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監禁型⑤
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咎めるような声色。打って変わったそれに、思わず顔を見つめたまま瞬いた。
「……え? いやあ……気がついたらつい、ですかね。友だちが怪我したら嫌だし……」
眉間のシワは、より深くなる。
「お前が怪我をしたら、悲しむ奴もいるだろう」
「っはは、先輩優しいっすね」
初対面の人間にそんなことを言うなんて。固い声で言われたそれは、あまりにも優しさに溢れている。
悲しんでくれる人がいる。それはきっと、自惚れではなくそうなのだろう。両親も、友人たちも。人に恵まれているから、自分のことのように悲しんでくれるはずだ。わかっている。
だけれども。
「友だちが怪我するくらいなら、俺がした方がマシです。……良くないことかもですけど、そう思っちゃうんです」
「……お前……」
作った握り拳に、力がこもった、ように見えた。何か言いたげに口を開いたが──言葉が飛び出すことはなく、代わりに小さなため息が落ちる。
「……親御さんが迎えに来るまで、待つよ。それくらいはさせてくれ」
「そんな……申し訳ないですし、大丈夫ですよ」
「いいから。無理をされても困るんだ、いいな」
「は、はい」
念を押すように言われ、従うことにする。……先程、彼は何を言おうとしていたのだろう。
考えても、思いつかず。母が迎えに来るまでの短い時間では、答えに辿り着くことはできなかった。
***
「大丈夫? ああすみません、面倒をみていただいて……」
迎えに来た母の車まで送って貰うと、母は小さく頭を下げた。先輩は片手でそれを制すようにし、口を開く。
「いえ、部活の見学中に怪我をしたので……部長である自分の責任でもありますから」
「部活? まあ、珍しい……」
物珍しい目で俺を見てくる。……生来インドア派の息子が突然そんなことをしたのだから、当然だろうけれど。なんだか居心地が悪くて、視線を伏せた。
「……はは、いい親御さんだな。仲良くしろよ」
「……はい。本当に、ありがとうございます。伍代先輩」
「ああ。無理するなよ」
車に乗り込み、見えなくなるまで。先輩は昇降口に立ち、じっとこちらを見つめていた。
隣の母が、前を見たまま唇を開く。
「しっかりしてる、良い先輩ね」
「……うん」
申し訳なさと同時に、純粋な優しさに胸が暖かくなる。入部はできないが──良い先輩だった。
また、機会があれば。彼と関われたらいいな。
淡い願いを抱きながら、処置をしてくれた足をそっと撫でた。痛みは、少しだけ引いていた。
***
関わる機会は、思ったよりも早く来て。
次の日、登校したとき。廊下で鉢合わせし、彼はすぐに小走りで俺の元へと来てくれた。
「田山、足は? まだ痛むだろ」
「少し。でも、昨日よりマシです」
「そうか。無理するなよ」
本当に、優しい。ああ、そういえば。母の顔を思い出し、小さな笑いが漏れる。
「母さんが、先輩のことしっかりしてるって言ってましたよ」
「ああ──確かに、よく言われるな」
「やっぱり! 俺もそう思ったんです」
笑って言えば、彼は──ふ、と。なんだか形容しがたい、僅かな愁いのようなものが混じった笑顔を浮かべた。……今の笑顔は、なんだろう。違和感を抱くも、考えるより先にまた先輩が口を開いた。
「できることなら、なんでも手伝うからな。昨日も言ったが、俺の責任でもあるんだ。そうさせてくれ」
……むしろ、迷惑をかけたのは俺なのに。
「本当にいいのに」
そう言っても、引く姿勢を見せることはなく。
「……でも、ありがとうございます」
またじんわり暖かくなる胸に、頬を綻ばせ。そこからは、彼に言われるまま。教室まで向かうのに、荷物を持ってもらってしまうのだった。
「……え? いやあ……気がついたらつい、ですかね。友だちが怪我したら嫌だし……」
眉間のシワは、より深くなる。
「お前が怪我をしたら、悲しむ奴もいるだろう」
「っはは、先輩優しいっすね」
初対面の人間にそんなことを言うなんて。固い声で言われたそれは、あまりにも優しさに溢れている。
悲しんでくれる人がいる。それはきっと、自惚れではなくそうなのだろう。両親も、友人たちも。人に恵まれているから、自分のことのように悲しんでくれるはずだ。わかっている。
だけれども。
「友だちが怪我するくらいなら、俺がした方がマシです。……良くないことかもですけど、そう思っちゃうんです」
「……お前……」
作った握り拳に、力がこもった、ように見えた。何か言いたげに口を開いたが──言葉が飛び出すことはなく、代わりに小さなため息が落ちる。
「……親御さんが迎えに来るまで、待つよ。それくらいはさせてくれ」
「そんな……申し訳ないですし、大丈夫ですよ」
「いいから。無理をされても困るんだ、いいな」
「は、はい」
念を押すように言われ、従うことにする。……先程、彼は何を言おうとしていたのだろう。
考えても、思いつかず。母が迎えに来るまでの短い時間では、答えに辿り着くことはできなかった。
***
「大丈夫? ああすみません、面倒をみていただいて……」
迎えに来た母の車まで送って貰うと、母は小さく頭を下げた。先輩は片手でそれを制すようにし、口を開く。
「いえ、部活の見学中に怪我をしたので……部長である自分の責任でもありますから」
「部活? まあ、珍しい……」
物珍しい目で俺を見てくる。……生来インドア派の息子が突然そんなことをしたのだから、当然だろうけれど。なんだか居心地が悪くて、視線を伏せた。
「……はは、いい親御さんだな。仲良くしろよ」
「……はい。本当に、ありがとうございます。伍代先輩」
「ああ。無理するなよ」
車に乗り込み、見えなくなるまで。先輩は昇降口に立ち、じっとこちらを見つめていた。
隣の母が、前を見たまま唇を開く。
「しっかりしてる、良い先輩ね」
「……うん」
申し訳なさと同時に、純粋な優しさに胸が暖かくなる。入部はできないが──良い先輩だった。
また、機会があれば。彼と関われたらいいな。
淡い願いを抱きながら、処置をしてくれた足をそっと撫でた。痛みは、少しだけ引いていた。
***
関わる機会は、思ったよりも早く来て。
次の日、登校したとき。廊下で鉢合わせし、彼はすぐに小走りで俺の元へと来てくれた。
「田山、足は? まだ痛むだろ」
「少し。でも、昨日よりマシです」
「そうか。無理するなよ」
本当に、優しい。ああ、そういえば。母の顔を思い出し、小さな笑いが漏れる。
「母さんが、先輩のことしっかりしてるって言ってましたよ」
「ああ──確かに、よく言われるな」
「やっぱり! 俺もそう思ったんです」
笑って言えば、彼は──ふ、と。なんだか形容しがたい、僅かな愁いのようなものが混じった笑顔を浮かべた。……今の笑顔は、なんだろう。違和感を抱くも、考えるより先にまた先輩が口を開いた。
「できることなら、なんでも手伝うからな。昨日も言ったが、俺の責任でもあるんだ。そうさせてくれ」
……むしろ、迷惑をかけたのは俺なのに。
「本当にいいのに」
そう言っても、引く姿勢を見せることはなく。
「……でも、ありがとうございます」
またじんわり暖かくなる胸に、頬を綻ばせ。そこからは、彼に言われるまま。教室まで向かうのに、荷物を持ってもらってしまうのだった。
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