日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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18.帝国を磨く刃

封建の残り香

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1942年12月3日、東京。

陽が落ちるのが日に日に早くなっていた。
帝国議会の冬期臨時会期が開かれていたこの日、霞ヶ関の空気はひときわ重く、そして古かった。

蒼月レイは、議場の傍聴席からその様子を見下ろしていた。
本会議のテーマは「戦時産業体制から平時経済体制への移行」——しかし、壇上では繰り返される空虚な答弁、利害調整に終始するやり取りばかりが続いていた。

彼の隣で、経済戦略本部の補佐官が耳打ちする。

「陸軍派の旧議員たちが、“戦後処理はまだ早い”と反発しています。…理由は利権の継続です。予算の三割が軍需企業に流れており、財閥とも結託して」

レイは目を伏せたまま言った。

「封建の残り香……」

かつて明治維新で断ち切ったはずの「身分と特権」が、形を変えて息を吹き返していた。
“軍”と“財”の癒着。
“官”と“金”のなれ合い。
“民”を見ぬまま、“体制”を守ろうとする者たち。

「……日本は、すでに戦争を終えています。勝ったとも、負けたとも言わず、だが確実に“終えた”のです」

レイの小さな声は、誰にも届かない場所で静かに響いた。



翌朝。帝国経済戦略本部・特別会議室。

ここでレイは、“次の一手”を打つことを決意する。
本土の経済再編は、表面だけ塗り替えても無意味だった。

「必要なのは、“構造の刷新”です。
利権を食い潰すだけの経済ではなく、“国民が恩恵を感じられる再分配構造”を築かねばならない」

彼は壁に張り出された図表を指差す。

「これは現在の予算配分。軍需が三割。政党交付金が1.2割。補助金の一部が特定地域に集中。
これでは、地方の生活や教育、医療にまで金が届かない。
“経済成長”の名の下に、太っているのは一部の都市と旧体制だけです」

参謀の一人が口を挟んだ。

「それを壊せば、反発は必至です。特に議会、財界、旧軍人……」

「だから壊します」

レイはきっぱりと言った。

「敵は“国民”ではない。
抵抗するのは、“変わることに怯える者たち”です。ならば私は、彼らの目の前で変わってみせましょう」

彼は、すでに次の行動を決めていた。
それは、**全国放送を通じた“改革宣言”**だった。



数日後。
1942年12月10日 午後8時。全国一斉ラジオ放送。

背景には厳かな弦楽四重奏。
そして、蒼月レイの声が流れ始めた。

「こんばんは。私は、帝国経済戦略本部の特命代表・蒼月レイです。
この放送は、“国家のこれから”を、皆さん一人ひとりにお伝えするために行っています」

静かな導入のあと、彼は切り込んだ。

「日本は今、戦争を終えました。もう、大砲は鳴りません。
これからは、私たちの“日々の暮らし”が、日本という国をつくっていくのです」

「ですが、その日本の体には、まだ古い“しがらみ”が残っています。
あなたが見えないところで、利益を独占し、権力を手放さない者たちがいる。
それは、政治、軍、財界の一部です」

ここで一瞬、音楽が止まる。
レイは、あの有名な言葉を引用した。

「英国の首相、チャーチルはこう言いました——
『民主主義は最悪の政治形態だ。ただし、これまで試された他のすべての政治形態を除けば、だが』」

「私も、民主主義の限界を知っています。
数が多い方が正しいとは限らない。金と結びついた声が、真実をねじ曲げることもある」

「しかし、私は信じたい。
この国の“声なき多数”が、ただの沈黙ではないと。
だから私は、“新しい民主主義”を築きます」

「それは、天皇陛下の権威を中核に据え、
民の声を正当に集め、賢明に裁く仕組みです。
“誰が一番喋るか”ではなく、“誰が一番、国を愛しているか”が反映される制度です」

「この国の未来は、いま始まります。
私はこの改革のために、誰とでも話します。誰とでも、戦います。
そして何より、“あなた”と共に、歩きます」

沈黙ののち、エンディングテーマが流れた。
その夜、ラジオ局には数千件の反響が届いた。
賛否両論。賞賛と罵倒。希望と不安。

だが、すべての声が一つだけ、共通していた。

——「この国に、変化が始まった」



レイはその夜、書斎で独りノートに書き記していた。

《変革の敵は、声ではない。“慣れ”である。》

そして彼は、その“慣れ”を断ち切るために、次章でついに動き出す。
財閥会議への出席、旧軍部の解体準備、政党改革案の提出——
それは、“神話から制度へ”と向かう、壮絶な改革の幕開けだった。
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