日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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24.世界秩序の建築者

導かれし声

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1943年4月1日、東京。

春の気配が漂うなか、国会議事堂の大理石の階段を、少年はゆっくりと昇っていく。蒼月レイ――十五歳の特命全権代表は、黒の詰襟に身を包み、凛とした姿で扉をくぐった。

この日、臨時国会が開かれた。

議題は二つ。
第一に、占領地経済圏における民間経済組織の法整備。
第二に、新憲法草案に基づく制度改革の説明。

議場に集まった議員たちは、もはやレイをただの“少年”とは見ていなかった。その姿は、国家の中心にある“頭脳”であり、同時に“羅針盤”だった。

レイは演壇に立ち、ゆっくりと語り出した。

「我々が進めてきた戦後の経済計画は、今や民衆の生活に実感をもたらしています。しかし、制度が追いついていません。古い体制では、もうこの国を支えきれないのです」

その口調は静かでありながら、決意に満ちていた。

「政治に携わる我々の義務は、民の意思を聞くこと……そして、導くことです」

議場に沈黙が流れた。誰もが、その「導く」という言葉に、わずかに眉を動かした。

——それは、つまり「民意の先導」を意味していた。

しかし、その沈黙を破ったのは、議員ではなかった。

レイが議場を出たあと、国会に併設された応接室で彼を待っていたのは、結城桜だった。

「レイ、今日の演説で気になったんだけど……ひとつ聞かせて」

レイは頷く。

「どうした?」

「“導く”って言ったよね?それってつまり……“操る”って意味じゃないの?今の日本って、本当に“民が選んでる”のかな?
それとも、“あなたが信じている未来”を、みんなが信じてるだけ……?」

彼女の言葉には、非難の色はなかった。ただ、真剣なまなざしがあった。

レイは数秒の沈黙の後、答えた。

「……君は、操られていると思う?」

桜はふっと笑った。

「まさか。むしろ、自分で考えて、君の意志に共鳴してるって感じ」

レイは少し視線を落とし、言葉を選ぶように答えた。

「民意というのは、すべてを把握して形成されるものじゃない。多くの人は、目の前の生活に基づいて判断する。でも僕は、十年後、二十年後の未来を考えている。だから先に“思想”を打ち出す。それに賛同が集まる。」

「それが……“民意と一致している”ってこと?」

「そう。僕は民意を“つくる”ことはしない。でも、民意が向かう先に“道しるべ”を立てることはする」

桜は頷いた。

「つまり、レイの思想と民意が一致する構造って、“結果”としての一致なんだね。民衆の意思が、後から追いかけてくる……」

「だから責任がある。僕の思想が間違っていたら、民意を誤らせることになることになるかもしれない。それを自覚した上で、進むしかない」

その言葉には、少年の背負う“国家の重み”があった。

桜はふと、窓の外に目を向けた。青空が広がっている。その空の向こうにあるのは、民の暮らし。笑い声。悩み。不安。希望。

「……ねえ、レイ」

「ん?」

「君は、どこまで“人間”でいられる?」

レイは答えなかった。ただ、微笑を浮かべた。

——その微笑みは、少年のままの彼と、国家の行く末を背負う彼の間に立つ、儚い均衡を象徴していた。



夜。自宅の書斎。

レイは一人、原稿用紙に万年筆を走らせていた。

《民主主義とは、民の声が正しいとは限らないという前提から出発する。そして、それでもなお“声”に力を与え、社会を築こうとする試みである》

それが、彼の次なる構想の冒頭文だった。

今、民の声はレイを支持していた。
だが、それが永遠に続くとは限らない。
だからこそ、制度に昇華させるのだ。
人ではなく、「構造」で国を導けるように。

レイは目を閉じた。

「……次は、“教育”だな」

民が自ら考え、選び、未来を築くために。

いつの日かレイが導くのではなく、“ともに歩む”国を。

彼の目に、また一つ新たな光が宿った。
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