病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)

文字の大きさ
50 / 68

監視型①

しおりを挟む
『ああ、バレちゃいました? 古典的な手ではありますが、それにしては持った方ですね。……ふふ、とっても可愛かったですよ。寝顔、初めて見ました。──監視カメラのレンズが、邪魔だと思ってしまうくらい』

「最悪な女」

「もう直球の罵倒じゃん。せめてもうちょっと捻ってくれよ」

「それ、言ったら……全員最悪、だよ」

「文月くん?」

 その口からあまりにも辛辣な言葉が出てきた気がする。彼が言ったという事実を信じたくないため、記憶から直ぐに消そうとした。放課後になったばかりで、がやがやとした周りの生徒の賑やかな声が響いている。もしかしたらその声と混ざって妙な聞き間違いをしたのかもしれない。きっとそうだ。……そうであって欲しい。
 やんぱらは最近新しいキャラのストーリーが配信され、その子がまたなんとも古き良きヤンデレなのだ。相手の全てを知りたくて、盗撮盗聴なんでもござれなストーカータイプ。

「直くんこーいう子が好きな感じ?」

 いつからか混ざっていた四方田くんが問いかける。

「うん、好き。めちゃくちゃ」

「へえ……」

 画面をじっと見つめ、彼が興味ありげに小さく頷いた。オタクに話を合わせてくれるところが優しい。

 他のタイプもそうだが、相手の行動を監視しようとするタイプは狂気さが愛おしい。ヤンデレはこういうのがいいんだよ。リアルにいたら本当に困るけれど。創作だからいいのだ。充足感とともにゲームを中断し、気分の高揚のせいか上がりそうな口角を抑えるのに苦労する。

「田山」

 降り注いだのは、伍代先輩の声だった。顔を上げれば彼が目の前にいて、微笑を浮かべている。いつの間に教室に来ていたのだろう。

「この間はありがとうな」

「ああいや、こちらこそ……楽しかったです。ありがとうございました!」

「……楽しかったって?」

 会話をする俺たちに、翔が問いかけてくる。

「先輩の家に泊まってた」

「え、マジ!? 楽しそーじゃん、いいなー!」

 監禁云々は、もちろん伏せて。四方田くんが驚いたように声をあげる。翔は眉を寄せ、疑問の色を瞳に浮かべていた。いつの間にそんな仲になっていたんだ、とでも言いたげに。……俺自身、ここまで仲良くなれるとは思っていなかったから気持ちはわかる。

「今度オレの家にも泊まりに来て!」

「……おれの家も、来て欲しい……」

「いいね。俺の家でお泊まり会してもいいし……遊びにも行きたいな」

 言えば、ふたりは笑顔を浮かべた。翔は口を挟まず、こいつ散々いろいろあったくせによく言えるな、といったような呆れを滲ませてこちらを見つめている。やたらと今日は言外に伝わってくるな。それがわかるのも、幼馴染だからだろうか。
 伍代先輩が小さく笑って、「……人気者だな」と続ける。人気者、というよりは──ただ、周りに恵まれているだけだ。

「え、誰の家でやる? オレめっちゃお菓子持ってく!」

「おれも……。たぶん、参宮くんも来る、よね」

「……だろーな。人数的に泊まれる家あんの? 直也のとこキツイだろ、俺ん家ならまだいけっけど」

「はは、いいな! なんなら俺の家でもいいぞ、賑やかな方が嬉しいからな!」

 みな一様に弾んだ声をあげる。盛り上がっていく会話に、俺もなんだか楽しみになってきた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

処理中です...