ウインタータイム ~恋い焦がれて、その後~

さとう涼

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2.彼女は大事な存在

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(side 冬馬)


 今日は同じ会社の人に誘われての合コンだった。こういうのはいつものこと。俺もみんなでわいわい飲むのは好きだから、つい誘いにのってしまう。
 いろんな女の子と遊ぶのも大好きだった。遊びすぎて特定の彼女もいたためしはない。でもそれなりに楽しい。そう思っていた。少し前までは。
 最近は違う。それもこれも……。
 とくに女の子と遊んだ日は、無性に輝《ひかる》に会いたくなる。合鍵を持たされている俺は、時間なんて関係なく、ここに来てしまう。
 なあ、輝。これはどういうことなんだ? 普通、合鍵ってどうでもいいと思っているやつには渡さないもんだろう?
 でもまさかな。輝はいまもあいつが好きなんだから。

「朝帰りするなら自分のマンションに帰ってよ。なんでわざわざここに来るの?」
「だってここからのほうが会社に近いし」
「それじゃあ、なんのためにひとり暮らしをはじめたのかわかんないじゃない」

 ひとり暮らしをしているマンションがあるのに、ここに来る理由を輝が知ったら驚くだろうな。てか、引かれないか? 俺の気持ちを知ったら……。
 輝が香水の匂いを気にしていた。やきもちを焼かれているみたいでうれしかった。
 それにしても今日の女はしつこかったな。香水のにおいを強烈に放ちながら俺にまとわりついてくる。少し前の俺だったら適当に相手をしていたんだろうけど、いまは違う。
 俺を変えたのは、輝、おまえだよ。眠っているときに、うしろから抱きしめる癖がついたのはおまえのせいだよ。せめて眠っている間だけは、ひとり占めしたいんだ。

 ◇◇◇

 輝にはずっと忘れられない男がいることは、けっこう前に本人から聞いていた。
 そして半年前。偶然、輝のスマホの待ち受けを見た。そこに写っていた男、そいつが輝の好きな男だとすぐにわかった。
 俺たちよりもずっと年上の男だった。周辺には緑があって、「このとき虹がすごくきれいだったんだ」と輝は懐かしそうに言った。

「そいつが例の男か」
「うん、昔好きだった人」
「『だった』じゃなくて、いまも好きな男だろう。それにしてもイケメンだな」
「性格もいいんだよ。とにかくやさしくてお人好し」
「やさしい? 結局、輝を捨てた男だろう? どこがやさしいんだよ?」
「でもやさしかったの! 絶対に幸せになれって、最後に言ってくれたんだ」

 好きな人の心のなかに別の誰かがいるというつらさ。俺にも似たような経験があったから輝の気持ちはよくわかる。
 でも俺は仕方ないとして。どうして輝みたいな女を切り捨てるかな。こんないい女、めったにいない。

 俺と輝は似ているようだけど、生き方は違った。
 高三のとき、俺にはひとつ下の好きな女の子がいた。
 彼女の名前は『沙耶《さや》』。
 ある日、彼氏と別れた沙耶に俺は近づいた。元彼に少しだけ似ていた俺だったから、沙耶は俺を選んでくれた。といってもセフレという関係だ。
 だけど結局、沙耶は元彼を忘れられず、元彼とヨリを戻した。もともとあのふたりは想い合っているのに意地を張って別れただけだったから当然の結果なんだけど。
 実際、沙耶と関係を持っていたときはかなり苦しかった。自分の想いを告げられず、セフレの役割を果たし続けた。
 沙耶たちがヨリを戻して少し経ったときに、最後に「好きだ」と気持ちを告げてはみたけれど。案の定、玉砕。
 それから俺は次から次へと女の子を変えて遊ぶようになった。だけど沙耶への想いをこじらせていたわけじゃない。単に誰も好きにならなかっただけだ。

 とにかく、好きになった人がほかの誰かを忘れられずにいる状況はもうごめんだ。だから本気の恋をしないで適当に遊んでいる。
 あれ? つまりそれが「こじらせている」ということなのか? そっか、そうなのかもしれない。

 一方、輝はずっとひとりの男を想い続けたまま。時間が止まったかのように誰も受け入れず、誰ともつき合うことをしなかった。
 輝は一途で健気で、心配になるくらい純粋だった。正直、そんなふうに想われているその男がうらやましかった。そして、そんなふうに生きている輝をなんて強い人間なんだろうと尊敬していた。やがて俺はそんな輝の恋愛観が気になるようになった。
 でも、この気持ちはたぶん好きとかそういうんじゃないと思う……。半年前はそう思っていた。
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