18 / 68
妄想型①
しおりを挟む
『こんなふうになっちゃったのも、全部全部アンタのせいよ……! うう、責任、取りなさいよお……!』
「これはツンデレじゃないの?」
「病んではない、ね……」
「お前も普通に見てんじゃねーよ。なに溶け込んでんだ」
翔が横から画面を覗き込む文月くんの頭にチョップを落とした。うう、と小さな呻き声が漏れる。
止めてくれるな。文月くんには俺がやっているのを機に興味を持ってもらいたいのだ。
黒髪ツインテールの典型的なツンデレ。主人公を好きになってしまい、未知の感情に涙目で混乱し八つ当たりをする様は確かに可愛らしい。ツンデレは嫌いではない、むしろ好きではあるが──ヤンデレを求めてゲームをしているのだから、疑問を抱かざるを得ない。
僅かに眉根を寄せていると、関心のなさそうな翔は言葉を続けた。
「てか、お前ら体育今日から種目変わるじゃん?」
うわ。その内容に、眉根が余計に寄る。
自分たちの学校では、体育は男女で別れ様々な競技をする。だいたいひと月で種目が変わるのだ。この前はサッカー、その前はバスケ。サッカーでは何度も空振りをして、クラスの男連中に散々からかわれたのだった。悪夢だ。
運動が得意ではない自分にとっては、憂鬱でたまらない。
「嫌だなー……なにすんだろ……」
「ソフトボールだってさ。最初はなんかペアでキャッチボールすんだってよ。他のクラスのやつが言ってた」
「へー、じゃあ文月くんと組も」
「いや、ペアもう先生が決めてるっぽい。ランダムで」
「え……おれ、大丈夫かな……」
「大丈夫だよ。文月くんいい子だし」
言えば、花が咲いたようにはにかむ。平和だ。とんでもないヤンデレでもあったが、彼は優しい子だ。誰が相手でもきっとうまくやっていけるだろう。
俺も、正直憂鬱なのだ。人と関わるのは得意な方ではない。組む相手が優しい人で、何事もなく終わりますように。……俺の運動神経の悪さに呆れない人でありますように。
そう祈りながら、体育の時間まで過ごすのだった。
本鈴が鳴る。準備運動も早々に済ませ、とうとうペアが発表される時間になる。
呼ばれた順に前へ行き、グローブとボールをとって適当な場所に移動する。全員組み合わせができたところでキャッチボールを開始するらしい。
僅かな緊張を覚えながら、順番を待つ。
「1組の参宮ー、2組の田山ー」
さんのみや。聞いたことの無い苗字だ。前へ出る。すると呼ばれた男子生徒も立ち上がり、同じようにした。こちらを一瞥すると、「ふーん」とだけ言って道具をとり、勝手にどこかに行ってしまう。慌ててついていくが──波乱の予感がした。
なかなか、癖が強い人物の気がする。その予感は当たっていたのだと知るのはすぐだった。
人のいないグラウンドの隅で、彼が口を開いたかと思うと──出てきたのは、大きなため息。
「はー……男と組むとか最悪……」
「なんだいきなり」
失礼すぎて雑な言い方になってしまった。だって、発されたそれはあまりにも友好的からは程遠い発言で。
俺の失言にも構うことはなく、酷く気だるげな態度を崩さずまた言葉を続けた。
「体育女の子と組めねーから嫌なんだよな」
ツーブロックの髪を弄りながら、大きくため息をついた。ぱっちりとした二重の目に長い睫毛、そして高い鼻。整った野性的な顔立ちから、さぞかしモテるだろうことが容易に想像できる。……羨ましい。
……とにもかくにも、ペアは決まってしまったのだ。自己紹介をするのがせめてもの礼儀だろう。たぶん。
「……とりあえず……俺は田山。ええと、名前は……」
「苗字が参宮。下は怜央」
名前までかっこいいのかよ。謎に完敗した気持ちを抱えながら、挨拶をするべく口を開いた。
「……よろしくね、参宮くん」
「最低限しかやらねーからな」
「……はい」
乾いた笑いしか出ない。
なにはともあれ──最低限でもやってくれるなら御の字だ。最初のキャッチボールさえ乗り越えれば、あとは全員で試合をするだけ。困ることもないだろう。
