日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

文字の大きさ
94 / 120
24.世界秩序の建築者

未来を選ぶ民

しおりを挟む
1943年4月10日――東京、永田町。

霞ヶ関の上空には春の陽が差し込み、桜の花びらが静かに舞っていた。
それは、かつて焼けるはずだった都市が、美しく咲き誇っている証でもあった。

国会議事堂の大広間。
新制度による「初の総選挙」の開票が終了し、国民の“選択”が今、ここに形となって現れようとしていた。

「投票率、89.2%……戦後初の選挙で、ここまで民意が動くとは」

記者たちが息を呑むなか、壇上に一人の少年が姿を現す。
背筋を伸ばし、黒の詰襟に日の丸のバッジをつけたその姿は、もはや一国の象徴だった。

蒼月レイ――特命全権代表。十五歳。
彼は静かに壇上のマイクの前に立ち、周囲の喧騒がぴたりと止んだのを確認してから、口を開いた。

「……今日、我々は一つの大きな節目を迎えました」

会場に集まった各国の特使、国内の記者、そして新議員たちが息を呑む。

「これは単なる議員の入れ替えではありません。これは――民が、自らの手でこの国の未来を選んだ、その証です」

静かな拍手が広がる。だがレイはそれに頼らない。

「我々はかつて、上から押し付けられた政治を生きていました。戦争、軍部、恐怖、そして閉ざされた言論。
ですが、今――国民一人ひとりが、自分の意思で『誰に託すか』を決めた。私はそれを、日本の夜明けと呼びたい」

やがてレイは、選挙で選ばれた新たな議会メンバーへと視線を移した。

「今日からこの国の政治は、“民が選び、民に応える者たち”によって担われます」

力のこもったその言葉に、記者席からフラッシュが走る。

――レイが作り上げた国会制度はこうだった。

衆議院はそのままにしつつ、貴族院を廃止し、代わりに公共代表院という「地方・職能団体・専門家」からなる議会を新設。
一方で、地方自治を強化する改憲が進み、中央集権に対するバランス調整も制度的に設計された。

国会の中では、すでに「経済再建法」「技術革新奨励法」「教育改革法」などの審議が始まっていた。

――すべては、“未来”を選ぶ民のために。



選挙翌日。

レイは桜とともに、神楽坂の小さな料亭を訪れていた。
すべてが終わったわけではない。むしろ始まりなのだが、今日だけは一息ついてよいと周囲に説得されての外出だった。

「……静かですね、ここ」

「うん。東京なのに、ここだけ時が止まってるみたいだ」

障子越しの夕日が、二人の影を優しく照らす。

「レイ、今日は、あなたの言葉に涙を流していた人が大勢いたよ」

「……国民に伝わったなら、よかった。桜の言葉も、いつも僕を支えてくれてる」

一瞬の沈黙のあと、桜はそっと湯飲みに手を伸ばした。

「……ねえ、レイ。これからこの国、どうなると思う?」

レイは笑わなかった。ただ、真っ直ぐにその問いを受け止め、答えた。

「たぶん、いろんな失敗もある。でも、“誰かが決めた未来”じゃない。
僕たちみんなで作った、たった一つの“この国の未来”になると思う」

桜は微笑んだ。やっぱり彼は、未来を信じていた。



その夜、各国の電信機関には、次のような速報が流れた。

【東京発】
新制度下での初選挙、蒼月レイ主導の「公共代表制」始動
民主主義を再設計した日本に対し、米・英・仏が歓迎声明

新たな秩序の旗は、静かに、だが確かに掲げられようとしていた。
世界は、また一つ動こうとしていた――“民の意志によって”。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら

もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。 『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』 よろしい。ならば作りましょう! 史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。 そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。 しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。 え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw お楽しみください。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年中盤まで執筆

離反艦隊 奮戦す

みにみ
歴史・時代
1944年 トラック諸島空襲において無謀な囮作戦を命じられた パターソン提督率いる第四打撃群は突如米国に反旗を翻し 空母1隻、戦艦2隻を含む艦隊は日本側へと寝返る 彼が目指したのはただの寝返りか、それとも栄えある大義か 怒り狂うハルゼーが差し向ける掃討部隊との激闘 ご覧あれ

天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜

岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。 けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。 髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。 戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!??? そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

処理中です...