18 / 25
第18話
しおりを挟む
窓の外には、草原が広がっていた。
ワンボックス・カーは、街道を軽快に走っている。
舗装されているとはいえ、21世紀の日本とは、比較にならない。
それでも、ほとんど揺れないのは、神改造のお陰だろうか。
「だけどよ。なんで、美◯ひばりなんだ?」
ハンドルを握りながら、ケンイチさんが尋ねた。
カーオーディオには、たくさんの曲が入っていた。SSDでも内蔵してるのかもしれない。
そして、最初の曲が、美◯ひばりさんだったのだ。
「…ね、姉ちゃんが、好きだったから」
ぽつりとオレは、答えた。
「ほう、姉さんがいるのか」
「ああ…。実際は、育ての親みたいなモンだけど。でも、小さい頃、うっかり『母さん』って呼んだら、殺され……かけたんだ」
__うん
殺されてはいないと思うんだ。
ちょっと、幽体離脱しただけだったから。
天井から見下ろしたオレの身体、血まみれだった気もしたけど。
よく、覚えていないし…。
「そ、そうか…」
何かを察してくれたのだろう。
ケンイチさんは、それ以上、何も聞かなかった。
「泣いちゃダメだよ、ジュンくん!今夜もボクに、いっぱいエッチなことしていいからね!」
隣に座っていたセーラが、ハンカチで目元を拭ってくれた。
ドサクサに紛れて、身に覚えのないことまで言っていたが…。
__そうか
オレ、泣いてんだ。
じつは、今、胸に(物理的に)ぽっかり穴が開いた記憶が蘇って…。
でも、気のせいだよな。うん、気のせいだと思う。
車内は、水打ったように静まりかえった。
美◯ひばりさんの歌声が、心にしみた。
「そ、それにしても、魔物がいないっすね」
沈黙に耐えかねたように、ケントさんが言った。
じっさい、まだ一度も『魔物』を見ていないのだ。
オレとしては、けっこう、期待してるんだけど。
「ああ…。まるで、別の世界にも来たみてえだぜ」
ケンイチさんも、うなずいている。
「今までの、オレたちの戦いって、何だったんっすかね」
「しょうがねえだろう。魔物が、勝手に襲いかかってきたんだからよ」
「まあ、こんなもんですニャ」
ライムがしたり顔で言った。
「ドラゴンみたいなもんだと思えばいいですニャ。雑魚は、あわてて逃げてるしかありませんニャ」
「実際、出て来ねえんだから、そうなんだろうな…」
「わりきれないっすけどね…」
「だがよ。魔力は、障壁で隠蔽してるんじゃねえのか?」
「もちろんですニャ。でも、魔力隠蔽の障壁は、あくまでもニンゲンのため。周囲のニンゲンたちが、ジュンしゃまの魔力に耐えられないためですニャ。魔物が、魔力を嗅ぎつける能力は、ニンゲンとは比較にならない。だから、魔物には、あんまり効果がないですニャ」
オレの頭の上で、ライムが自慢げに解説していた。
褒められているのか、けなされているのか。よくわからない話だった。
ワンボックスカーの前方に、森が見えてきた。
ここまで、街道の周囲は、見晴らしの良い、広い平原だった。
この先からは、森に入るようだ。
とうぜん、視界が狭まる。
「そろそろだな…」
「そうっすね…」
__なるほど
たしかに、オレも、そう思う。
仕掛けてくるなら、森に入ったあたりだろう…と。
ワンボックス・カーは、街道を軽快に走っている。
舗装されているとはいえ、21世紀の日本とは、比較にならない。
それでも、ほとんど揺れないのは、神改造のお陰だろうか。
「だけどよ。なんで、美◯ひばりなんだ?」
ハンドルを握りながら、ケンイチさんが尋ねた。
カーオーディオには、たくさんの曲が入っていた。SSDでも内蔵してるのかもしれない。
そして、最初の曲が、美◯ひばりさんだったのだ。
「…ね、姉ちゃんが、好きだったから」
ぽつりとオレは、答えた。
「ほう、姉さんがいるのか」
「ああ…。実際は、育ての親みたいなモンだけど。でも、小さい頃、うっかり『母さん』って呼んだら、殺され……かけたんだ」
__うん
殺されてはいないと思うんだ。
ちょっと、幽体離脱しただけだったから。
天井から見下ろしたオレの身体、血まみれだった気もしたけど。
よく、覚えていないし…。
「そ、そうか…」
何かを察してくれたのだろう。
ケンイチさんは、それ以上、何も聞かなかった。
「泣いちゃダメだよ、ジュンくん!今夜もボクに、いっぱいエッチなことしていいからね!」
隣に座っていたセーラが、ハンカチで目元を拭ってくれた。
ドサクサに紛れて、身に覚えのないことまで言っていたが…。
__そうか
オレ、泣いてんだ。
じつは、今、胸に(物理的に)ぽっかり穴が開いた記憶が蘇って…。
でも、気のせいだよな。うん、気のせいだと思う。
車内は、水打ったように静まりかえった。
美◯ひばりさんの歌声が、心にしみた。
「そ、それにしても、魔物がいないっすね」
沈黙に耐えかねたように、ケントさんが言った。
じっさい、まだ一度も『魔物』を見ていないのだ。
オレとしては、けっこう、期待してるんだけど。
「ああ…。まるで、別の世界にも来たみてえだぜ」
ケンイチさんも、うなずいている。
「今までの、オレたちの戦いって、何だったんっすかね」
「しょうがねえだろう。魔物が、勝手に襲いかかってきたんだからよ」
「まあ、こんなもんですニャ」
ライムがしたり顔で言った。
「ドラゴンみたいなもんだと思えばいいですニャ。雑魚は、あわてて逃げてるしかありませんニャ」
「実際、出て来ねえんだから、そうなんだろうな…」
「わりきれないっすけどね…」
「だがよ。魔力は、障壁で隠蔽してるんじゃねえのか?」
「もちろんですニャ。でも、魔力隠蔽の障壁は、あくまでもニンゲンのため。周囲のニンゲンたちが、ジュンしゃまの魔力に耐えられないためですニャ。魔物が、魔力を嗅ぎつける能力は、ニンゲンとは比較にならない。だから、魔物には、あんまり効果がないですニャ」
オレの頭の上で、ライムが自慢げに解説していた。
褒められているのか、けなされているのか。よくわからない話だった。
ワンボックスカーの前方に、森が見えてきた。
ここまで、街道の周囲は、見晴らしの良い、広い平原だった。
この先からは、森に入るようだ。
とうぜん、視界が狭まる。
「そろそろだな…」
「そうっすね…」
__なるほど
たしかに、オレも、そう思う。
仕掛けてくるなら、森に入ったあたりだろう…と。
14
あなたにおすすめの小説
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~
イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の取材中、異世界の大地の女神と接触する。
そのまま半ば強制的に異世界へと転生させられた彼は、惑星そのものと同化し、“星骸の主”として不死の存在へと変貌した。
だが女神から与えられた使命は、この世界の生命を滅ぼし、星を「リセット」すること。
凛人はその命令を、拒否する。
不死であっても無敵ではない。
戦いでは英雄王に殴り倒される始末。しかし一つ選択を誤れば国が滅びる危うい存在。
それでも彼は、星を守るために戦う道を選んだ。
女神の使命を「絶対拒否」する不死者と、裏ボス級の従者たち。
これは、世界を滅ぼさず、統治することを選んだ男の英雄譚である。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜
最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。
一つ一つの人生は短かった。
しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。
だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。
そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。
早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。
本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる