日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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21.未来への誓約

覇者の設計図

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ハワイ・オアフ島、午後2時。冬とは思えない陽の光が、レイの机の上に広がる図面を照らしていた。風は静かに椰子を揺らし、水平線の向こうには、かすかに雲が浮かんでいる。

蒼月レイの目前には、数十枚にわたる分析資料と未来設計図が並んでいた。その中央に、太字で記されていた。

《1960年 日本、世界一の経済大国へ》

14歳の頭脳が描き出すそれは、単なる構想ではなく、すでに実行に移りつつある計画だった。

「……この道は、きっと現実になる。条件を整え、信頼を積み重ねれば、1960年に間に合う」

隣に座る結城桜は、彼の横顔を見ながら、静かに頷いた。

「レイ……それ、本当に全部ひとりで考えたの?」

「もちろん、参考にした先人たちはいる。でも、誰も“未来”をここまで論理的に組み立ててはいない。僕がやるしかなかった」



設計図には、以下の7本の柱が描かれていた。

■1. 東アジア経済圏の確立

満州・台湾・朝鮮半島の経済を一体化し、日本を中核とする「東アジア経済同盟」を形成。
鉄道、電力、港湾、通信、教育までを一括して整備する。

■2. 国内経済の再構築

財閥依存から脱却し、中小企業と地方産業を活性化。
労働人口の都市部移動を支援し、農村にも機械化と基礎教育を。

■3. 通商と資源の安定

南方資源ルートを守るため、輸送ルートの再編と通商協定を強化。
米国との協調によって海上輸送の安全保障を行う。

■4. 科学技術と教育への集中投資

帝国大学を中心に「理工研究機構」を設立し、航空、精密、通信、合成材料に重点配分。
初等教育も義務・無料化を進め、識字率100%を目指す。

■5. 通貨の安定化と信用力強化

円は満州・台湾・朝鮮半島で引き続き基軸通貨として機能。
中央銀行制度の強化と国際通貨基金との対話により、外貨準備の安定を図る。

■6. 社会保障と雇用

老齢年金制度の創設、失業者への職業再教育、女性の雇用支援策など、
「豊かさの実感」を全層に届けるための福祉政策を用意。

■7. 国際的影響力と信用構築

戦後混乱が避けられない欧州に対し、復興期に資本・技術を“先回り投資”。
信頼できる経済パートナーとして、国際社会での信認を得る。



そのとき、レイの元を訪ねてきた人物があった。
アメリカ合衆国政府より派遣された、特別経済顧問――ロバート・ヘンダーソン。

「ミスター・アオツキ。失礼するよ。今日は提案があると聞いている」

「どうぞ、こちらへ」

レイは、設計図の中から数枚を抜き取り、一冊の概要書にまとめて差し出した。
表紙には、端正な活字でこう記されていた。

『太平洋通商と防衛の安定化構想(概要案)』

ヘンダーソンは黙って資料を受け取ると、数ページめくり、静かに唸った。

「……これは実に興味深い。“条約ではないが、同盟以上の協調”を目指しているように見える」

レイはうなずいた。

「私たちは、“力”ではなく“信頼”を基盤とした協力関係を築きたいと考えています」

「ふむ……それは理想主義に聞こえるかもしれないが、君が語るなら、意味がある。ホワイトハウスに報告させてもらおう」

レイは微笑を返した。

「太平洋の安定は、双方にとって利益になる。今はその種を撒く時期です」



打ち合わせを終えた後、レイは紅茶を一口含み、テラスの外に視線を送った。
桜が隣で静かに問う。

「……本当に、あの設計図どおりに進むと思う?」

「思うじゃない。進めるんだ。僕たちの手で」

小さく笑ったその瞳には、1960年の空が、すでに映っていた。
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