日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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16.ヨーロッパの扉

亡命政府

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1942年(昭和17年)10月28日
イギリス・ロンドン
自由フランス政府・臨時事務所

「君が“日本の子ども”だというのは、本当なのか?」

狭い執務室にて、シャルル・ド・ゴールは睨むようにレイを見つめた。

「いえ、“ただの子ども”なら、わざわざここまで来ません」

蒼月レイは真っ直ぐにド・ゴールを見返し、小さく笑った。

「私は、自国の未来を見誤らないために来た。そして、あなた方が“祖国を失った今の悔しさ”を知るからこそ、頼らせていただきたいのです」

ド・ゴールの背後には、祖国・フランスの国旗――その色は、亡命先の薄暗い部屋でも凛と輝いていた。



「君の言う“新秩序”とは何だ? 君はアジアを束ね、アメリカと組み、今度はヨーロッパをも構築しようというのか?」

「違います」レイは静かに言った。

「“束ねる”のではありません。“共有”するのです。
それぞれの国が、誇りを保ったまま、戦争以外の方法で未来を築けるようにする。
それが私の構想――“共栄秩序”です」

「フランスは誇りを奪われた」ド・ゴールは低く呟いた。

「ヴィシー政権が我が国を売り飛ばし、ドイツが我々を蹂躙した。
……誇りなど、塵になった。今さら“未来”などと綺麗事を並べられてもな」

「では、その誇りを、再び掲げてください」レイは一歩、机に近づいた。

「私は、ヒトラーの“復讐の論理”ではなく、あなたの“回復の論理”に賭けたい。
あなたがもう一度、自由フランスをヨーロッパの光にできるなら――そのとき、共に歩みましょう」

ド・ゴールは長い沈黙の末、立ち上がった。そして、レイに近づき、そっと右手を差し出した。

「……我々の誇りは、亡命の中で死んだわけではない。生きている。
君の瞳に、それが映っていた。私は忘れていたようだな」

二人の手が、固く握られた。



同日夜、ロンドン市内の教会跡にて。
蒼月レイは焼け落ちた聖堂の前に立っていた。

瓦礫の中に、まだかすかに残るステンドグラスの破片。
それを見つめながら、彼は呟く。

「誇りも、信頼も、理想も――
すべて、一度は壊れたものだ。だから、また“築く”しかない」

次に向かうのは、欧州最大の精神的拠点――バチカン。
戦火に揺れるこの大陸で、レイは「信仰」と「秩序」の接点を探ろうとしていた。
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