残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな

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第一章 学院編

第7話 シャイル・マーン

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 俺が魔導学院に来て十日ほど経ったころのこと。

 俺の悪態は相変わらずだったが、早くもクラスの面々は俺の存在に順応しつつあった。
 いまはバトルフェスティバルを目前に控えた時期とあって、問題児一人に意識を取られている場合ではないらしい。各々が仲のいいライバル同士で特訓をしたりしている。

 学院中がそういったお祭モードにある中、クラス委員長のシャイルは少々深刻そうな面持ちで俺に相談を持ちかけてきた。

「ねえ、エスト君。今日の放課後、時間を割いてもらえないかしら?」

「嫌だね。何の用だ?」

「それがね……」

 シャイルは俺の性質を掴んできたようで、俺が嫌だと言っても構わず用件を話しはじめた。
 少し前なら「嫌なのに用件を聞くの?」などと的確な質問を返してきていた。だがそんなことではなかなか話が進まないし、俺に頼みを聞いてもらいたいのなら、とりあえず話してみて興味を惹くしかないということが分かってきたのだろう。

「実はこのクラスには不登校の生徒がいて、その子を迎えに行かなきゃならないの。だからね、エスト君に一緒に来てほしいんだ」

「三つ」

「え?」

「おまえの話に俺が抱いた疑問の数だ。一つ、不登校児をなぜ迎えに行かなければならないのか。そいつが登校することを決めたのなら勝手に登校すればいい話じゃないか。二つ、行かなきゃならないってなんだ? おまえは気が乗らないが、先生に行けと言われたということか? 生徒本人に登校の意志がなければ無駄足になる。言っておくが、意志の弱い愚徒ぐとのために動かす足なんぞ俺は持っていないぞ。三つ、なぜ俺に頼る? 俺みたいな性格の輩がついていったんじゃ、逆に登校する気も失せるだろ」

 一度に三つもの疑問を述べたため、シャイルは情報の処理に苦戦している様子だったが、疑問の一つひとつに答えることはあきらめ、経緯を詳しく説明する方針に決めたらしい。

「えっとね、その不登校の生徒の名前はダース君って言うの。エスト君と同じ男子生徒だよ。いまは彼がいないから、いまの男子生徒はエスト君だけになっているけどね。とにかく、ダース君はバトルフェスティバルの期間だけは登校してくれるらしいの。もちろん、その期間中に説得して普段も登校してくれるようになればいいと思っているけれど、エスト君の言うとおり、迎えに行くのは先生から言われたからで仕方なくだよ。ダース君が嫌いってわけじゃないの。ただ、ダース君の住んでいる場所に問題があって、私一人では辿り着けないような所なの。同じく、ダース君も一人では来られないと思う」

 さらに詳しい話を聞くと、ダースの実家は山奥にあり、道中の森には極めて凶暴なイーターが多数生息しているらしい。
 それらイーターに一度も遭遇せずに往来するのはほぼ不可能。
 一度登校してしまえば、寮に入ることでその道を通学路にせずに済むのだそうだ。
 そして、俺が同行を依頼されたのは、イーターに遭遇したときの戦力要員が必要だったからだ。
 シャイルは先生に俺を使えと言われたらしい。

 ただ、俺はまだ一度も先生に、それからシャイルにも、能力を行使して戦っている様を見せていないはずだ。
 俺の戦闘を見たことがあるといえば、キーラとリーズの二人だろう。だがあいつらが俺を褒めるような真似をするとは思えない。
 つまり、先生は俺の実力を知らないはずなのだ。
 それなのに俺を使おうとするということは、先生の狙いはイーターで俺を殺すことだ。
 そのためにシャイルも巻き添えを食らうことになるが、それもお構いなしということだろう。
 さすがは魔術師。元々は心を持っていなかった精霊が、学習によって無理やり心を獲得した出来損ないの人間だ。

「いいだろう。その話、乗ってやる」

 イーターに接触するいい機会だ。
 この機に多くのイーターとまみえ、イーターの習性を探り、手なづけられるようなら手なづけ、ペットにしてやろう。
 学院に連れ込めば大騒ぎになることは間違いない。魔術師の顔に恐怖の色を刻みつけられることが楽しみだ。
 我ながら外道だと思うが、先生のやり方も外道そのものだ。悪には悪を。外道には外道を。下衆には下衆を。エスにはエムを? いいや、エスにはドエスを、だ。
 つまり、全部に俺をあてがえばいい。そうすれば、俺が全部をぶち壊してやる。

「エスト君、ありがとう。それじゃあ、今日の放課後、一度寮に戻ってから行きましょう」

 シャイルは無理して搾り出した笑顔を俺に向けた。
 気のせいかもしれないが、いつもは気丈なポニーテールもいまはうな垂れているように見える。
 絶対に逆らえない相手から死地に向かえと命令されたのだから、憔悴しょうすいするのも無理はない。

「シャイル、こういうときこそ笑うもんだ」

「そうね。無理してでも笑っていたほうが、元気が出るかもしれないわね」

「何を言っているんだ、シャイル。ぜんぜん違うぞ。受けた仕打ちがこくなほど、報復に色とつやと味が出るってもんだ。それを楽しみにして笑えと言っているんだよ、俺は」

「エスト君……。あなたって人は……」

 溜息まじりにつぶやくシャイルは肩を落としたが、強張こわばっていたほおは先ほどよりは少し緩んでいる気がした。
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