192 / 302
第五章 王国編
第191話 宣言と実行
しおりを挟む
俺がさっき言った、世界の王になるという話は本当だ。王国最強の騎士団長殿には、その足がかりになっていただく。
「エア、聞こえているか?」
「ええ、聞こえているわ」
エアの姿はここにはない。帝国で紅茶でも飲んでいるのだろう。
俺の耳元に闇の塊が浮遊しており、そこから俺にだけ聞こえる大きさの声が聞こえてくる。
彼女には闇の概念魔法で俺を覗かせている。闇を使えば世界中を同時に覗くことができる。
「手筈どおりに頼む」
「分かった」
俺と騎士団長がいる場所の上方に巨大なモニターが出現した。モニターといっても家電製品ではなく、映像のみが映し出される四角い光の塊だ。
これもエアによる光の魔法。エアは俺の頭の中から、生徒会長レイジー・デントの魔法の記憶を拝借しているのだ。
モニターには空に浮かぶ俺と騎士団長が映し出されていた。周囲には無数のぬいぐるみが浮かんでいる。
それとまったく同じ光のモニターがいま、全世界のいたるところに出現しているはずだ。
「騎士団長殿、公開決闘といこうじゃないか」
「この不思議な魔法には少々驚きましたが、敗北という恥を自ら公開するなど、奇特な人がいたものですねぇ」
騎士団長は腰の剣を抜いた。
そして俺への間合いを詰めようと飛び出した。
「あがっ!」
騎士団長は飛び出した直後に見えない壁にぶつかって落下する。だが服に《浮力》を付与しており、羽根のようにゆっくりと降下していた。
彼は気を失ってはおらず、その姿勢のまま剣を振った。その剣はチェーンでつながった無数の刃に分割され、武器の間合いがグンと広がる。鞭のようにしなるチェーンソードが正確に俺を狙って飛んでくる。
だが刃が俺へと到達する前にチェーンは切れた。
「さっきと同じと思わないことですよ!」
チャクラムのときと同様に、武器を一部でも壊してしまえば武器に付与された魔法は消失する。
だが、今度はさっきとは違って分割された刃の一つひとつに魔法が付与されていた。無数の刃が空中を自由自在、縦横無尽に飛びまわる。
「すぐに襲ってこないところを見ると、付与した魔法は《自動追尾》ではなく《遠隔操作》といったところか。想定済みだ」
「そんなところですが、厳密に言うと《付与魔法の受信》を付与しているのですよ。想定済みでも対処は不可能です。追加付与 《絶対切断》、《軌道》、《超速》!」
無数の刃がいっせいに迫ってくる。これを避けるのはたしかに不可能だろう。
だがこれすらも俺は想定済みだ。
俺は魔法でも何でもなく、特技として身につけた能力を使った。
「リンク・ディストラクション」
俺の体から一瞬だけ黒い波動が全方位に発せられた。
それを潜った刃たちは、俺の周囲を固める空気に弾かれてパラパラと地に落下していく。
先ほどの黒い波動の正体は、自分以外の魔法の効果を弱める黒いオーラだ。
俺は黒いオーラの存在を知ったそのときから、自分の感情を自在に制御できるようひたすらマインドコントロールの訓練をしていた。
白いオーラについてはまだ修行中だが、負の感情により出現する黒いオーラについては、元々の素質もあってか極めたといえる領域にまで達したと自負している。
リンクの力を弱める黒いオーラが極限まで濃密になれば、リンクを消失させることだってできるのだ。
「そんな馬鹿な……」
あっけにとられる騎士団長を空気で包み込み、俺と同じ高さまで引き戻した。そして、両手を左右にピンと伸ばした姿勢で固定する。十字架に張りつけにされたような格好だ。
「シミアン王国・王立魔導騎士団長、メルブラン・エンテルト。世界最強たるこの俺、ゲス・エストが貴様に刑を執行する。貴様に執行する刑は、公開処刑だ!」
空中に待機させていた無数のクマのぬいぐるみたちが、いっせいにシャドーボクシングを始める。すると、騎士団長はほんの数秒のうちに数百発もの見えない打撃を受けた。全身血だらけになって、そのまま地上へと落下する。
頭から地面に落下していたが、殺す気はないので、こっそり空気で墜落死からは守ってやった。
今まで広範囲を投影していた光のモニターは、俺をズームして大きく映し出した。
