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16.ヨーロッパの扉
開かれた間
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1942年(昭和17年)10月26日
イギリス・ロンドン 首相官邸・10ダウニング街
雨に濡れた石畳の道を、黒塗りの車が静かに進んでいく。車中の蒼月レイは、手元の資料を最後まで読み終えると、そっと窓の外を見た。
「ここが、ヨーロッパの心臓……か」
ロンドンに到着したレイを待っていたのは、単なる外交儀礼ではない。世界秩序を左右する“試金石”――英国首相・ウィンストン・チャーチルとの歴史的対話だった。
⸻
「私はね、若者が世界を変えようとする姿を、何人も見てきた。しかし君のように“冷静”で、なおかつ“大胆”な者には、会ったことがない」
チャーチルは葉巻に火をつけると、深くレイを見つめた。
「あなたの国は、ヒトラーと手を切った。だが我々は、まだその影と戦っている」
「だからこそ、私たちは“戦う理由”を再定義する必要があります」とレイは言った。
「自由のために戦うのか。名誉のためか。それとも、復讐のためか。
……私は、“未来を築くため”に戦う道を選びたい」
チャーチルの眉が僅かに動く。
「理想論だと、笑われたことはないか?」
「毎日のように」レイは微笑んだ。
「だが、理想がなければ、人は破壊しか選ばない。
理想を現実にするには、“現実”と真摯に向き合わねばならない。
だからこそ私は、核の力を抑止として持ち、争いではなく“信頼”を築く道を選んだのです」
チャーチルは立ち上がり、壁にかけられたヨーロッパ地図を指差した。
「この地図の上で、我々は何百年も戦ってきた。だが、君が描く未来が本物なら……
私は“老い”として、最後の賭けに出てもいい」
⸻
その夜、首相官邸・裏書簡室
英国外務省高官たちは、蒼月レイの提案する「新大西洋憲章草案」を前に、静かに頷いた。
それは、アジアからヨーロッパまでを含む共通の価値規範――
武力でなく、信頼と協調で秩序を築くという提案だった。
「これが、第二次大戦の“出口”になるのかもしれない」
誰かが、ぽつりと呟いた。
⸻
翌朝、レイは静かな朝のロンドンを歩いていた。
霧の中、彼の歩みは確かだった。
ヨーロッパの扉は、ついに開かれたのだ。
だがその先に待つのは――理想を疑う者たちとの、長い説得と闘いであることも知っていた。
「私は、争いの後にしか未来を語れないこの世界を、変えたい」
その一歩が、いま始まった。
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だがその先に待つのは――理想を疑う者たちとの、長い説得と闘いであることも知っていた。
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その一歩が、いま始まった。
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