王太子殿下は悪役令息のいいなり

一寸光陰

文字の大きさ
18 / 20

18

しおりを挟む
午前最後の授業は自習だったのですぐに終わった。そこでシルヴィンは久しぶりにディアスを迎えに行こうと考えた。いつもディアスが迎えにきてくれるのも嬉しいが、自分もディアスを喜ばせたいという気持ちもあった。


「ディー、迎えにきたよ。ご飯食べに行こう」
「シル!シルから迎えにきてくれるなんて珍しいな。早く行こう。」
ディアスは顔を綻ばせる。

「俺も一緒に食べたい!」
少し高めのボーイソプラノの声が響く。
ざわざわとしていた教室が一気に静まり返った。そんなことにも気づいていないのか、はたまた気づいているのか、フィンリスは発言を続ける。

「いつもディアスを誘っても断られるんだよなー。お前と食ってんの?」
「うん。そうだけど…」
「俺も一緒に食べていいだろ?お前ばっかりずるいよ。」
「昼餐会は僕たちが婚約者として親睦を深める目的もあるんだ。だから、申し訳ないけど2人で食べてもいいかな。」
シルヴィンは眉を下げて断る。
「え!!お前らって婚約者なの?男同士なのに?」
「うん、そうだよ。小さい頃からそうなんだ。」
「へぇ~。あ!政略結婚ってやつ?愛のない結婚をしなきゃいけないなんて身分のあるやつは大変だな~。俺は絶対に好きな人と結婚したいけど。不満に思ったこととかねぇの?
ディアス、いつでも相談乗るからな!」
フィンリスがニカッとディアスに笑顔を向ける。
愛ならある、お前が考えてるよりずっと。お前に僕たちの何がわかるんだ。
思わずそう言ってしまいたくなった。

「すまないが時間がないから行く。」
ディアスがシルヴィンの腕を掴んで歩き出す。

「男でも結婚できるんだ…。」
フィンリスが後ろで小さく呟いた。フィンリスの目はあつく熱を帯びていた。


シルヴィンはフィンリスのことを考えるとモヤモヤとして気分が晴れなかった。彼はディアスに馴れ馴れしすぎやしないか。なぜディアスもあんなに許しているのだろう。もっと諌めてくれてもいいのに。
モヤモヤとマイナスな思考が溜まっていく。


「あはははははっ!ディアスって本当に面白いやつだな~!」
フィンリスは細い腕でディアスの肩をバンバンと叩く。
「お前も面白いな。」
ディアスもフィンリスに笑顔を見せている。

シルヴィンとデレクは廊下の曲がり角からその様子を見ていた。
「あいつら、ちょっと距離感近くねぇか?」
「本当にね。」
シルヴィンの表情を見てデレクはハッとする。
「いや、でも、殿下の婚約者はシルヴィンだし、殿下はシルヴィンのこと溺愛してるし…」

「うわっ。今日もあの2人一緒にいる。」
「本当だ。最近いつも2人でいるよね。いくら殿下がお優しいからといってアレは馴れ馴れしすぎないか?」
「殿下の愛人候補って噂があるぞ。」
「えぇ~、それはないだろ。あの眼鏡野郎モサいし。」
「でも、今の婚約者だってパッとしない顔じゃないか。良くも悪くも平凡すぎるというか…。だから殿下はB専って噂がある。」
「あははっ!それならあのモッサリ緑野郎が愛人になってもおかしくないな。」
2人の男子学生は意地汚い笑みを見せる。

「あいつら…。好き勝手言いやがって。ちょっと締めてくる」
「別にいいよ。僕が冴えない見た目なのは事実だし。
でも、ちょっと…いや、かなりディーには怒っているかな。」
シルヴィンは目を好戦的に輝かせた。
「いつでも相談なら乗るぜ。」
デレクがシルヴィンの肩に手を置いて、ポンポンと慰めた。

「シル!奇遇だな、こんなところで会うとは。」
ディアスがこちらに気がついたようだ。こちらへと歩いてくる。後ろからフィンリスもついてきている。

「移動教室だったから。でも僕もう行かないと。行こう、デレク」
2人の元から離れる時、フィンリスがシルヴィンのことを睨みつけているのをシルヴィンは見逃さなかった。



しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。

めちゅう
BL
 末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。 お読みくださりありがとうございます。

契約結婚だけど大好きです!

泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。 そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。 片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。 しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。 イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。 ...... 「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」  彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。 「すみません。僕はこれから用事があるので」  本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。  この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。 ※小説家になろうにも掲載しております ※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

処理中です...