日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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27. 秩序の継承者たち

傾く世界、揺るがぬ帝国

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1943年11月。
戦火が収束しつつある世界で、静かに、だが確実に、一つの国家が“中心”へと歩を進めていた。かつて“敗戦の予備軍”と目されていた島国・日本——。その名は今や、希望と安定の象徴として、世界の新聞紙面を連日飾っていた。

「アジアの灯は、西を照らす」
「未来は太平洋の彼方から来る」

そう書き立てたのは、英タイムズ紙の特集記事だった。英国経済が長期低迷に苦しむ中、同紙は特派員を東京に常駐させ、“帝国の脈動”と題した連載を開始。そこには、かつての植民地から成り上がった日本の“穏やかな覇権”が克明に記されていた。



東京・大手町、帝国国際戦略本部。
蒼月レイは、分厚い各国報告書を前に目を細めた。

「ヨーロッパはまだ混乱の只中。ドイツの分割統治も、予定通りには進んでいない。フランスは新政府が発足したが、経済はまるで戦時中と変わらない。ソ連はシベリア以東で食糧不足と反政府運動が拡大中。アメリカ……」

アメリカの報告書には、インフレと連邦債務の悪化が赤字で記されていた。終戦後の支援疲れと国内の物価高騰、兵士の帰還による雇用崩壊が重なり、ルーズベルト政権の支持率は急落していた。

「それに比して、我が国の通貨安定率、成長率、輸出入総量……」

レイは数値を指先でなぞった。全ての指標が、戦後国家とは思えない右肩上がりの曲線を描いていた。しかも、日本にはある“決定的な強み”があった。

——核兵器。

現時点で、核兵器を保有している国は日本ただ一国。
その絶対的抑止力は、軍事的威圧ではなく、“守護者”としての立場を日本に与えていた。

「我々は“核の傘”を広げる。ただし、敵ではなく、信頼する相手のために」

レイは“核の庇護”という新しい外交概念を掲げた。アジア諸国——フィリピン、インドネシア、タイ、イランに至るまで、日本との安全保障協定を求めて交渉を申し入れてきていた。



12月初旬、バンコクにて。
タイ王国との間で、正式に「経済友好協定」および「文化技術交流協定」が締結された。日本は鉄道、電力、教育制度の整備に協力し、見返りとして天然ゴムと鉱石資源の安定供給を受ける形に。

式典後の記者会見。
現地メディアの質問に対し、レイは静かに答えた。

「世界が日本に頼るとき、私たちは応える国家でありたい」

その発言は、現地の新聞一面に“真の帝国主義ではない帝国”という見出しで掲載された。



その頃、アルゼンチンでも同様の動きがあった。南米諸国の中で最も工業化の進んだ同国は、日本との技術提携によって、自動車と通信機器の生産技術を得る。日本製の無線ラジオが市場を席巻し、「日本語を学ぼう」という教材が現地の書店で売り切れるほどだった。

文化の輸出——。
それは、経済よりも深く、政治よりも長く、国の影響力を浸透させていく力だった。



東京・青山官邸。

桜は、国際新聞各紙を読みながら、ぽつりと呟いた。

「……あなたがやってることって、ほんとに“戦わずして勝つ”ことなのね」

「勝っているとは思ってない。ただ、“好かれている”とは思う」

レイはソファに腰かけ、新聞越しに彼女を見つめた。

「支配する力は一瞬。けれど、好かれる力はずっと残る。
 だから僕は、“好かれた国家”でい続けたい」

「でも……それがどれだけ難しいか、あなた自身が一番知ってるはずよ」

「だから怖い。だからこそ、怠けた瞬間に崩れる」

レイは目を閉じる。

「影響力は、魅力があるうちだけ。
 武力でも、金でもなく、“魅せる力”こそが、帝国の核なんだ」



同じ日、パリ——。
日本の企業連合「帝産グループ」が、フランスの鉄道再建事業に巨額投資を行うことが発表された。
国を挙げての支援に、仏首相は感極まり、公式記者会見でこう述べた。

「この国を真っ先に助けてくれたのは、戦勝国でも宗主国でもなかった。
 極東の、かつての“敵”とさえ呼ばれた国だった」

そして、彼はゆっくりと日本語で言った。

「……ありがとう、日本」

この映像は翌日、全世界の報道機関によって放映され、日仏の新時代の到来を象徴する一幕となった。



再び東京。
レイは深夜の戦略会議で、静かに地図を見つめながら言った。

「我々は、もう一つの選択肢になった。
 アメリカでもソ連でもない、“日本”という世界の軸に」

参謀の一人が問う。

「この影響力、どこまで広げるおつもりですか?」

レイは即座に否定する。

「広げない。“届ける”だけだ。
 望まれる限り、必要な人に、必要なものを。
 それが、帝国のかたちだ」

その言葉に、部屋の空気が静かに震えた。

“支配しない支配”。
“戦わない勝利”。
それが、蒼月レイがつくろうとしている、新しい覇権国家——日本の姿だった。
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