日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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22.帝国の目覚め

未来を告げる風

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三月の東京には、ほんのかすかに春の匂いが混じり始めていた。

戦禍に見舞われることのなかったこの首都は、いまや東洋経済の心臓であり、世界が注視する“平和国家の中枢”となっていた。
その空の下、帝国議事堂では、蒼月レイが次の改革へと歩を進めようとしていた。

「日本の未来は、地方の未来にかかっている」

その言葉は、閣議で静かに告げられた。
誰もが耳を傾ける。彼の言葉が“命令”ではなく、“指針”であることを、皆が知っていたからだ。

「東京だけが栄える国では、やがて崩れる。
教育、医療、交通、文化──すべての均衡を全国に広げなければ、真の発展とは呼べない」

すでに、彼の内閣では地方再編の議論が始まっていた。
道州制のような概念も検討されはじめ、経済特区、地方大学の高度研究機関化、地域鉄道の高速化といった案が次々に資料として並べられている。

ある老練な政治家が言った。

「地方に投資しても、人が戻らなければ意味はない。若者が都市を選ぶのは当然ではないかね」

レイは微笑した。

「だからこそ、地方に“希望”を戻す必要があります。
学び、働き、子を育て、未来を語れる地を全国に作る。それこそが、本当の『国』のかたちです」

――彼はまだ十五歳の少年だった。だがその眼差しは、誰よりもこの国の未来を深く見据えていた。



その夜。

赤坂の官邸で、レイは珍しく執務室を離れ、庭に出ていた。
柔らかな夜風が春の気配を運ぶ中、彼の隣には、ひとりの少女が立っていた。

結城桜――レイの想い人。ともにハワイから戻ってきた少女であり、いまやレイの心の支えとなっていた。

「……本当に、すごいよ。あなたの国って。どこに行っても笑顔があった。
戦争してたら、こんな景色、絶対見られなかった」

桜が呟いた。

レイは少しだけ表情をゆるめた。

「僕がしたことなんて、ほんの始まりにすぎないよ。
それでも、誰かが最初に“違う未来”を信じなければ、変わらなかった」

「その“誰か”が、十五歳のあなたなんだもん。やっぱり変だよね」

そう言って桜は笑った。

レイも、釣られて小さく笑った。

「君が一緒にいてくれたから、だと思う。……いや、本当に。
桜がいたから、僕は……“孤独”を乗り越えられた」

静寂が流れた。

そして、風が吹いた。

桜は、レイの横顔をじっと見つめる。
この国を変えた少年。その肩に乗るものの重さ。その影にある悲しみと決意――

彼女は、ゆっくりと手を伸ばした。

「ねえ、レイ。暫くこうしててもいい?」

その言葉に、レイははっきりと頷いた。



翌朝。

新聞各紙の一面は、再び“蒼月レイ”の名で埋め尽くされた。

《地方復興への新戦略――帝国の次なる成長軸は「均衡」》

その中に、政治部記者が書いた短い一文があった。

《東京だけが日本ではない。その言葉に、列島は震えた。
少年が描く未来は、もはや夢想ではなく、現実の設計図となりつつある》



夜の官邸。

レイは、全国の統計資料と格闘していた。出生率、雇用者数、地域別GDP、大学進学率、農業所得──

膨大な数値を前にしながら、彼は全体像を即座に構築していく。まるで、神経の先で国土そのものを感じ取るかのように。

桜は、その様子をそっと見守っていた。

「やっぱり、あなたって変だよね。15歳なのに、なんでそんなに“この国”のこと、分かるの?」

レイは笑った。

「きっと、生まれる前から……日本が好きだったんだと思う」

──そして、その“好き”は、今や“責任”になっていた。



少年は夜の帳の中、未来へと繋がる数字の中に、
愛する国の「輪郭」と「温度」を感じていた。

それは、彼にしか見えない“帝国の実感”だった。
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