そう思っていた。
「これはツンデレじゃないの?」
「病んではない、ね……」
「お前も普通に見てんじゃねーよ。なに溶け込んでんだ」
翔が横から画面を覗き込む文月くんの頭にチョップを落とした。うう、と小さな呻き声が漏れる。
止めてくれるな。文月くんには俺がやっているのを機に興味を持ってもらいたいのだ。
黒髪ツインテールの典型的なツンデレ。主人公を好きになってしまい、未知の感情に涙目で混乱し八つ当たりをする様は確かに可愛らしい。ツンデレは嫌いではない、むしろ好きではあるが──ヤンデレを求めてゲームをしているのだから、疑問を抱かざるを得ない。
僅かに眉根を寄せていると、関心のなさそうな翔は言葉を続けた。
「てか、お前ら体育今日から種目変わるじゃん?」
うわ。その内容に、眉根が余計に寄る。
自分たちの学校では、体育は男女で別れ様々な競技をする。だいたいひと月で種目が変わるのだ。この前はサッカー、その前はバスケ。サッカーでは何度も空振りをして、クラスの男連中に散々からかわれたのだった。悪夢だ。
運動が得意ではない自分にとっては、憂鬱でたまらない。
「嫌だなー……なにすんだろ……」
「ソフトボールだってさ。最初はなんかペアでキャッチボールすんだってよ。他のクラスのやつが言ってた」
「へー、じゃあ文月くんと組も」
「いや、ペアもう先生が決めてるっぽい。ランダムで」
「え……おれ、大丈夫かな……」
「大丈夫だよ。文月くんいい子だし」
言えば、花が咲いたようにはにかむ。平和だ。とんでもないヤンデレでもあったが、彼は優しい子だ。誰が相手でもきっとうまくやっていけるだろう。
俺も、正直憂鬱なのだ。人と関わるのは得意な方ではない。組む相手が優しい人で、何事もなく終わりますように。……俺の運動神経の悪さに呆れない人でありますように。
そう祈りながら、体育の時間まで過ごすのだった。
本鈴が鳴る。準備運動も早々に済ませ、とうとうペアが発表される時間になる。
呼ばれた順に前へ行き、グローブとボールをとって適当な場所に移動する。全員組み合わせができたところでキャッチボールを開始するらしい。
僅かな緊張を覚えながら、順番を待つ。
「1組の参宮ー、2組の田山ー」
さんのみや。聞いたことの無い苗字だ。前へ出る。すると呼ばれた男子生徒も立ち上がり、同じようにした。こちらを一瞥すると、「ふーん」とだけ言って道具をとり、勝手にどこかに行ってしまう。慌ててついていくが──波乱の予感がした。
なかなか、癖が強い人物の気がする。その予感は当たっていたのだと知るのはすぐだった。
人のいないグラウンドの隅で、彼が口を開いたかと思うと──出てきたのは、大きなため息。
「はー……男と組むとか最悪……」
「なんだいきなり」
失礼すぎて雑な言い方になってしまった。だって、発されたそれはあまりにも友好的からは程遠い発言で。
俺の失言にも構うことはなく、酷く気だるげな態度を崩さずまた言葉を続けた。
「体育女の子と組めねーから嫌なんだよな」
ツーブロックの髪を弄りながら、大きくため息をついた。ぱっちりとした二重の目に長い睫毛、そして高い鼻。整った野性的な顔立ちから、さぞかしモテるだろうことが容易に想像できる。……羨ましい。
……とにもかくにも、ペアは決まってしまったのだ。自己紹介をするのがせめてもの礼儀だろう。たぶん。
「……とりあえず……俺は田山。ええと、名前は……」
「苗字が参宮。下は怜央」
名前までかっこいいのかよ。謎に完敗した気持ちを抱えながら、挨拶をするべく口を開いた。
「……よろしくね、参宮くん」
「最低限しかやらねーからな」
「……はい」
乾いた笑いしか出ない。
なにはともあれ──最低限でもやってくれるなら御の字だ。最初のキャッチボールさえ乗り越えれば、あとは全員で試合をするだけ。困ることもないだろう。
そう思っていた。
171
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる