日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

文字の大きさ
5 / 120
2.開戦と青き慧眼

太平洋の嵐

しおりを挟む
昭和十六年(1941年)十二月、極秘裏に連合艦隊が日本本土を出航した。
その目的地は、ハワイ・オアフ島――真珠湾。

この作戦は、南雲忠一中将率いる空母部隊による“奇襲”として記録されることになる。だが、背後にはもう一人の戦略家の影があった。

――蒼月レイ、十三歳。
少年は国家の「秘密の頭脳」として、戦争の潮流に立っていた。



「攻撃は現地時間の午前七時三〇分。第一波は空軍基地、第二波は通信施設。目標は“艦隊の破壊”ではなく“作戦の混乱”です」

東京・市ヶ谷台の地下戦略室。

「戦艦を沈める必要はありません。むしろ、“無傷の恐怖”を残す方が、アメリカを戸惑わせます」

軍参謀たちは、レイの論理の非情さに驚きつつも、その精緻な構成に言葉を失っていた。

「敵の怒りではなく、“混乱”を引き起こすのが目的です。米国は戦力よりも“判断”を破壊されたとき、初めて崩れます」

少年の言葉は、戦場の空気ではなく、“政治の未来”を見据えていた。



横須賀軍港から出撃する艦隊。
空母「赤城」では、南雲中将が少年の最終指示を手にしていた。

「この子供が……本当に未来を見ているというのか」

苦々しげに呟く参謀もいたが、南雲は黙ってそれを制した。

レイは出撃前夜、山本五十六に宛てて、わずか一枚の手紙を送っていた。

「破壊ではなく、“無力化”こそが、戦略の極みです。
我々は、暴力ではなく恐怖を操るのです」
――蒼月レイ



十二月八日午前三時五〇分、日本時間。

第一波航空隊がハワイの空を翔ける。
戦艦ではなく、通信棟と燃料施設が正確に爆撃される。
煙と火が上がり、だが港の中心――戦艦たちは、動かずそのまま残された。

「……なぜ、止めを刺さなかった?」

米海軍は理解できずに混乱した。
その奇妙な“優しさ”が、恐怖に転じる。

報告を受けた米大統領・ルーズベルトは言った。

「日本は――いや、“誰か”が、“考えて動いた”。これは獣の咆哮ではない。――獣の皮を被った戦略家の仕業だ」

それが、蒼月レイの意図だった。



その日の午後。
東京帝大の地下に、香取大佐が姿を現す。

「レイ、君の作戦は成功した。敵の反撃は遅れている。米国の議会は混乱し、反戦派が力を得始めた」

「では、“次”に移るべきですね」

レイは、もう次の段階――“講和と外交の準備”に目を向けていた。

少年は、勝利をもって“終わり”とせず、“未来を築くこと”を真の目的としていた。

「これで、日本の運命は――ほんの少し、ずれた」

その“ずれ”がやがて、歴史全体を変える津波となるとは、まだ誰も知らなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

異聞対ソ世界大戦

みにみ
歴史・時代
ソ連がフランス侵攻中のナチスドイツを背後からの奇襲で滅ぼし、そのままフランスまで蹂躪する。日本は米英と組んで対ソ、対共産戦争へと突入していくことになる

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

東亜の炎上 1940太平洋戦線

みにみ
歴史・時代
1940年ドイツが快進撃を進める中 日本はドイツと協働し連合国軍に宣戦布告 もしも日本が連合国が最も弱い1940年に参戦していたらのIF架空戦記

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら

もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。 『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』 よろしい。ならば作りましょう! 史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。 そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。 しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。 え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw お楽しみください。

処理中です...