召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳

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第19話

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 ワンボックスカーが森に入ると、ケンイチさんが言った。

 「ほんとうに、ひとりで大丈夫か?」
 「たぶん、大丈夫だろう」
 「なんだか、頼りねえな」
 「なんとかなると思いますニャ。それに、ジュンしゃまには実践訓練が必要ですニャ」

 天界で、レクチャーは受けてきた。
 模擬戦闘みたいなのも、あるにはあった。
 ただ、おもしろ半分に、遊ばれていたような気もするけど。

 「いや。訓練相手にできるような連中じゃねえんだが…」
 「そうっすよ。手練の集団っす」
 「そのくらいの手ごたえがないと、訓練になりませんのニャ」

 自信満々にライムが言った。
 じっさい、ライムも一緒だ。
 だから、何とかなるような気もする。


 森に入ってからは、用心ためにスピードは落としている。
 日本だって、いきなり野生動物が飛び出すくらいのことはあるんだし。


 「…あったっすね」
 「そうだな。大司教のばあさんの言うとおりになったぜ」


 
 大司教(ばあちゃん)は、オレたちを見送りながら、こう言っていた。

 「アタシは、ミルフィーユ領の件も、宰相のしわざだと思ってるのさ」

 ミルフィーユの領主は、聖女セシリアの義理の伯父らしい。
 セシリアの、すでに亡くなっているお母さんが、領主夫人の妹なのだ。 

 「気をつけな。ミルフィーユに向かうあんたたちには、ちょっとした『待ち人』がいるかもしれないよ」
 「まあ。そうだろうぜ」

 ケンイチさんも、すでに気づいていたらしいけど。



 ばあさんの忠告どおりだった。
 街道は、横倒しにされた数本の太い木で、塞がれていた。


 じつは、この程度の大木なら、跳ね飛ばせるらしい。
 ワンボックスカーには、『結界』が張られているからだ。
 もちろん、神改造のひとつだ。
 

 だが、ライムは乗り気だった。
 
 「とにかく、実践あるのみですニャ!」
 「まあ、そうだな。今は、先を急ぎたいところだが、何しろ、しつこい連中だ。早めにケリをつけたほうがいいかもしれねえ」
 「それも、そうっすね…」
 「戦闘開始なのニャ!」
 
 ライムの掛け声とともに、ワンボックスカーは、道を塞ぐ大木の手前で停車した。
 
 「ジュンくん、がんばってね!」
 
 セーラの明るい声に背中を押されながら、オレは、車から降りた。
 頭の上には、ライムが鎮座している。

 道を塞ぐ大木に近づくと、いつの間にか、黒装束の男たちに囲まれていた。

 「なかなか強固な結界が張られておりますゆえ、攻めあぐねるかと思っていたでゴザルが…」
 「自ら、降りてきてくれるとは…」
 「まことに、助かったでゴザるよ」

 「くくく…ニャ。その余裕が、いつまで続くか。見ものなのニヤ!」

 なぜか、ライムが、ノリノリで答えていた。



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