日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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最終章. 未来への道

ひとつの終わり

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1944年5月1日。
東京・帝国戦略本部にて、突如として発表された一通の声明は、政財界を越え、国境を越え、瞬く間に世界を駆け巡った。

その文面は短く、あまりに静かだった。

「私、蒼月レイは、本日をもって、帝国政策戦略の第一線から身を引くことを決意いたしました。
私の仕事は、ここで一区切りです。
帝国の未来は、私一人ではなく、私たち全員の手にあります——」

青山官邸に詰めていた記者たちは、一瞬、何かの冗談かとさえ思った。
だが、そこに嘘はなかった。
その日、蒼月レイは16歳にして自ら政界からの引退を宣言した。

午後の帝国議会では、直ちに非公開の緊急協議が行われた。
「国家の中枢が抜ける」「世界に混乱を与える」と動揺する者たち。
だがレイは、その場に姿を現すことはなかった。彼の意思は明確だった。



引退の真意を問われた記者会見の場で、彼ははっきりと語った。

「私は、まだ16歳です。自分という存在が、本来の年齢や肩書きでは背負いきれないほど、強すぎる影響力を持ってしまった。だからこそ、それを“持ち続ける”ことの危うさを感じています」

「一人の人間が、あまりに長く“国の形”になってしまうのは、その人にとっても、国にとっても、決して良いことではないのです」



この言葉は、かつてないほど大きな波紋を呼んだ。

全国民が、そして世界中の人々が、一瞬言葉を失った。
あの少年がいなければ、今のこの国はなかった。
戦争を終わらせ、制度を変え、経済を動かし、教育を照らし、外交を導いた。
蒼月レイという存在は、すでに“秩序の一部”だった。
その彼が、自らその中心から降りると言う。

各国の元首は次々とメッセージを発した。

ルーズベルトはホワイトハウスの公式会見でこう語った。

「我々の国にも、蒼月レイという若者の思想が必要だったかもしれない。
世界を変える者はいつだって若い。だが、彼のように潔く去る者は、もっと少ない」

蒋介石は南京で涙を滲ませながら記者に答えた。

「日本が今や盟友であると胸を張って言えるのは、彼がいたからだ。
我らは、かけがえのない友を見送ることになる」



そして、帝国各地で“別れ”の集会が開かれた。
花束を抱えた子どもたち、彼の言葉を暗唱する若者たち、仕事帰りに駅前で静かに立ち尽くす労働者たち。
市民の誰もが、まるで自分たちの青春が終わっていくような気持ちで、その引退を受け止めていた。



その頃、青山の官邸の裏庭。
レイは、静かに靴を脱ぎ、裸足のまま芝生を踏みしめていた。

「……ふつうの16歳に戻った気分だね」

隣で桜がそっと笑った。

「ふつうの16歳は、明日何をするかだけ考えてるのに。
あなたは、世界を変えて、“その後”を生きるんだもの」

「そう。だから、これからは“僕自身”を始めようと思う。
誰かの代理でもなく、国家の意志でもなく——僕という人間を」

しばらくの沈黙のあと、彼は空を見上げた。

「学校に、行ってみようかな。図書館に通って、知らない本を読んで。
誰にも指図されず、誰も導かず。そういう時間を、少しだけ持ちたい」

桜は、少しだけ涙をにじませながら言った。

「……きっと、またどこかで、あなたは戻ってくる。
そう信じる人が、世界に何億人もいる。
でも、今は、ただ、あなたの人生を歩いて。16歳の春を、生きて」



その夜、レイの引退声明を記録した映像は、帝国記録局によって正式に保存された。
記録映像のラストには、こう字幕が添えられていた。

「ひとつの時代が、終わりを迎えた。
しかし、彼の未来は、まだ始まったばかりだ——」



翌朝。
東京の街に、久しぶりに何の行事もない“普通の朝”が訪れた。
それでも人々の心には、ひとつの問いが残っていた。

「これからは、私たちが、未来を作る番だ」

それが、レイの残した最大の遺産だった。
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