51 / 68
監視型②
しおりを挟む
「あの、田山先輩」
ふと、後ろから控えめな声。二階堂くんだ。友人たちをちらりと一瞥して、薄い唇を開く。
「随分、賑やかですね」
「ああ、今お泊まり会しようかって話してて。二階堂くんもどう?」
ぱちくりと、レンズ越しに瞳が瞬く。面食らったように数秒じっとこちらを見つめた。
「え──初めてなので、勝手がわかりません、し……お邪魔するわけには……」
「邪魔なんかじゃないけどなあ」
友人たちはきっと気にしないだろう。遠慮がちな後輩に、そこまでかしこまる必要はないのだけど、と笑う。話を聞いていたらしい四方田くんが、「多い方がいいって! そのうちやるから二階堂くんも来な!?」と明るく声をかける。さすがコミュ力の塊のような人物だ。その勢いに押されたのか、なら、と二階堂くんは小さく頷いた。
四方田くんは満足そうに笑い──なにかに気づいたように、あ、と声をあげた。
「てかウチのクラスまで来るって、何かあったん?」
「あ……その、もうすぐテストでしょう。……田山先輩がもしわからないところがあったら、一緒に勉強とか……」
「ん、勉強会か? なら俺も参加しようか。一応先輩だから教えられるぞ!」
爽やかな笑顔を浮かべた伍代先輩に、二階堂くんはなんだかむっとした表情を浮かべた。
「……先輩に尽くすのは僕だけで結構ですので」
口をとがらせてそう言った彼。伍代先輩は見下ろして、微笑ましげに頭を撫でる。
「ははは! なんだ、一年か? 随分小さいやつだなあ」
「小さ……誰がですか!」
珍しくムキになって悔しそうに反論する姿は、少し可愛らしい。初めて会ったときと比べると、随分いろいろな表情を見せてくれるようになったものだ。もしかすると、身長のことを気にしているのだろうか。俺たちの中では一番小さくはあるが、まだ伸びるかもしれないだろう。伍代先輩は体格が良く背も高い方だから、気になるのはわかる。俺も彼や文月くんくらいの身長が欲しいものだ。
「……なんか、騒がしくなったな」
騒ぎを眺めて、ぽつりと幼馴染がこぼす。
「仲良くなれて俺は嬉しいよ」
「ふーん……仲良く、なあ。ヤバそうな奴らも集まってるけど」
それはまあ、癖が強いことは否定できない。だが、なんやかんや彼らが昏い雰囲気を醸し出すことはなくなっていた。これは健全な友人関係を築けていることの証明になるのではないだろうか。ひとり満足気に頷いていると、四方田くんが「あー!!」と大きな声を発した。
「てかゆう兄やばい! そろそろ部活行かねーと!!」
「ああ、もうそんな時間か」
「翔も部活行く?」
「おー。俺も行くわ」
田山、と低い落ち着いた声で呼びかけられる。
「またいつでも見学に来いよ。……待ってるからな」
まるで弟にそうするように、頭を撫でられた。……世話好きなところは、相変わらずのようだ。俺相手にはそういう態度をとらなくてもいいのに。
「今度泊まりとか勉強会のこと決めよー! じゃね!」
みなに手を振られ、自分も同じように返す。どうやらもう部活が始まる時間のようだ。
「……そろそろ僕も、行かないと」
後ろ姿を見つめながら、ぽつりと二階堂くんが言う。なにか用事でもあるのだろうか。
「用事とかあるの?」
「はい。最近、塾に通っていて……」
……今のままでも充分頭が良いのに、さらに塾にまで通うのか。ご両親がきっと通わせたのだろうが──本当に、努力を怠らない子だ。
「すごいな」
「父と母と交渉して、週に二度程度にはしてもらったので……そこまで負担ではないですよ。ふふ、でもありがとうございます」
「応援してるよ。……でも、頑張りすぎないでね」
頬を緩ませて頷いて。愛らしい笑みを浮かべたまま、どこか浮かれた足取りで。彼は教室から出ていくのだった。
周りの生徒も、段々と帰り始めていた。幾分か静かになった教室の中、文月くんが口を開く。
「……田山くん、もう帰る?」
そういえば──明日中に提出しなきゃいけないワークがあったことをはた、と思い出す。学校に残ってやらなければ、家でやらない気がする。
……仕方ないが、少しだけここに残ろう。
「んー……ワーク今日中にやっておきたいから、まだだね」
「そっか。……ごめん、家の手伝いしろって言われてて……先に帰っちゃうね」
「あ、そうなんだ! 頑張ってね!」
「……ふふ、うん。ありがとう……」
控えめな足音を最後に、静寂が訪れた。……本当に、静かになってしまった。教室に残る生徒も、俺を含めて数人ほど。
ワークを黙々と解いていると、空いていた前の席ががらりと引かれ、誰かが座り込む。顔を上げれば──参宮くんが酷く気怠げな表情を浮かべていた。
ふと、後ろから控えめな声。二階堂くんだ。友人たちをちらりと一瞥して、薄い唇を開く。
「随分、賑やかですね」
「ああ、今お泊まり会しようかって話してて。二階堂くんもどう?」
ぱちくりと、レンズ越しに瞳が瞬く。面食らったように数秒じっとこちらを見つめた。
「え──初めてなので、勝手がわかりません、し……お邪魔するわけには……」
「邪魔なんかじゃないけどなあ」
友人たちはきっと気にしないだろう。遠慮がちな後輩に、そこまでかしこまる必要はないのだけど、と笑う。話を聞いていたらしい四方田くんが、「多い方がいいって! そのうちやるから二階堂くんも来な!?」と明るく声をかける。さすがコミュ力の塊のような人物だ。その勢いに押されたのか、なら、と二階堂くんは小さく頷いた。
四方田くんは満足そうに笑い──なにかに気づいたように、あ、と声をあげた。
「てかウチのクラスまで来るって、何かあったん?」
「あ……その、もうすぐテストでしょう。……田山先輩がもしわからないところがあったら、一緒に勉強とか……」
「ん、勉強会か? なら俺も参加しようか。一応先輩だから教えられるぞ!」
爽やかな笑顔を浮かべた伍代先輩に、二階堂くんはなんだかむっとした表情を浮かべた。
「……先輩に尽くすのは僕だけで結構ですので」
口をとがらせてそう言った彼。伍代先輩は見下ろして、微笑ましげに頭を撫でる。
「ははは! なんだ、一年か? 随分小さいやつだなあ」
「小さ……誰がですか!」
珍しくムキになって悔しそうに反論する姿は、少し可愛らしい。初めて会ったときと比べると、随分いろいろな表情を見せてくれるようになったものだ。もしかすると、身長のことを気にしているのだろうか。俺たちの中では一番小さくはあるが、まだ伸びるかもしれないだろう。伍代先輩は体格が良く背も高い方だから、気になるのはわかる。俺も彼や文月くんくらいの身長が欲しいものだ。
「……なんか、騒がしくなったな」
騒ぎを眺めて、ぽつりと幼馴染がこぼす。
「仲良くなれて俺は嬉しいよ」
「ふーん……仲良く、なあ。ヤバそうな奴らも集まってるけど」
それはまあ、癖が強いことは否定できない。だが、なんやかんや彼らが昏い雰囲気を醸し出すことはなくなっていた。これは健全な友人関係を築けていることの証明になるのではないだろうか。ひとり満足気に頷いていると、四方田くんが「あー!!」と大きな声を発した。
「てかゆう兄やばい! そろそろ部活行かねーと!!」
「ああ、もうそんな時間か」
「翔も部活行く?」
「おー。俺も行くわ」
田山、と低い落ち着いた声で呼びかけられる。
「またいつでも見学に来いよ。……待ってるからな」
まるで弟にそうするように、頭を撫でられた。……世話好きなところは、相変わらずのようだ。俺相手にはそういう態度をとらなくてもいいのに。
「今度泊まりとか勉強会のこと決めよー! じゃね!」
みなに手を振られ、自分も同じように返す。どうやらもう部活が始まる時間のようだ。
「……そろそろ僕も、行かないと」
後ろ姿を見つめながら、ぽつりと二階堂くんが言う。なにか用事でもあるのだろうか。
「用事とかあるの?」
「はい。最近、塾に通っていて……」
……今のままでも充分頭が良いのに、さらに塾にまで通うのか。ご両親がきっと通わせたのだろうが──本当に、努力を怠らない子だ。
「すごいな」
「父と母と交渉して、週に二度程度にはしてもらったので……そこまで負担ではないですよ。ふふ、でもありがとうございます」
「応援してるよ。……でも、頑張りすぎないでね」
頬を緩ませて頷いて。愛らしい笑みを浮かべたまま、どこか浮かれた足取りで。彼は教室から出ていくのだった。
周りの生徒も、段々と帰り始めていた。幾分か静かになった教室の中、文月くんが口を開く。
「……田山くん、もう帰る?」
そういえば──明日中に提出しなきゃいけないワークがあったことをはた、と思い出す。学校に残ってやらなければ、家でやらない気がする。
……仕方ないが、少しだけここに残ろう。
「んー……ワーク今日中にやっておきたいから、まだだね」
「そっか。……ごめん、家の手伝いしろって言われてて……先に帰っちゃうね」
「あ、そうなんだ! 頑張ってね!」
「……ふふ、うん。ありがとう……」
控えめな足音を最後に、静寂が訪れた。……本当に、静かになってしまった。教室に残る生徒も、俺を含めて数人ほど。
ワークを黙々と解いていると、空いていた前の席ががらりと引かれ、誰かが座り込む。顔を上げれば──参宮くんが酷く気怠げな表情を浮かべていた。
182
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる