日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

文字の大きさ
96 / 120
24.世界秩序の建築者

焦土に花を

しおりを挟む
1943年4月。

戦争は続いている。ドイツは崩れかけながらも、なお粘り、ナチス政権は末期の狂気に囚われながら権力を握り続けていた。
だが、すでに敗北の色は濃い。
イタリアの降伏からひと月。欧州全土に流れる“戦後”の気配を、レイは見逃さなかった。

──焦土に、未来の種を。

東京に戻ったレイは極秘裏に、ある構想を進めていた。
それは「欧州復興支援計画」――アメリカに先んじる、日本主導の戦後構想だった。

「欧州は、まだ滅びていない。たとえ都市が焼けようとも、思想や文化の炎までは消えていない」

帝国議会の地下に設けられた非公開の会議室。そこに集められたのは、外交官、経済技官、そして“未来の設計者”たちだった。
レイは地図を指しながら、静かに言った。

「我々が援助を始めるのは、終戦“後”だ。だが、準備は“今”しかできない。
 終わってから考える者たちは、すでに遅れている」

資料の一部には、ドイツ国内の知識人たち――ナチスに反発し、地下で活動している旧社会民主派や宗教指導者の名前が記されていた。
彼らの存在をレイは“種子”と呼んだ。

「破壊ではなく、再建を主導する。勝者が敗者を裁く戦後ではなく、共に未来を築く戦後を目指す。そのためには、正義より“構造”が必要だ」

ある参謀が疑問を口にした。

「ドイツ人を信用するのですか? ナチスが生き延びる可能性は?」

「体制と民族は別だ。あの国にも、命を賭してヒトラーに抗った者たちがいる。日本が彼らを信じねば、誰が焦土に花を咲かせるのか」

その言葉は、静かながらも強い波紋を広げた。

――

同時期、アメリカとの対話も継続されていた。
ホノルルでの会談以来、日米関係はかつてないほど緊密になった。
だが、それは同時に、距離の近さゆえの“競合”の芽も生む。

ワシントンD.C.から届いた1通の報告書には、こう記されていた。

「日本の構想は、明らかに米国の戦後戦略を先取りしている。
友好国であることは間違いないが、指導権を巡る摩擦の火種となり得る」

それを読んだレイは、わずかに目を細めた。

「……世界を導く者は、一人であってはならない。
 だが、“先に歩く者”は必要だ。日本は、その道を選んだだけだ」

レイは桜に目を向けた。
彼女は一歩下がって、それでも確かに“隣”にいた。

「桜。世界は、もうすぐ“戦後”になる。けれど、“平和”にはならない。今度は“経済”が、次の戦争を始めるだろう」

「だから、あなたが“設計”するのね」

「……ああ。成長による平和を、戦争ではなく、繁栄で人を繋げる世界を」

レイは立ち上がった。机の上には、真新しい外交文書。
その表紙にはこう記されていた。

『欧州復興支援構想草案 ―E.R.S.P.―』

Economic Reconstruction Support Plan。略して“ERSP”。

未来に花を咲かせるための、日本の種蒔きが、いま始まった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~

蒼 飛雲
歴史・時代
 ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。  その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。  そして、昭和一六年一二月八日。  日本は米英蘭に対して宣戦を布告。  未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。  多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

処理中です...