96 / 302
第二章 帝国編
第95話 リオン城⑤
しおりを挟む
少しばかり癪だが、さっき入った邪魔のおかげで凝り固まった思考が解きほぐされ、リーン・リッヒ攻略の方針を思いついた。
俺の戦闘スタイルは第一に情報戦だ。
これは自分が多くの情報を得て優位に立つことがすべてではない。敵に情報を与えることによって相手の行動を誘導することも立派な情報的戦略だ。
とはいっても、やはり先に敵の戦力分析が先だろう。
俺はこの部屋全体の空気をゆっくり動かし、空間把握モードとなった。
部屋の中で何かが動けば、それを見ずとも分かる。魔法のリンクが切られたら、その位置でリーンの振動が発生したということだ。
俺もリーンの振動のように狭い範囲に空気を区切って、それぞれに対して操作のリンクを張る。そうすることで、一つのリンクが切られても他とはつながったままになる。
俺はまず、リーンが防御する際にどのように振動を配置しているのかを把握するため、全方位からの攻撃を試みた。
小さな空気の塊を全方位から連続的にぶつける。
リーンは髪と服を微風にはためかせながら、何事もないように剣を構えた。攻撃を受けている自覚はあるようだが、警戒心は薄い。
「攻撃しつづけていれば、魔法で防御する私が攻撃できないと考えているのか?」
戦力分析が終わる前に攻撃を開始されたらまずい。防戦と回避に最大限の集中を要するため、戦力分析ができなくなる。
どうしても確かめたいことがあり、俺は空気塊による打撃を強引に続けた。
今度は一方向から大小さまざまな空気塊をぶつける。勢いも強める。
リーンの左手一方向からの風が強まり、彼女は右脚を開いて踏ん張りを利かせた。
いくら振動バリアで空気塊を崩すといっても、それそのものを消せるわけではない。勢いのあった空気塊は風となってリーンの体まで届く。
もっとも、その勢いはかなり減衰させられるので強風を吹きつけて彼女を薙ぎ倒すのは無理だろう。
「笑止!」
リーンが剣を振った。
瞬間、俺を覆うように振動が発生した。斬撃を避けさせないために、執行モードを先に防いだのだ。
常人の運動能力で彼女の斬撃をかわすのは至難で、魔法によるアシストが必須だ。
「ふん。想定内だ」
俺はリーンの斬撃を左に飛んでかわした。右の肩から腰にかけて三箇所、圧縮空気を開放して爆発させた。振動のバリアによって威力は軽減され、ダメージを生まずに左への追い風へと変えることができる。
それに、リーンの斬撃の精度が高いからこそ、少しの動きでも確実に避けられたと確信が持てる。
「さっきの攻撃はあんたの攻撃を妨害するためのものじゃないぜ」
「なるほど。自分の防御に応用するための実験だったわけか」
そう。それでいい。リーンがそう考えるように誘導したのだ。さっきの俺の攻撃はリーンの防御パターンを把握するためのものだ。
果たして、それは完遂した。リーンは基本的に自分の体から拳一個分くらいの距離に振動のバリアを張る。その振動する点の間隔は五ミリ程度。
それを全身を覆うように張り巡らせるのだから、魔導師として相当な使い手だ。
空気の場合だと分子や成分を操作するのでもなければ、操作する範囲を決めて一つの物質として操作するイメージで十分だ。
対して振動は一点いってんを個別に振動させる必要がある。
もちろん、広範囲をひとまとめに振動させることもできるのだろうが、それは長波長の大きな波となり、バリアとしての役割など皆無となるだろう。
もっとも、いまは俺もたくさんのリンクを張ってリーンと似たことをしているわけだが。
リーンが攻撃する直前に切り替えた一方向からの空気弾による分析では、一方向から攻撃が集中すると、その方向のバリアが二枚重ね、三枚重ねと多重になることが分かった。
