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「……じゃあ、この女を捕まえれば、それで解決するじゃない」
なんでそうしないのよ、とライラが尋ねると、エリクとセアロの二人が同時に深くため息をついた。
「そう簡単に捕まえられる女なら、苦労はしていない」
「残念ながら、エリク様の仰る通りなのですう」
ライラは二人の反応に首を傾げる。二人からは諦めの気持ちを抱いているような、そんな印象を受けた。
なぜそんな感情を持っているのか不思議に思っていると、室内にいる残りの者たちまで二人と同じ反応をしていることに気が付いた。
「……え、ちょっと待ってよ。わかっていないのって、もしかして私だけなのかしら?」
ライラは戸惑いながら自分を指差して誰ともなく尋ねると、室内の全員が頷いた。
室内の者を代表するように、セアロがライラに向かって話し出す。
「彼女は領内ではちょっとした有名人なのです。密輸だけではなく薬物売買に売春斡旋、それから詐欺と……。とにかく数えきれないほどの罪を犯しているお方なのですよ……」
セアロがそこまで話をして、がっくりと肩を落とした。
セアロがほんの少し言葉を詰まらせている間に、ファルが補足する様にライラにそっと声をかけてきた。
「この方は領内でも屈指の大商会のお嬢さまなのですよ。だから彼女の裏家業については知らない人でも、表の顔だけは知っているという人も多いのです」
ファルとイルシアの反応から、二人は似顔絵の女性の裏家業については承知しているらしい。
「表向きお嬢さまはご実家の家業を手伝っておられます。働き者の美人さんとして、とっても有名なのですよ」
「……へえ、そうなのね。でも、犯罪者とわかっているのなら、なぜ捕まえられないの?」
「どんなに罪を犯しても、お金ですべてもみ消してしまうのです。ご実家は手広くやっておられますから、いろいろなところに顧客がいるらしくて……」
ファルが苦笑いをしながらマスターをちらりと盗み見る。
彼女ははっきりと言わないが、それで何を伝えたいのかわかった。
ここの土地の領主が、顧客の中に含まれているのだ。
「…………へえ、そう。そういうことなのね」
ライラは隣に座るマスターを横目でじとっとした目で見つめる。
マスターはライラの視線には気が付いているだろうが、何でもない振りをして黙りこんでいる。
「とりあえず、この似顔絵の女性についてはわかったわ。このお嬢さまが密輸組織の親玉で、瘴気騒ぎを引き起こした犯人ってことでいいのね?」
ライラはマスターからエリクに視線を向けて声をかけた。
「……それが、まだはっきりとは断言できない」
「あら、どうしてなのかしら? だってお嬢さまが親玉だって言ったじゃないの」
エリクが困った顔をしてセアロに視線を向ける。
すると、再びセアロが話をはじめた。
「この困ったお嬢さま、名前をエセリンド様とおっしゃるのですが、この方もどうやら行方不明らしいのですよー」
なんでそうしないのよ、とライラが尋ねると、エリクとセアロの二人が同時に深くため息をついた。
「そう簡単に捕まえられる女なら、苦労はしていない」
「残念ながら、エリク様の仰る通りなのですう」
ライラは二人の反応に首を傾げる。二人からは諦めの気持ちを抱いているような、そんな印象を受けた。
なぜそんな感情を持っているのか不思議に思っていると、室内にいる残りの者たちまで二人と同じ反応をしていることに気が付いた。
「……え、ちょっと待ってよ。わかっていないのって、もしかして私だけなのかしら?」
ライラは戸惑いながら自分を指差して誰ともなく尋ねると、室内の全員が頷いた。
室内の者を代表するように、セアロがライラに向かって話し出す。
「彼女は領内ではちょっとした有名人なのです。密輸だけではなく薬物売買に売春斡旋、それから詐欺と……。とにかく数えきれないほどの罪を犯しているお方なのですよ……」
セアロがそこまで話をして、がっくりと肩を落とした。
セアロがほんの少し言葉を詰まらせている間に、ファルが補足する様にライラにそっと声をかけてきた。
「この方は領内でも屈指の大商会のお嬢さまなのですよ。だから彼女の裏家業については知らない人でも、表の顔だけは知っているという人も多いのです」
ファルとイルシアの反応から、二人は似顔絵の女性の裏家業については承知しているらしい。
「表向きお嬢さまはご実家の家業を手伝っておられます。働き者の美人さんとして、とっても有名なのですよ」
「……へえ、そうなのね。でも、犯罪者とわかっているのなら、なぜ捕まえられないの?」
「どんなに罪を犯しても、お金ですべてもみ消してしまうのです。ご実家は手広くやっておられますから、いろいろなところに顧客がいるらしくて……」
ファルが苦笑いをしながらマスターをちらりと盗み見る。
彼女ははっきりと言わないが、それで何を伝えたいのかわかった。
ここの土地の領主が、顧客の中に含まれているのだ。
「…………へえ、そう。そういうことなのね」
ライラは隣に座るマスターを横目でじとっとした目で見つめる。
マスターはライラの視線には気が付いているだろうが、何でもない振りをして黙りこんでいる。
「とりあえず、この似顔絵の女性についてはわかったわ。このお嬢さまが密輸組織の親玉で、瘴気騒ぎを引き起こした犯人ってことでいいのね?」
ライラはマスターからエリクに視線を向けて声をかけた。
「……それが、まだはっきりとは断言できない」
「あら、どうしてなのかしら? だってお嬢さまが親玉だって言ったじゃないの」
エリクが困った顔をしてセアロに視線を向ける。
すると、再びセアロが話をはじめた。
「この困ったお嬢さま、名前をエセリンド様とおっしゃるのですが、この方もどうやら行方不明らしいのですよー」
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