみたいにあっさり言わないでくださいっ!」

 何故かロレッタさんに怒られてしまった。
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