日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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最終章. 未来への道

新しい翼

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1944年3月、日本列島には、かつてない熱気が満ちていた。
それは戦争の喧騒ではなく、経済の胎動。大地を揺らすような産業の鼓動だった。

「帝国経済、臨界点を突破」
「企業成長率、過去最大を記録」
そう見出しを打ったのは、経済専門紙だけではなかった。一般紙の朝刊トップに、ある企業経営者の笑顔が掲載されたのだ。彼の名は久保田篤、関西を拠点とする製造企業「光和工機」の創業者である。かつては街の小さな機械修理工場だったその会社は、いまや東南アジア全域で工作機械を供給する“地域の主役”となっていた。

だが、久保田のような「英雄」は、もはや特別ではなかった。

“企業家”——この言葉は、もはや“資本家”の代名詞ではない。“国家を担うもう一つの柱”として、日本社会のなかで確固たる地位を築き始めていた。

帝国商工省の発表によれば、昨年からの1年間で中小企業の輸出参加率は約2.7倍に達した。とりわけ電子部品、精密機械、医療機器、小型エンジン、通信端末といった分野では、戦前には想像もできなかったレベルでの成長が確認された。各国の政府関係者が視察に訪れるたび、驚きと称賛を口にするのは決まって日本の民間企業の“現場力”だった。

この現場力こそが、蒼月レイが最も信頼を置く“帝国の翼”だった。政治が制度を整え、経済がその制度を使いこなし、民間が“未来”を商品として世界に届ける。それこそが、彼の描く“成長国家”の構図だった。

青山の戦略会議室で、レイは閣僚と企業代表を前に、こう語った。

「国家は、企業に命令するものではありません。
国家は、企業が羽ばたくための空を整えるものです。
企業とは、“未来をつくる意志の集合体”なのです」

その言葉を聞いた経済人たちの目に、本気の火が灯る。実際、こうした言葉に煽られたのではない。すでに彼らは、自分たちの商売を「単なるビジネス」ではなく、「国を代表する使命」として認識していた。輸出の急拡大がそれを物語る。

南米のブエノスアイレスでは、帝国製の紡績機械が市場シェアの6割を占めるようになった。カイロでは日本製の手術用メスが“奇跡の刃”と呼ばれ、首都の病院では帝国製医療機器の導入が国策となっている。フィリピンでは、都市部における家庭用通信端末の7割が帝国製であり、学校教育も日本の企業が提供するプラットフォームで運営されていた。

この状況を、国際経済学者のひとりはこう評した。

「日本はもはや、軍事でも文化でもなく、“経済”で世界を包み込もうとしている。
しかもその手法は、強制ではなく、魅力と信頼による“選ばれる覇権”だ」

成長の理由は単純ではなかった。レイが主導する国家レベルの再構築政策が、民間に深く影響していたからだ。たとえば企業の再投資を促す減税制度、未来産業への集中融資スキーム、職業教育と連携した企業内大学、さらには輸出先の国との関係強化における「民間外交官」としての企業活用など、官民の境界が“支配”ではなく“協調”によって接続されていた。

企業とは、もはや経済のための手段ではない。文化の担い手であり、外交の先兵であり、時に政治すら先導する存在だった。

この成長のなかで、最も顕著だったのは若者たちの意識の変化だった。起業志望者は、前年度比で3.4倍。地方の商工学校では、卒業生の6割が「将来、何かを“自分で”生み出したい」と答えた。彼らが憧れるのは政治家でも学者でもなく、町工場を世界へ輸出した父のような“企業家”たちだった。

レイはその姿に微笑みながら、青山の書斎でこう記していた。

“企業とは、国家の手足ではない。
それは心臓だ。鼓動がなければ国は動かず、血流がなければ誰も生きられない。
国家は企業を統制するのではなく、企業に信頼される存在でなければならない”

その思想はすでに制度にも落とし込まれていた。帝国経済憲章では、「国家の経済政策は民間の創意工夫を尊重し、それを阻害してはならない」と明記されている。これは法制度の文言であると同時に、レイの信念を刻む礎でもあった。

3月末、日本経済新聞は次のような社説を掲載した。

「日本企業は、成長しているのではない。“進化”しているのである。
かつて“勤める”ことが人生の目的だった。
今、働くことは“未来をつくる”という行為に変わった。
帝国は、誰かに与えられるものではない。
企業と民が、ともに形づくるものなのだ」
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