その分、反対方向は密だった振動点の間隔が開き、最大で十センチくらいまでになる。
「今度はこっちから行くぜ」
「私の隙を突けるのなら、いくらでもかかってくるがいい」
常に勝者である者の余裕が見て取れる。
上等だ。こちらとてまだ無敗の魔導師だ。
そして、相手が強ければ強いほど俺の頭と戦闘センスが冴え渡るのだ。
思い知らせてやるぜ。リーン・リッヒ、あんたが最強の剣士だったとしても、最強の魔導師や最強の人間ではないということをな。
さて、本命の必殺技をぶつける前に、その成功率を上げるために少しばかりリーン・リッヒを脅かしておく必要がある。
俺はまたしてもリーン・リッヒの左手方向から空気弾の嵐をお見舞いする。
髪と服を風に煽られながら、リーンは剣を振る。これまでとは異なり、二度、三度と剣を上下左右に往復させての連撃だ。
俺はまた右脇付近で空気塊を開放し、爆風で横に飛んだ。俺も左へ右へ、上へ下へと連続的に風のアシストで斬撃を避けきる。
リーンが大きく振りかぶる。これは特大の斬撃が来るということ。
俺もリーンへの一方向空気弾連打を続けながら自分の左脇に大きめの空気塊を作る。
「これで決める!」
リーンが剣を振る。
同時に俺も左脇の空気塊を解放して爆風を生み出す。
瞬間、俺の周囲の振動がピタリと止まった。その振動は俺のアシストを消すためのもの。同時に、自分の空気塊による爆風を軽減するもの。
ゆえに自分で生み出した爆風が軽減されず、モロに直撃する。しかしそれは予期していた。リーンが俺の自滅を狙うことを。
俺は振動が消えた瞬間に執行モードとなり、左脇の爆風の威力を軽減してアシストとして使う。
さっきまでのリーンによる斬撃の嵐により、俺の後方、部屋の入り口側の壁はすべて砕かれて廊下の向こう側の壁も消し去って、会議室らしき部屋があらわになっていた。
だがリーンのいまの一撃で、会議室どころかその向こう側のすべての壁が消し飛び、外へ通じる巨大な廊下を作り上げた。
俺の戦闘スタイルは第一に情報戦だ。
これは自分が多くの情報を得て優位に立つことがすべてではない。敵に情報を与えることによって相手の行動を誘導することも立派な情報的戦略だ。
とはいっても、やはり先に敵の戦力分析が先だろう。
俺はこの部屋全体の空気をゆっくり動かし、空間把握モードとなった。
部屋の中で何かが動けば、それを見ずとも分かる。魔法のリンクが切られたら、その位置でリーンの振動が発生したということだ。
俺もリーンの振動のように狭い範囲に空気を区切って、それぞれに対して操作のリンクを張る。そうすることで、一つのリンクが切られても他とはつながったままになる。
俺はまず、リーンが防御する際にどのように振動を配置しているのかを把握するため、全方位からの攻撃を試みた。
小さな空気の塊を全方位から連続的にぶつける。
リーンは髪と服を微風にはためかせながら、何事もないように剣を構えた。攻撃を受けている自覚はあるようだが、警戒心は薄い。
「攻撃しつづけていれば、魔法で防御する私が攻撃できないと考えているのか?」
戦力分析が終わる前に攻撃を開始されたらまずい。防戦と回避に最大限の集中を要するため、戦力分析ができなくなる。
どうしても確かめたいことがあり、俺は空気塊による打撃を強引に続けた。
今度は一方向から大小さまざまな空気塊をぶつける。勢いも強める。
リーンの左手一方向からの風が強まり、彼女は右脚を開いて踏ん張りを利かせた。
いくら振動バリアで空気塊を崩すといっても、それそのものを消せるわけではない。勢いのあった空気塊は風となってリーンの体まで届く。
もっとも、その勢いはかなり減衰させられるので強風を吹きつけて彼女を薙ぎ倒すのは無理だろう。
「笑止!」
リーンが剣を振った。
瞬間、俺を覆うように振動が発生した。斬撃を避けさせないために、執行モードを先に防いだのだ。
常人の運動能力で彼女の斬撃をかわすのは至難で、魔法によるアシストが必須だ。
「ふん。想定内だ」
俺はリーンの斬撃を左に飛んでかわした。右の肩から腰にかけて三箇所、圧縮空気を開放して爆発させた。振動のバリアによって威力は軽減され、ダメージを生まずに左への追い風へと変えることができる。
それに、リーンの斬撃の精度が高いからこそ、少しの動きでも確実に避けられたと確信が持てる。
「さっきの攻撃はあんたの攻撃を妨害するためのものじゃないぜ」
「なるほど。自分の防御に応用するための実験だったわけか」
そう。それでいい。リーンがそう考えるように誘導したのだ。さっきの俺の攻撃はリーンの防御パターンを把握するためのものだ。
果たして、それは完遂した。リーンは基本的に自分の体から拳一個分くらいの距離に振動のバリアを張る。その振動する点の間隔は五ミリ程度。
それを全身を覆うように張り巡らせるのだから、魔導師として相当な使い手だ。
空気の場合だと分子や成分を操作するのでもなければ、操作する範囲を決めて一つの物質として操作するイメージで十分だ。
対して振動は一点いってんを個別に振動させる必要がある。
もちろん、広範囲をひとまとめに振動させることもできるのだろうが、それは長波長の大きな波となり、バリアとしての役割など皆無となるだろう。
もっとも、いまは俺もたくさんのリンクを張ってリーンと似たことをしているわけだが。
リーンが攻撃する直前に切り替えた一方向からの空気弾による分析では、一方向から攻撃が集中すると、その方向のバリアが二枚重ね、三枚重ねと多重になることが分かった。
その分、反対方向は密だった振動点の間隔が開き、最大で十センチくらいまでになる。
「今度はこっちから行くぜ」
「私の隙を突けるのなら、いくらでもかかってくるがいい」
常に勝者である者の余裕が見て取れる。
上等だ。こちらとてまだ無敗の魔導師だ。
そして、相手が強ければ強いほど俺の頭と戦闘センスが冴え渡るのだ。
思い知らせてやるぜ。リーン・リッヒ、あんたが最強の剣士だったとしても、最強の魔導師や最強の人間ではないということをな。
さて、本命の必殺技をぶつける前に、その成功率を上げるために少しばかりリーン・リッヒを脅かしておく必要がある。
俺はまたしてもリーン・リッヒの左手方向から空気弾の嵐をお見舞いする。
髪と服を風に煽られながら、リーンは剣を振る。これまでとは異なり、二度、三度と剣を上下左右に往復させての連撃だ。
俺はまた右脇付近で空気塊を開放し、爆風で横に飛んだ。俺も左へ右へ、上へ下へと連続的に風のアシストで斬撃を避けきる。
リーンが大きく振りかぶる。これは特大の斬撃が来るということ。
俺もリーンへの一方向空気弾連打を続けながら自分の左脇に大きめの空気塊を作る。
「これで決める!」
リーンが剣を振る。
同時に俺も左脇の空気塊を解放して爆風を生み出す。
瞬間、俺の周囲の振動がピタリと止まった。その振動は俺のアシストを消すためのもの。同時に、自分の空気塊による爆風を軽減するもの。
ゆえに自分で生み出した爆風が軽減されず、モロに直撃する。しかしそれは予期していた。リーンが俺の自滅を狙うことを。
俺は振動が消えた瞬間に執行モードとなり、左脇の爆風の威力を軽減してアシストとして使う。
さっきまでのリーンによる斬撃の嵐により、俺の後方、部屋の入り口側の壁はすべて砕かれて廊下の向こう側の壁も消し去って、会議室らしき部屋があらわになっていた。
だがリーンのいまの一撃で、会議室どころかその向こう側のすべての壁が消し飛び、外へ通じる巨大な廊下を作り上げた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる