97 / 302
第二章 帝国編
第96話 リオン城⑥
しおりを挟む
俺は再び執行モードを消される前に素早く飛びまわった。リーンの周囲を未確認飛行物体さながらに不規則な軌道で飛びまわる。
リーンが指でひっかくような動作をして俺を捕らえようとするたびに、俺を覆う執行モードの空気が一部剥がされるが、止まれば執行モードが完全に剥がされるので飛びつづけた。
どうやら俺が皇帝や騎士団員を背にしているときは斬撃を放たないようだ。
しかし一方向に長い間取りの皇帝の間において、リーンと皇帝や騎士団員たちの間の距離は大きくない。リーンに近づきすぎると直接剣で斬られるはずなので一定の距離を保つ必要があるが、そうするとこの狭い空間では俺の座標を読まれやすい。
長くはもたないと踏んで俺は仕掛けた。
リーンの左手方向から空気弾をぶつけつづけているいま、右手方向の防御が手薄だ。その右手方向から、鋭く尖った針状に硬化させた空気を飛ばした。数にして十。少ないが、その分威力に回している。
「ぐっ!」
針は半分ほど振動のバリアに弾かれた。だが右手方向の防御が手薄になっていたおかげで半分は命中した。
彼女は一瞬怯んだが、隙といえるほどの隙を生まなかった。目を閉じ、全身を精緻に振動で覆い、剣を構えた。攻撃への移行に備えつつも、完全なる防御体制だ。
彼女の周囲を三ミリ間隔の振動点が三重に覆っている。バリアの内側に小さな空気塊を作ろうとしても、風の流れを肌で感じ取っているのか、ピンポイントで破壊されてしまう。
いまの彼女は空気による攻撃をいっさい受けつけない。
「三重のバリアか。その程度、一点突破なら攻撃を通せるぜ」
集中力を高めきったのか、リーンが目を開く。
その正面で、俺は右手に空気を集めていた。壁が破壊されて砂塵が舞っているので、空気を集めるとそれが目に見える。大きな圧縮であればなおさら見えやすい。
俺の右手にどんどん空気が凝縮されていく。
リーンの視線が灰色に染まった俺の凝縮空気を捕らえた瞬間、俺は執行モードで即座に移動した。
全身を動かすと同時に右手をも動かし、リーンの焦点から圧縮空気を外しつづける。
執行モードがどんどん剥がされるが、脇で圧縮空気を開放させることで俺の回避スピードをブーストしつづける。
俺の右手にはどんどん空気が圧縮されていく。
「無駄だ。それほどの砲撃を放つには、どこかで静止する必要がある。狙いを定めるため、そして反動に備えるために。私はその瞬間を絶対に逃さない」
剣は振ってこない。それどころか、剣を鞘に収めて両手を前にかざしている。
彼女も慎重になっているのだ。決して俺にこれを撃つ隙を与えてはならないから。
「リーン・リッヒ、一つだけ教えてやる。俺のいままでのすべての攻撃は、たった一撃のためにある」
俺は勝利を確信している。そうでなければ、何より情報を重要視するこの俺が敵に情報を与えるわけがないのだから。
そう、これは相手を誘導するための情報提供ではない。敵に塩を送っただけ。格付けが済み、格の差を知らしめるための行為。
俺はリーン・リッヒの言うとおり、地に足を着けて止まった。
両足を開いて腰を落とし、まっすぐに右手を伸ばす。
前方のリーンへ向けた右手の手首を左手で掴んで固定した。
俺はいま、リーンの真正面に立っている。距離は遠い。本来ならば入り口の扉があった位置だ。
「エグゾースト……」
砂塵を巻き込んで灰色となった空気はセメントのように濃い鼠色をしていた。それほどに凝縮されている。