「全人類に告ぐ。たったいま、この俺、ゲス・エストが世界の王となった。世界すべてが俺の支配下となり、現存する国は、国という名称をそのままに国から自治区という位置づけに変更する。そして、現在の各国首脳を俺の配下の執政官として任命する。なお、シミアン王国の統治者にはシミアン王国第三王女のミューイ・シミアンを任命する。同時に、現国王および王妃はミューイ・シミアンの後援者に任命する。さらに、シミアン家の第一王子、第一王女、第二王女は殺人教唆の罪で諸島連合へ追放刑とする。追放先からの移転は罪とし、それを犯した場合は死刑とする」
この俺が世界王となる話だが、実はリオン帝国とジーヌ共和国には事前に話を通してある。
帝国に関しては元々俺が皇帝の座を奪ってからリーン・リッヒに譲渡したのだから、彼女は俺に従うことを約束した。
ジーヌ共和国については、前大統領であるエース・フトゥーレが国を私物化し、自身が強力な魔術師でありながら強力な親衛隊を有していたため、議会の者たちは彼を持て余していたらしい。ゆえに、手に余る彼を討伐したことに対して俺は感謝された。
それと俺が世界王になる話は別ではあるが、当然ながら彼らは俺の強さをよく分かっているし、逆らう気は毛頭ないようだ。
護神中立国には長はいない。強いて挙げるなら神になるのだろうが、ネアという神の代理人はすべての事情を知っていて了承してくれた。
公地は元々どこの国にも属さないので、文句を言える者はいない。いるとすれば各国の首脳だろうが、それらも俺の支配下になるのだから問題ない。
諸島連合は後進国の集合体のような存在で、技術や文化レベルもさることながら、何より統治などの社会システムが原始レベルに低い。もしも追放したシミアン家の者たちが再興したのであれば、彼らを諸島連合の統治者として認めてやるつもりだ。彼らははっきり言ってクズだが、完全に無秩序な現状の諸島連合を鑑みれば、それでも少しはマシになろうというものだ。
各国は俺が宣言した後に俺に従属するという声明を出す手筈になっている。
最後にシミアン王国だが、たったいま支配を受け入れるしかないことを力ずくで示してやった。
だが、シミアン人は異常なまでにプライドや誇りというものにこだわるらしく、俺が王家を解体したことについて、王家の者でなくとも我が事のように俺に矛先を向けてくる。
その筆頭が、地上から俺を見上げて声を張り上げてきた。
「仮に貴殿が世界の王となったとして、貴殿はすでにシミアン王国の法を著しく侵害している。王国への反逆行為、王国騎士への傷害、公共物破壊、そのほかにも多くの罪を犯している。世界の頂点に君臨する者が大罪人というのは示しがつかないのではないか? シミアン王国の法を犯した責はどう取るおつもりか?」
声を挙げたのは王立魔導騎士団員の一人である。同僚より少しだけ華やかな騎士服を着ている。
彼は副騎士団長だ。
俺は彼のことも見定めていた。騎士団長を盲信する愚か者。彼が騎士団長の自尊心を膨張させた一因であることは間違いない。
俺はそいつを空気で包み込み、空中に吊るし上げた。
「何を勘違いしている。俺は独裁の王だ。俺にいかなる責任もなく、ただ権力があるのみ。俺はすべての法の上にある者であり、俺の発した言葉がそのまま法となり、各国の法に上書きされるものである。そしてその法を犯した者は俺が俺の裁量によって裁く。なお、これは予定ではない。現時点ですでに俺は世界の王にして頂点なのだ。そこのおまえ、いま、世界王たる俺に盾突いたな。大罪だ。裁きを与える」
俺が副騎士団長に向かって手を掲げ、そしてその手を握る様を見せつける。
それに呼応したかのように、副騎士団長の身体が曲がっていく。肩の関節を外し、両腕が本来曲がらない後ろ側へと折れ曲がる。体は「く」の字になって片膝が後頭部にかけられる。もう片方の足は外向きにジリジリと捻じれていく。
声にならない悲鳴をあげていたが、じきに声を出すのも辛くなってただ呻くだけとなった。
これは公開処刑だ。モニターに副騎士団長の残酷な姿が大きく映し出されている。その姿のまま、彼は地上へと急降下させられた。
この刑は命に別状はないが、その見た目は凄惨極まるものだ。全世界が震撼したことだろう。
「全世界民に告ぐ。俺は慈悲深い。いまの例のように、たいていのことは一度だけ軽い裁きで許してやる。だが二度目は死刑だ。もちろん、重罪には即死刑、さらには拷問後の死刑も有り得る。肝に銘じておけ」
俺はエアに予定どおり次のステップに移るよう促した。
光のモニターはここからは少し離れたシミアン王城をデカデカと映し出した。それでいて音声は俺たちの場所からも拾っている。
「世界民たちよ、俺の力をまだ分かっていない奴がいるだろうから、そんな愚か者どものために俺の力をいまいちど示してやる。これからシミアン王城を消し飛ばし更地に変える。刮目しろ。十秒で終わらせる!」
「待って!! あなたの力は十分に分かりました。私、ミューイ・シミアンは全面的にあなたに従います。シミアン王国の統治者の任、謹んで承ります。だから、これ以上は誰も傷つけないでください。どうか、お願いします!」
ボロボロの布をまとった可憐な少女が、跪いてお祈りするように両手を組み合わせ、俺を見上げている。
彼女は王城内部にいる人間の心配をしているのだろう。俺は中の人間を取り除いてから王城を潰すつもりだったが、いまのミューイの宣言は、俺のデモンストレーションに匹敵するほどの影響力があったとみなし、彼女の要望を聞き入れることにした。
「いいだろう。シミアン王国女王たっての願いだ。無碍にはせん。よく聞け、全世界民よ。貴様らは皆、俺の所有物だ。それはすなわち、俺の庇護下にあるということだ。そのことを光栄に思い、感謝を忘れるな。この俺、ゲス・エストは世界王にして絶対の秩序である」
モニターはそこで消滅した。
これで目的は果たした。
ミューイ・シミアンはきっと俺のことを軽蔑して怨んでいるだろう。だがそれは些末なことだ。
俺が全世界の人間と関係性を持つことは非常に重要なことだった。
さすがに赤の他人のために赤い狂気へと立ち向かおうなどという気概はない。だが全世界の人間が自分の管轄下にあるのだとすれば、俺も彼らを守るために凶悪な存在へ立ち向かおうと思えるのだ。
紅い狂気に挑むということは、それほどの覚悟を要するのである。
「エア、聞こえているか?」
「ええ、聞こえているわ」
エアの姿はここにはない。帝国で紅茶でも飲んでいるのだろう。
俺の耳元に闇の塊が浮遊しており、そこから俺にだけ聞こえる大きさの声が聞こえてくる。
彼女には闇の概念魔法で俺を覗かせている。闇を使えば世界中を同時に覗くことができる。
「手筈どおりに頼む」
「分かった」
俺と騎士団長がいる場所の上方に巨大なモニターが出現した。モニターといっても家電製品ではなく、映像のみが映し出される四角い光の塊だ。
これもエアによる光の魔法。エアは俺の頭の中から、生徒会長レイジー・デントの魔法の記憶を拝借しているのだ。
モニターには空に浮かぶ俺と騎士団長が映し出されていた。周囲には無数のぬいぐるみが浮かんでいる。
それとまったく同じ光のモニターがいま、全世界のいたるところに出現しているはずだ。
「騎士団長殿、公開決闘といこうじゃないか」
「この不思議な魔法には少々驚きましたが、敗北という恥を自ら公開するなど、奇特な人がいたものですねぇ」
騎士団長は腰の剣を抜いた。
そして俺への間合いを詰めようと飛び出した。
「あがっ!」
騎士団長は飛び出した直後に見えない壁にぶつかって落下する。だが服に《浮力》を付与しており、羽根のようにゆっくりと降下していた。
彼は気を失ってはおらず、その姿勢のまま剣を振った。その剣はチェーンでつながった無数の刃に分割され、武器の間合いがグンと広がる。鞭のようにしなるチェーンソードが正確に俺を狙って飛んでくる。
だが刃が俺へと到達する前にチェーンは切れた。
「さっきと同じと思わないことですよ!」
チャクラムのときと同様に、武器を一部でも壊してしまえば武器に付与された魔法は消失する。
だが、今度はさっきとは違って分割された刃の一つひとつに魔法が付与されていた。無数の刃が空中を自由自在、縦横無尽に飛びまわる。
「すぐに襲ってこないところを見ると、付与した魔法は《自動追尾》ではなく《遠隔操作》といったところか。想定済みだ」
「そんなところですが、厳密に言うと《付与魔法の受信》を付与しているのですよ。想定済みでも対処は不可能です。追加付与 《絶対切断》、《軌道》、《超速》!」
無数の刃がいっせいに迫ってくる。これを避けるのはたしかに不可能だろう。
だがこれすらも俺は想定済みだ。
俺は魔法でも何でもなく、特技として身につけた能力を使った。
「リンク・ディストラクション」
俺の体から一瞬だけ黒い波動が全方位に発せられた。
それを潜った刃たちは、俺の周囲を固める空気に弾かれてパラパラと地に落下していく。
先ほどの黒い波動の正体は、自分以外の魔法の効果を弱める黒いオーラだ。
俺は黒いオーラの存在を知ったそのときから、自分の感情を自在に制御できるようひたすらマインドコントロールの訓練をしていた。
白いオーラについてはまだ修行中だが、負の感情により出現する黒いオーラについては、元々の素質もあってか極めたといえる領域にまで達したと自負している。
リンクの力を弱める黒いオーラが極限まで濃密になれば、リンクを消失させることだってできるのだ。
「そんな馬鹿な……」
あっけにとられる騎士団長を空気で包み込み、俺と同じ高さまで引き戻した。そして、両手を左右にピンと伸ばした姿勢で固定する。十字架に張りつけにされたような格好だ。
「シミアン王国・王立魔導騎士団長、メルブラン・エンテルト。世界最強たるこの俺、ゲス・エストが貴様に刑を執行する。貴様に執行する刑は、公開処刑だ!」
空中に待機させていた無数のクマのぬいぐるみたちが、いっせいにシャドーボクシングを始める。すると、騎士団長はほんの数秒のうちに数百発もの見えない打撃を受けた。全身血だらけになって、そのまま地上へと落下する。
頭から地面に落下していたが、殺す気はないので、こっそり空気で墜落死からは守ってやった。
今まで広範囲を投影していた光のモニターは、俺をズームして大きく映し出した。
「全人類に告ぐ。たったいま、この俺、ゲス・エストが世界の王となった。世界すべてが俺の支配下となり、現存する国は、国という名称をそのままに国から自治区という位置づけに変更する。そして、現在の各国首脳を俺の配下の執政官として任命する。なお、シミアン王国の統治者にはシミアン王国第三王女のミューイ・シミアンを任命する。同時に、現国王および王妃はミューイ・シミアンの後援者に任命する。さらに、シミアン家の第一王子、第一王女、第二王女は殺人教唆の罪で諸島連合へ追放刑とする。追放先からの移転は罪とし、それを犯した場合は死刑とする」
この俺が世界王となる話だが、実はリオン帝国とジーヌ共和国には事前に話を通してある。
帝国に関しては元々俺が皇帝の座を奪ってからリーン・リッヒに譲渡したのだから、彼女は俺に従うことを約束した。
ジーヌ共和国については、前大統領であるエース・フトゥーレが国を私物化し、自身が強力な魔術師でありながら強力な親衛隊を有していたため、議会の者たちは彼を持て余していたらしい。ゆえに、手に余る彼を討伐したことに対して俺は感謝された。
それと俺が世界王になる話は別ではあるが、当然ながら彼らは俺の強さをよく分かっているし、逆らう気は毛頭ないようだ。
護神中立国には長はいない。強いて挙げるなら神になるのだろうが、ネアという神の代理人はすべての事情を知っていて了承してくれた。
公地は元々どこの国にも属さないので、文句を言える者はいない。いるとすれば各国の首脳だろうが、それらも俺の支配下になるのだから問題ない。
諸島連合は後進国の集合体のような存在で、技術や文化レベルもさることながら、何より統治などの社会システムが原始レベルに低い。もしも追放したシミアン家の者たちが再興したのであれば、彼らを諸島連合の統治者として認めてやるつもりだ。彼らははっきり言ってクズだが、完全に無秩序な現状の諸島連合を鑑みれば、それでも少しはマシになろうというものだ。
各国は俺が宣言した後に俺に従属するという声明を出す手筈になっている。
最後にシミアン王国だが、たったいま支配を受け入れるしかないことを力ずくで示してやった。
だが、シミアン人は異常なまでにプライドや誇りというものにこだわるらしく、俺が王家を解体したことについて、王家の者でなくとも我が事のように俺に矛先を向けてくる。
その筆頭が、地上から俺を見上げて声を張り上げてきた。
「仮に貴殿が世界の王となったとして、貴殿はすでにシミアン王国の法を著しく侵害している。王国への反逆行為、王国騎士への傷害、公共物破壊、そのほかにも多くの罪を犯している。世界の頂点に君臨する者が大罪人というのは示しがつかないのではないか? シミアン王国の法を犯した責はどう取るおつもりか?」
声を挙げたのは王立魔導騎士団員の一人である。同僚より少しだけ華やかな騎士服を着ている。
彼は副騎士団長だ。
俺は彼のことも見定めていた。騎士団長を盲信する愚か者。彼が騎士団長の自尊心を膨張させた一因であることは間違いない。
俺はそいつを空気で包み込み、空中に吊るし上げた。
「何を勘違いしている。俺は独裁の王だ。俺にいかなる責任もなく、ただ権力があるのみ。俺はすべての法の上にある者であり、俺の発した言葉がそのまま法となり、各国の法に上書きされるものである。そしてその法を犯した者は俺が俺の裁量によって裁く。なお、これは予定ではない。現時点ですでに俺は世界の王にして頂点なのだ。そこのおまえ、いま、世界王たる俺に盾突いたな。大罪だ。裁きを与える」
俺が副騎士団長に向かって手を掲げ、そしてその手を握る様を見せつける。
それに呼応したかのように、副騎士団長の身体が曲がっていく。肩の関節を外し、両腕が本来曲がらない後ろ側へと折れ曲がる。体は「く」の字になって片膝が後頭部にかけられる。もう片方の足は外向きにジリジリと捻じれていく。
声にならない悲鳴をあげていたが、じきに声を出すのも辛くなってただ呻くだけとなった。
これは公開処刑だ。モニターに副騎士団長の残酷な姿が大きく映し出されている。その姿のまま、彼は地上へと急降下させられた。
この刑は命に別状はないが、その見た目は凄惨極まるものだ。全世界が震撼したことだろう。
「全世界民に告ぐ。俺は慈悲深い。いまの例のように、たいていのことは一度だけ軽い裁きで許してやる。だが二度目は死刑だ。もちろん、重罪には即死刑、さらには拷問後の死刑も有り得る。肝に銘じておけ」
俺はエアに予定どおり次のステップに移るよう促した。
光のモニターはここからは少し離れたシミアン王城をデカデカと映し出した。それでいて音声は俺たちの場所からも拾っている。
「世界民たちよ、俺の力をまだ分かっていない奴がいるだろうから、そんな愚か者どものために俺の力をいまいちど示してやる。これからシミアン王城を消し飛ばし更地に変える。刮目しろ。十秒で終わらせる!」
「待って!! あなたの力は十分に分かりました。私、ミューイ・シミアンは全面的にあなたに従います。シミアン王国の統治者の任、謹んで承ります。だから、これ以上は誰も傷つけないでください。どうか、お願いします!」
ボロボロの布をまとった可憐な少女が、跪いてお祈りするように両手を組み合わせ、俺を見上げている。
彼女は王城内部にいる人間の心配をしているのだろう。俺は中の人間を取り除いてから王城を潰すつもりだったが、いまのミューイの宣言は、俺のデモンストレーションに匹敵するほどの影響力があったとみなし、彼女の要望を聞き入れることにした。
「いいだろう。シミアン王国女王たっての願いだ。無碍にはせん。よく聞け、全世界民よ。貴様らは皆、俺の所有物だ。それはすなわち、俺の庇護下にあるということだ。そのことを光栄に思い、感謝を忘れるな。この俺、ゲス・エストは世界王にして絶対の秩序である」
モニターはそこで消滅した。
これで目的は果たした。
ミューイ・シミアンはきっと俺のことを軽蔑して怨んでいるだろう。だがそれは些末なことだ。
俺が全世界の人間と関係性を持つことは非常に重要なことだった。
さすがに赤の他人のために赤い狂気へと立ち向かおうなどという気概はない。だが全世界の人間が自分の管轄下にあるのだとすれば、俺も彼らを守るために凶悪な存在へ立ち向かおうと思えるのだ。
紅い狂気に挑むということは、それほどの覚悟を要するのである。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる