日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

文字の大きさ
113 / 120
28. 帝国の輪郭

求められる覇権

しおりを挟む
1943年12月下旬。
灰色の雲が東京上空を覆う寒空の朝、帝国戦略本部では非公開の記者懇談会が行われていた。招かれたのは、日英米の一流紙に所属するジャーナリストたち——いずれも政財界と深い繋がりを持つ、いわば“言葉で世論を作る”者たちだった。

会場には、重ねた資料と湯気の立つ紅茶の香りが漂っていた。
一歩遅れて入室してきた蒼月レイは、記者たちの視線を真正面から受け止める。

「私がここにいるのは、偶然ではありません」
「この国がここまで来たのも、偶然ではないのです」

レイは静かに口を開いた。

「私は、覇権を望んでいます」

記者たちの筆が一瞬止まる。あまりに明確な宣言。
だがレイは続けた。

「ただし、それは“力で屈服させる覇権”ではない。
 世界にとって、“日本という国があってよかった”と感じさせる、そういう覇権です」

記者の一人が手を挙げる。

「具体的に、“求められる覇権”とは何を意味しますか?」

レイは一枚の地図を掲げた。東南アジアから南米に至るまで、各国の名前の上に小さく朱の丸が重ねられている。

「これらは、今年だけで日本との二国間経済協定を結んだ国々です」
「それぞれの国が、私たちに“頼った”のではない。私たちを“選んだ”のです」

その言葉に、記者の表情が次第に変わっていく。
これはただの成長国家ではない。“方向”なのだ、と。



同日午後。
南アジアの大国・インドにて、英領体制に対する自治運動が再燃していた。だが今回のデモでは、ただの独立ではなく、“日印連携”を掲げる横断幕が目立った。

「戦後の世界を日本と共に創ろう」
「東京を見よ、未来はそこにある」

こうした親日運動は、ビルマ、タイ、インドネシアでも起きていた。
各地で“日本語を話せることが教養の証”とされるようになり、日本の映画や音楽が輸入されていく。

一方、アメリカでは、スタンフォード大学の国際戦略研究所が、次のような声明を発表していた。

「1940年代後半の世界は、二極構造ではなくなるだろう。
ソ連でもアメリカでもなく、国際秩序は日本という“第三の極”を軸に展開される」

それはまさに、“覇権”としての存在の証明だった。



東京・首相官邸。
夜の静寂のなか、蒼月レイは内閣の閣僚たちを前に演説していた。テーマはただ一つ、「帝国の対外思想」——いかにして日本の影響力を維持し、拡大しつつ、信頼を失わずに進むか。

「覇権は、国際社会における“責任”の裏返しです」
「頼られることを拒まない。しかし、その重さを知る。
 力とは、自慢するものではなく、背負うものです」

その場にいた閣僚たちは、誰一人言葉を挟まなかった。
誰もが、この少年の言葉に、国家としての方向性を見出していた。



その翌日。
帝国戦略本部では、対外思想を文書として正式に整備する作業が始まった。

文書の仮タイトルは、
『共生覇権論:21世紀の帝国理念』

執筆は官僚ではなく、レイ自身が担当することとなった。



同時に、帝国放送局(現・NHK)では、日本の姿勢を象徴する新しい国際広報番組が放送開始された。タイトルは――

『ともに、未来へ』

ナレーションの第一声が、海の向こうの多くの人々の心を打つ。

「あなたの国にとって、強い味方とは何ですか?
武器を送る国ですか?言葉で叱る国ですか?
それとも――あなたの声を聞いてくれる国ですか?」

番組の終わり、日本の国旗とともに、ひとつのメッセージが流れた。

“世界が求めたのは、日本だった。”



そして、蒼月レイは青山官邸の自室で、静かに筆を走らせていた。

《覇権とは、信頼の積み重ねである。
 それを望まない国家は、いずれ誰にも頼られなくなる。
 私たちは、その選択をしなかった。
 だから、世界が私たちを選び始めている。》

《この覇権は、求められる限り、続くだろう。》
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

処理中です...