日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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特別章:知性と感情の交差点

桜舞う静謐

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1943年某日。
ハワイ、オアフ島・ダイヤモンドヘッド近郊。



「今日は休んで」

桜がそう言ったのは、朝のコーヒーをテーブルに置いた瞬間だった。

「……何で急に?」

レイが眉をわずかに上げる。テーブルには、数通の極秘文書と、経済支援に関するアジア諸国からの電報が届いていた。

「全部。仕事、今日は全部やめて。お願い、レイ。休むためにわざわざハワイにきたんだよね?」

一瞬、部屋に静寂が落ちた。
レイは桜の真剣な眼差しを受け止めたまま、目を伏せ、深く息を吐いた。

「……わかった。今日は、1日休む。僕と一緒に過ごしてくれる?」

その言葉に、桜の瞳が輝いた。



「はい、次はここ!」

車を降りて歩く桜の後ろ姿は、まるで少女のようだった。白いワンピースにサングラス、軽やかに揺れるポニーテール。レイは帽子を深くかぶり、サングラスをしていたが、その表情にはうっすらと笑みが浮かんでいた。

ふたりは、レイがこれまで一度も訪れたことのなかった観光地を巡った。地元のマーケットでパイナップルジュースを買い、浜辺で足だけ海に浸し、露店で売られていた奇妙な民族楽器を手に取っては笑い合う。

「……こんなに"無駄"で楽しい時間を過ごしたのは、久しぶりかもしれない」

浜辺で、砂に文字を書きながらレイが言うと、桜は彼の横に腰を下ろした。

「無駄じゃないよ。レイにとっても、世界にとっても」

「世界にとって……?」

「レイがここで笑ってるだけで、きっと世界のどこかで、安心する人がいるんだと思う」

桜の声は、冗談めいていたけれど、その表情は真剣だった。



「レイは、私のことどう思ってるの?」

突然の問いだった。

夕暮れのカフェ。レイは紅茶をひと口含み、そのまま沈黙した。

「答えて。私は、レイの傍にいていい人間?」

「……桜」

レイはゆっくりとカップを置き、彼女をまっすぐに見つめた。

「君がいなければ、僕は今ここにいない。君がいなければ、僕は、たぶん壊れてた」

「……」

「今まで、君を守る立場だと思ってた。でも最近は違う。君といることで、僕の心は満たされる。君は……君だけが、僕の居場所なんだと思う」

桜の目が見開かれ、そして――

「……それ、告白?」

「そうかもしれない」

頬を赤らめながら、桜は目を伏せた。

「じゃあ、答えるね」

レイが小さく首を傾げた時、桜はテーブルの下でそっと彼の手を握った。

「私も、レイの傍にいたいって思ってる。誰よりも、長く。ずっと、ずっとね」



その夜。月明かりの下、ふたりは並んで歩いていた。

「ねぇ、レイ。ひとつだけ、言っていい?」

「何だい?」

「……君が世界を変えたって、将来、教科書に書かれると思う。でもね、私は違う言い方で覚えてると思うんだ」

「どういう意味?」

「“私は、世界を変えた少年を好きになった”って――それが、私の物語」

レイはふっと笑い、手を握り返した。

「じゃあ、僕もその物語に登場させてくれ。君の隣に立つ人間として」



レイはその夜、深く眠った。
何年ぶりかに、“何も背負わず”に眠る夜だった。

そして桜は、その眠る横顔をそっと見つめながら、心の中で決意していた。

――この人と、未来を生きていく。

世界を背負う少年の隣で、自分にできることをすべてして。
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