日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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11.海の向こうの答え

東の少年と西の国

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1942年(昭和17年)8月13日
ワシントン郊外の連邦政府賓客用ヴィラ

大統領との面会を翌日に控えた夜、蒼月レイは机に向かっていた。手元の紙には、短い文章が並んでいる。

「――交渉で一番大事なのは、“信じるに足る相手”であると思わせること」

岸本信介がかつて口にした言葉を、何度も反芻する。彼の遺志を背負うと決めた日から、レイは“武器”ではなく“言葉”を磨いてきた。

「レイ様、ホワイトハウスからの正式連絡が届きました」
通訳兼補佐官の真鍋ルリ子が、少し緊張した面持ちで言う。

「明日午前9時、ルーズベルト大統領との個別会談が設定されました。議題は、“戦後秩序の試案”です」

レイはうなずくと、胸元から一枚の紙を取り出した。

それは『東西融和に向けた基礎構想』。
太平洋を挟んで互いに歩み寄るための“試み”だった。

「明日は、“未来”を語りに行く」



8月14日 午前9時5分
ホワイトハウス 南棟・執務室

「よく来てくれましたね」
ルーズベルトは柔らかな笑顔で少年を迎えた。

「君と話すのは二度目になりますが……今回はより現実的な話ができそうです」

レイは椅子に腰を下ろし、まっすぐに相手を見つめる。

「私は戦争を止めるために来たのではありません。
戦争の“先”にある秩序を、共に考えるために来ました」

ルーズベルトの表情が一瞬引き締まる。

「それは、“日本の未来”の話かね? それとも、“世界の未来”か?」

レイは迷わず答える。

「“日本を中心とした世界”の未来です。
日本は軍事による支配を選びません。
ですが、精神的な信頼と文化・経済の影響力によって、
“秩序の中核”を担う国でありたいと願っています」

静かな沈黙が落ちた。

数秒後、ルーズベルトが口を開いた。

「君の理想は興味深い。だが、現実には、信頼は一夜では築けない」

「ええ。その通りです。だから私は、敵としてではなく、“約束を守る隣人”としての姿をお見せする」

レイは懐から一通の書状を取り出した。

それは、“三国同盟の見直しに関する内部協議”の進行状況を記したものであった。

「ナチス・ドイツの戦略は、私の信じる価値と相容れません。
彼らの勝利は、日本の理想を歪める。私はそれを止めたい」

ルーズベルトの眉がわずかに上がる。

「それを言える日本人は、まだ君しかいない」

レイは深くうなずいた。

「だからこそ、私が言います。
――“日本は変わろうとしています”。どうか、その変化の兆しを見てください」

窓の外、夏の陽光が芝の上に静かに落ちていた。
その光の先に、“かつての敵国”と“希望を語る少年”の影が、重なっていた。
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