その周囲の空気を硬化させて砲筒とする。
これが発射されれば、空気と一緒に砂塵も飛び、破壊力は計り知れない。もしこれを砲筒ごとここで解体されたら、その直撃を食らうのは俺だ。
「言ったとおりだ。消す!」
リーンが何かを振り払うように手を振った。俺の右手前方に振動が生じる。そこにある鼠色の空気が強制的に散らされる。
だが大爆発は起こらなかった。小爆発。
砂塵が俺の視界を奪うが、空間把握モードを継続している俺は目を閉じていても空間を把握できている。
リーンが剣の柄に手を伸ばしていたが、俺が伸ばした右手の向きを少し横にずらしてみせると、リーンの右手がピクリと反応して止まった。
「な、まさか!」
そう、とっておきの一撃が強制開放されてあの程度で済むわけがない。右手に凝縮させていたのはダミー。リーンの意識をそこに集中させるためのデコイだ。
本命は透明、目に見えない。
リーンはとっさに俺が右手を向けた方向、彼女自身の左手側に手を伸ばした。
そこに八重の精緻なバリアが張られる。目を閉じているが、俺はその動きが手に取るようにわかる。
ニヤリと微笑んで見せた。それを見逃さないリーンはとっさに右手も伸ばし、左右の両方にバリアを張った。さすがに左手側の八重のバリアは保てず、左右に四重ずつのバリアとなった。
だが彼女は伊達に最強の剣士として帝国を守護してきてはいない。天才的な戦闘センスに加え、豊富な経験を持つ。
そして、女性ならではの直感。
俺の勝利を確信した表情がブラフではないと見抜き、彼女は頭上、前方、後方にもバリアを張った。とっさに張ったバリアは二重。ほんの一、二秒のうちにそのバリアを三重に昇華させた。
俺がうっすらと目を開く。
彼女は最大限の集中を見せているが、そこに抱かれている不安が垣間見える。
『三重のバリアか。その程度、一点突破なら攻撃を通せるぜ』
さっきの俺の言葉が彼女の不安の正体だ。全方位を防御するのであれば、三重のバリアが限界。一点集中攻撃をされれば、バリアは突破されるかもしれない。
しかし、俺の言葉はバリアの隙を生むためのハッタリかもしれない。
実際のところ、俺は本心であの言葉を言ったのか、ハッタリで言ったのか。
正解は両方だ。正確にはハッタリではなく誘導だが。
そう、俺がとっておきを撃つ猶予をもらうために、彼女が防御に専念するよう誘導したのだ。
彼女は自身の絶対防御ならば俺の攻撃に耐えきれると信じ、全方位に対して三重バリアを張りつづけている。
いや、彼女はここへ来てさらなる成長を見せた。
バリアが四重になった。
いや五重になった。
全方位への五重バリア。どれほどの集中力を持つのか。
彼女が攻撃しないのであれば、彼女の集中が切れるまで待てばいい。しかし、俺の攻撃準備も相応の集中力を要する。
最強の攻撃と最強の防御で勝負するか、それとも集中力を持続させつづける我慢比べで勝負するか、彼女にはどちらでも受けてたつ気概があるようだ。
さて、攻撃するか我慢するかの選択権は俺にある。俺がどちらを選択するか。
そんなことは決まっている。
リーン・リッヒは想定以上ではあったが、戦況をこの形となるよう誘導したのは俺だ。俺の選択は、もちろん……。
――撃つ!
「……バァーストォオオオオオッ!」
技の名はエグゾースト・バースト。大砲の砲弾が圧縮空気になっている武器の名だ。
密閉容器から空気を解き放つことで、膨張した空気が容器の口から一方向へ飛び出し、標的に強烈な衝撃を与える。
爆音が響き、リーン・リッヒは吹き飛んだ。上方へ!
俺が圧縮しつづけていた本命は、リーン・リッヒの足の下、この皇帝の間の階下にあった。
俺が空間把握モードで把握していた範囲はこの皇帝の間だけでなく、下の階もだった。この部屋の窓を割って飛び込むとき、俺は一緒に下の階の窓も割っておいたのだ。最短距離で階下に把握モードをつなげられるように。
リーン・リッヒは床ごと下から吹き飛ばされ、天井へ衝突した。彼女は盛大に血を吹き、下からの瓦礫に追撃されて天井を突き破った。
天井に強力な振動を与えて脆くしたようだが、天井への衝突と瓦礫によるサンドイッチのダメージは計り知れない。
リオン城の最上階であるこの部屋の天井が吹き飛んだことで、紅く染まりかけた空があらわになった。
天高く舞ったリーン・リッヒは、弧を描いてから無数の瓦礫とともに落下を始める。
落下するリーンにはまだ意識があった。
彼女の艶やかな髪と、彼女の凛然たる佇まいを引き立てる騎士服は、汚れとダメージで無残というほかなく、彼女は目蓋を開き留める力を大きく失っているようだったが、その中にある瞳は俺を見据えていた。
――リーン・リッヒの右手が閃いた。
逆さまに落下する瀕死の女から飛び出した高速の波は、発生源たる彼女の状態とは裏腹に、山をも斬らんばかりの殺気を帯びていた。
だが俺に油断はない。あいにくと俺は死体相手であっても油断してやらないほどのゲスなのだ。相手が何者でどんな状態にあろうと、俺は油断しない。何ひとつ信用しない。
「はぁっ!」
俺は自分の正面で空気を完全に固めた。空間把握モードも執行モードもすべて解いて、その防御だけに集中した。
混合気体たる空気の構成成分へ操作リンクを伸ばし、分子レベルで操る。
振動というエネルギーが加えられてもそれに抵抗するイメージで、俺は静の操作をした。
リーンの斬撃は空気の壁にぶつかり、その表面でエネルギーを使い果たした。俺へは届かない。
これが俺の絶対防御。
しかしさすがに精神力の消耗が激しすぎる。
俺は空気の完全固定を解き、ボーリングの玉を連想させる密度と形に空気を凝縮させ、それをリーン・リッヒへと飛ばした。
「ぐおぅ!」
さすがにいまのリーンは防御を張れる状態ではない。リーンの腹に空気球が直撃し、彼女は吹き飛ばされ、皇帝のすぐ傍を横ぎって壁へと叩きつけられた。
リーンは壁から剥がれて床に落ち、もう起き上がらなかった。気を失っている。
天井と床の瓦礫だけが階下へと落下した。
「決着! 悪いな。俺はおごらない主義なんだ。最後の最後まで油断はない。最強を名乗っているのは、それが事実だからだ」
リーンが指でひっかくような動作をして俺を捕らえようとするたびに、俺を覆う執行モードの空気が一部剥がされるが、止まれば執行モードが完全に剥がされるので飛びつづけた。
どうやら俺が皇帝や騎士団員を背にしているときは斬撃を放たないようだ。
しかし一方向に長い間取りの皇帝の間において、リーンと皇帝や騎士団員たちの間の距離は大きくない。リーンに近づきすぎると直接剣で斬られるはずなので一定の距離を保つ必要があるが、そうするとこの狭い空間では俺の座標を読まれやすい。
長くはもたないと踏んで俺は仕掛けた。
リーンの左手方向から空気弾をぶつけつづけているいま、右手方向の防御が手薄だ。その右手方向から、鋭く尖った針状に硬化させた空気を飛ばした。数にして十。少ないが、その分威力に回している。
「ぐっ!」
針は半分ほど振動のバリアに弾かれた。だが右手方向の防御が手薄になっていたおかげで半分は命中した。
彼女は一瞬怯んだが、隙といえるほどの隙を生まなかった。目を閉じ、全身を精緻に振動で覆い、剣を構えた。攻撃への移行に備えつつも、完全なる防御体制だ。
彼女の周囲を三ミリ間隔の振動点が三重に覆っている。バリアの内側に小さな空気塊を作ろうとしても、風の流れを肌で感じ取っているのか、ピンポイントで破壊されてしまう。
いまの彼女は空気による攻撃をいっさい受けつけない。
「三重のバリアか。その程度、一点突破なら攻撃を通せるぜ」
集中力を高めきったのか、リーンが目を開く。
その正面で、俺は右手に空気を集めていた。壁が破壊されて砂塵が舞っているので、空気を集めるとそれが目に見える。大きな圧縮であればなおさら見えやすい。
俺の右手にどんどん空気が凝縮されていく。
リーンの視線が灰色に染まった俺の凝縮空気を捕らえた瞬間、俺は執行モードで即座に移動した。
全身を動かすと同時に右手をも動かし、リーンの焦点から圧縮空気を外しつづける。
執行モードがどんどん剥がされるが、脇で圧縮空気を開放させることで俺の回避スピードをブーストしつづける。
俺の右手にはどんどん空気が圧縮されていく。
「無駄だ。それほどの砲撃を放つには、どこかで静止する必要がある。狙いを定めるため、そして反動に備えるために。私はその瞬間を絶対に逃さない」
剣は振ってこない。それどころか、剣を鞘に収めて両手を前にかざしている。
彼女も慎重になっているのだ。決して俺にこれを撃つ隙を与えてはならないから。
「リーン・リッヒ、一つだけ教えてやる。俺のいままでのすべての攻撃は、たった一撃のためにある」
俺は勝利を確信している。そうでなければ、何より情報を重要視するこの俺が敵に情報を与えるわけがないのだから。
そう、これは相手を誘導するための情報提供ではない。敵に塩を送っただけ。格付けが済み、格の差を知らしめるための行為。
俺はリーン・リッヒの言うとおり、地に足を着けて止まった。
両足を開いて腰を落とし、まっすぐに右手を伸ばす。
前方のリーンへ向けた右手の手首を左手で掴んで固定した。
俺はいま、リーンの真正面に立っている。距離は遠い。本来ならば入り口の扉があった位置だ。
「エグゾースト……」
砂塵を巻き込んで灰色となった空気はセメントのように濃い鼠色をしていた。それほどに凝縮されている。
その周囲の空気を硬化させて砲筒とする。
これが発射されれば、空気と一緒に砂塵も飛び、破壊力は計り知れない。もしこれを砲筒ごとここで解体されたら、その直撃を食らうのは俺だ。
「言ったとおりだ。消す!」
リーンが何かを振り払うように手を振った。俺の右手前方に振動が生じる。そこにある鼠色の空気が強制的に散らされる。
だが大爆発は起こらなかった。小爆発。
砂塵が俺の視界を奪うが、空間把握モードを継続している俺は目を閉じていても空間を把握できている。
リーンが剣の柄に手を伸ばしていたが、俺が伸ばした右手の向きを少し横にずらしてみせると、リーンの右手がピクリと反応して止まった。
「な、まさか!」
そう、とっておきの一撃が強制開放されてあの程度で済むわけがない。右手に凝縮させていたのはダミー。リーンの意識をそこに集中させるためのデコイだ。
本命は透明、目に見えない。
リーンはとっさに俺が右手を向けた方向、彼女自身の左手側に手を伸ばした。
そこに八重の精緻なバリアが張られる。目を閉じているが、俺はその動きが手に取るようにわかる。
ニヤリと微笑んで見せた。それを見逃さないリーンはとっさに右手も伸ばし、左右の両方にバリアを張った。さすがに左手側の八重のバリアは保てず、左右に四重ずつのバリアとなった。
だが彼女は伊達に最強の剣士として帝国を守護してきてはいない。天才的な戦闘センスに加え、豊富な経験を持つ。
そして、女性ならではの直感。
俺の勝利を確信した表情がブラフではないと見抜き、彼女は頭上、前方、後方にもバリアを張った。とっさに張ったバリアは二重。ほんの一、二秒のうちにそのバリアを三重に昇華させた。
俺がうっすらと目を開く。
彼女は最大限の集中を見せているが、そこに抱かれている不安が垣間見える。
『三重のバリアか。その程度、一点突破なら攻撃を通せるぜ』
さっきの俺の言葉が彼女の不安の正体だ。全方位を防御するのであれば、三重のバリアが限界。一点集中攻撃をされれば、バリアは突破されるかもしれない。
しかし、俺の言葉はバリアの隙を生むためのハッタリかもしれない。
実際のところ、俺は本心であの言葉を言ったのか、ハッタリで言ったのか。
正解は両方だ。正確にはハッタリではなく誘導だが。
そう、俺がとっておきを撃つ猶予をもらうために、彼女が防御に専念するよう誘導したのだ。
彼女は自身の絶対防御ならば俺の攻撃に耐えきれると信じ、全方位に対して三重バリアを張りつづけている。
いや、彼女はここへ来てさらなる成長を見せた。
バリアが四重になった。
いや五重になった。
全方位への五重バリア。どれほどの集中力を持つのか。
彼女が攻撃しないのであれば、彼女の集中が切れるまで待てばいい。しかし、俺の攻撃準備も相応の集中力を要する。
最強の攻撃と最強の防御で勝負するか、それとも集中力を持続させつづける我慢比べで勝負するか、彼女にはどちらでも受けてたつ気概があるようだ。
さて、攻撃するか我慢するかの選択権は俺にある。俺がどちらを選択するか。
そんなことは決まっている。
リーン・リッヒは想定以上ではあったが、戦況をこの形となるよう誘導したのは俺だ。俺の選択は、もちろん……。
――撃つ!
「……バァーストォオオオオオッ!」
技の名はエグゾースト・バースト。大砲の砲弾が圧縮空気になっている武器の名だ。
密閉容器から空気を解き放つことで、膨張した空気が容器の口から一方向へ飛び出し、標的に強烈な衝撃を与える。
爆音が響き、リーン・リッヒは吹き飛んだ。上方へ!
俺が圧縮しつづけていた本命は、リーン・リッヒの足の下、この皇帝の間の階下にあった。
俺が空間把握モードで把握していた範囲はこの皇帝の間だけでなく、下の階もだった。この部屋の窓を割って飛び込むとき、俺は一緒に下の階の窓も割っておいたのだ。最短距離で階下に把握モードをつなげられるように。
リーン・リッヒは床ごと下から吹き飛ばされ、天井へ衝突した。彼女は盛大に血を吹き、下からの瓦礫に追撃されて天井を突き破った。
天井に強力な振動を与えて脆くしたようだが、天井への衝突と瓦礫によるサンドイッチのダメージは計り知れない。
リオン城の最上階であるこの部屋の天井が吹き飛んだことで、紅く染まりかけた空があらわになった。
天高く舞ったリーン・リッヒは、弧を描いてから無数の瓦礫とともに落下を始める。
落下するリーンにはまだ意識があった。
彼女の艶やかな髪と、彼女の凛然たる佇まいを引き立てる騎士服は、汚れとダメージで無残というほかなく、彼女は目蓋を開き留める力を大きく失っているようだったが、その中にある瞳は俺を見据えていた。
――リーン・リッヒの右手が閃いた。
逆さまに落下する瀕死の女から飛び出した高速の波は、発生源たる彼女の状態とは裏腹に、山をも斬らんばかりの殺気を帯びていた。
だが俺に油断はない。あいにくと俺は死体相手であっても油断してやらないほどのゲスなのだ。相手が何者でどんな状態にあろうと、俺は油断しない。何ひとつ信用しない。
「はぁっ!」
俺は自分の正面で空気を完全に固めた。空間把握モードも執行モードもすべて解いて、その防御だけに集中した。
混合気体たる空気の構成成分へ操作リンクを伸ばし、分子レベルで操る。
振動というエネルギーが加えられてもそれに抵抗するイメージで、俺は静の操作をした。
リーンの斬撃は空気の壁にぶつかり、その表面でエネルギーを使い果たした。俺へは届かない。
これが俺の絶対防御。
しかしさすがに精神力の消耗が激しすぎる。
俺は空気の完全固定を解き、ボーリングの玉を連想させる密度と形に空気を凝縮させ、それをリーン・リッヒへと飛ばした。
「ぐおぅ!」
さすがにいまのリーンは防御を張れる状態ではない。リーンの腹に空気球が直撃し、彼女は吹き飛ばされ、皇帝のすぐ傍を横ぎって壁へと叩きつけられた。
リーンは壁から剥がれて床に落ち、もう起き上がらなかった。気を失っている。
天井と床の瓦礫だけが階下へと落下した。
「決着! 悪いな。俺はおごらない主義なんだ。最後の最後まで油断はない。最強を名乗っているのは、それが事実だからだ」
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる