残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな

文字の大きさ
204 / 302
第五章 王国編

第203話 記憶の扉①

しおりを挟む
 俺は執行モードと空間把握モードを展開して、高密度に圧縮した空気の弾丸を発射した。
 俺自身は直立不動で攻撃の予兆を見せないよう努めたが、紅い狂気は難なく透明で高速な弾丸をかわした。

 あの攻撃をかわすということは、当てさえすればダメージは与えられるはずだ。
 俺は紅い狂気の周囲全方向に圧縮空気の弾丸を作り出す。それを同時に発射しようとしたとき、紅い狂気の煌々こうこうと燃え盛るような紅い瞳がピカリと光った。

 次の瞬間、俺の左腕が肩から切断されて地上へと落下した。

「うわああああああああ!」

 俺は慣れない叫び声をあげて息を詰まらせた。血が噴出している。右手で押さえたほうがいいのかもしれないが、ますます痛そうでためらわれる。
 痛みを意識した瞬間、まだ脳が痛みを認識できていないことに気づき、これから襲いくるであろう激痛への恐怖が痛みよりも先に襲ってきた。
 しかし、このままでは失血死してしまう。優先すべきが何なのか、もはや分からない。俺は冷静さを失い、混乱した。そうして時間を浪費して、余計に焦りがつのるばかりだ。
 そんな俺を心臓の鼓動が急かしてくる。鼓動はどんどん速くなり、心臓が破裂しそうになっている。息ができなくて咳き込んだとき、左肩を見ると腕はついていた。

「へあっ!?」

 一瞬、何が起こったのか分からなかったが、先ほどの腕が落ちる光景は幻覚なのではないか、きっとそうなのだろうと気づきはじめた。

 俺はハッとして正面を見ると、そこに紅い狂気の姿はない。そして背筋がゾワッとした。背後に紅い狂気がいるのだ。
 俺の首筋にナイフを突きつけられたような鋭く冷たい感覚がある。空間把握により、それは紅い狂気の爪なのだと察知できた。

 エアが俺の背後に向けてレーザー光線を放つが、その光線ごと時間が止まったようにエアは固まった。

「ふふふ。ようこそ、記憶の扉へ」

 俺の首にチクッと刺激が入った。
 その瞬間、俺の目に映る景色は真っ白になった。周りには誰もいない。エアもいないし、紅い狂気もいない。その空間に存在するのは、肩で息をする汗だくの俺と、真っ白な巨大扉のみ。

「記憶の扉?」

 俺は扉の前まで歩いていく。
 観音開きのその扉は三階建ての建物くらい高いが、扉に触れると片手でも簡単に開きそうなほど軽かった。

「駄目だ……。駄目だ! これは、開いては駄目な扉だ!」

 俺はそう直感した。俺は記憶の扉というものが何なのかまったく知らないが、心臓の鼓動が爆音で警告を発している。
 俺は扉から手を引こうとした。

「なにっ!? おい、やめろ!」

 俺の手は意思に反して扉を押してしまう。駄目だ、勝手に動いている。
 意思と逆のことをさせられている? だからといって逆に押してみても手はそのまま扉を押し広げていく。
 俺の体は勝手に動かされていた。俺の意思をまったく受けつけずに。

「クソッ、いいぜ! それならそれで、受けて立つ!」

 扉は完全に押し開かれた。
 扉の向こうは白い世界ではない。その世界の色がブワーッとこちらの世界になだれ込んできて、空間は一つの世界となり、扉は消失した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...