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1.5 侍従は目を閉じる
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ケネス付き侍従であるチャーリーは、ローラを見送りケネスの部屋へと戻っていた。
今日だけで、何度、溜息を飲み込んだことだろう。両手では足りない回数だ。
ケネスの前では絶対に零してはいけないと肝に銘じながら、それでも危ういことが幾度もあった。
どうしても考えてしまうのだ。
ケネスとローラの婚約は破棄された。それは必然だったのかもしれないが、何か手はなかったのか。
ローラの瞳から、静かに零れ落ちる涙がつらかった。涙を必死に抑えようとする姿が痛ましかった。端から見ていても、胸を絞られるようだった。
それは護衛騎士のフレッドも同じだったろう。彼は、彼女の泣き顔を隠すために、彼女を抱き上げて馬車まで運んだ。
だからローラは気がつかなかったはずだ。
すれ違う城の使用人や文官たちが、まだ公表されていないという建前に縋り、彼女に対して思いのこもった礼を取っていたことを。
素晴らしい令嬢だった。美貌や才気だけでなく、周囲への心配り、そしてこの国とケネスへの想いを持った王太子妃に相応しい令嬢だった。
あの方が将来、王妃にたたれるならば、しっかりと王を支え、国は安泰だと思えていたのは自分だけではないだろう。
チャーリーは溜息をまた飲み込み、ケネスの部屋の扉を叩いた。
応えが小さくあり、部屋に足を踏み入れて、チャーリーは息を呑んだ。
ケネスは座ったままだった。目の前にはもうだれもいないというのに、微動だにせず座ったままだった。
チャーリーはつばを飲み込み、小さく報告した。
「ローラ嬢をお送りしました」
ケネスから言葉はなかった。聞こえていたかも分からなかった。ケネスは全く動かないままだった。
チャーリーはやりきれない思いを飲み込むと、静かに隣の侍従の控え室に下がった。
控え室に入り込むなり、扉に寄りかかったチャーリーは、けれど、すっと体を起こした。
ケネスの部屋から音がしたのだ。
何の音だ?何かをぶつけた音?叩く音だろうか?
ケネスの安全を確かめようと、控え室を出てケネスの部屋へ入ろうとして、扉の前に立つフレッドに遮られた。先に事態を確かめたであろうフレッドは、小さく首を横に振った。
また音がした。
フレッドが苦しそうに目を細める。
それで分かった。ケネスが拳で机を叩いているのだ。チャーリーは踵を返して、控え室に戻った。
控え室に戻ってからも、音は何度も繰り返し聞こえていた。チャーリーは主人の心情を思い、目を閉じてその音を聞いていた。
今日だけで、何度、溜息を飲み込んだことだろう。両手では足りない回数だ。
ケネスの前では絶対に零してはいけないと肝に銘じながら、それでも危ういことが幾度もあった。
どうしても考えてしまうのだ。
ケネスとローラの婚約は破棄された。それは必然だったのかもしれないが、何か手はなかったのか。
ローラの瞳から、静かに零れ落ちる涙がつらかった。涙を必死に抑えようとする姿が痛ましかった。端から見ていても、胸を絞られるようだった。
それは護衛騎士のフレッドも同じだったろう。彼は、彼女の泣き顔を隠すために、彼女を抱き上げて馬車まで運んだ。
だからローラは気がつかなかったはずだ。
すれ違う城の使用人や文官たちが、まだ公表されていないという建前に縋り、彼女に対して思いのこもった礼を取っていたことを。
素晴らしい令嬢だった。美貌や才気だけでなく、周囲への心配り、そしてこの国とケネスへの想いを持った王太子妃に相応しい令嬢だった。
あの方が将来、王妃にたたれるならば、しっかりと王を支え、国は安泰だと思えていたのは自分だけではないだろう。
チャーリーは溜息をまた飲み込み、ケネスの部屋の扉を叩いた。
応えが小さくあり、部屋に足を踏み入れて、チャーリーは息を呑んだ。
ケネスは座ったままだった。目の前にはもうだれもいないというのに、微動だにせず座ったままだった。
チャーリーはつばを飲み込み、小さく報告した。
「ローラ嬢をお送りしました」
ケネスから言葉はなかった。聞こえていたかも分からなかった。ケネスは全く動かないままだった。
チャーリーはやりきれない思いを飲み込むと、静かに隣の侍従の控え室に下がった。
控え室に入り込むなり、扉に寄りかかったチャーリーは、けれど、すっと体を起こした。
ケネスの部屋から音がしたのだ。
何の音だ?何かをぶつけた音?叩く音だろうか?
ケネスの安全を確かめようと、控え室を出てケネスの部屋へ入ろうとして、扉の前に立つフレッドに遮られた。先に事態を確かめたであろうフレッドは、小さく首を横に振った。
また音がした。
フレッドが苦しそうに目を細める。
それで分かった。ケネスが拳で机を叩いているのだ。チャーリーは踵を返して、控え室に戻った。
控え室に戻ってからも、音は何度も繰り返し聞こえていた。チャーリーは主人の心情を思い、目を閉じてその音を聞いていた。
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