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「……何者かって、あんな大きなモンスターを誰がわざわざこんなところまで連れてくるのよ」
ライラは自分にだけ聞こえる小さな声でぼそりと呟いてから、書類にもういちど視線を落とした。
書かれている内容とエリクの話が結び付かない。
ライラが目を細めて文字を追っていると、役人風の男がいきなり話し出した。
「――はい! では、続きは僕からお話をさせて頂きますう」
役人風の男は身体を前のめりにしてライラをまっすぐに見つめていた。
どうやらライラの呟きが聞こえてしまっていたらしい。
「僕は瘴気については専門じゃないのでさっぱりわかりません。ですが、モンスターがこの地に連れてこられた理由は明確ですう」
役人風の男は、ぴんと人差し指を立てて、軽快に話し出した。
「この街は隣国との国境が非常に近いのです。モンスターは密輸目的でここへ連れてこられたのだと思われますう」
「あんな大型のモンスターを、わざわざ生きたままで密輸するの? ……まったく、世の中には物好きな人がいるものね」
ライラはすっかり呆れてしまい、ソファに深く腰掛けてため息をついた。
しかし、すぐにあることに気がついた。ライラは真面目な顔をして役人風の男に尋ねる。
「……ねえ、まさかこの書類に書かれている行方不明っていう人たちは、モンスターと同じように売買目的でさらわれたってことだったりするのかしら?」
「はい、お察しの通りでございますう。私たちはそう考えておりますう」
ライラは改めて渡された書類に目を通す。
ざっと見た限りでも、ここ数ヶ月の間に数十人の若者が姿を消していることになる。
「……そんな、こんなにたくさんの人がですか? 私はまったく気がついていませんでした」
「しょうがねえよ。組合にだって行方不明者の捜索依頼とか出ていないしな」
ファルが泣きそうな顔をしながら声を上げた。
ひどく落ち込んだ様子のファルに、イルシアがうろたえながら彼女の背中を撫でて励まそうとする。
ライラもファルを落ち着かせるために、すぐに声をかけた。
「たぶん行方がわからなくなっているのが、素行の悪い者たちばかりだからじゃないかしら。誰も探そうなんて思わなかったのよ。ファルちゃんが責任を感じることじゃないわ」
書類にはどの行方不明者にも犯罪歴が漏れなく記載されている。
すりや窃盗、薬物の売買に強姦など、普通に生活をしているだけでは関わることが少ない者たちばかりだ。
模範的な市民であれば、このような犯罪者がいなくなっても気が付かない。
もし気が付いていたとしても、いなくなって清々したと思うだけでわざわざ探しだそうとはしないだろう。
「さすがですね、その通りですう! ……えっとー、誰さんでしたっけえ?」
役人風の男が、今になって互いの紹介をしていないことに気が付く。
ライラは男に呆れながら短く自己紹介をした。
「ライラよ。冒険者をしているの、よろしくね」
「僕はセアロです。この街の役所に勤めております。よろしくお願いしますう」
セアロから差し出された手をライラは握る。
彼はライラの手をぶんぶんと激しく上下に振った。
「……えっとー、どこまでお話をしましたか。そうだ、行方不明者は犯罪者ってところまでですねえ」
そう言って、セアロは乱暴にライラの手を離すと書類をぱらぱらとめくる。
「えっとー、この人ですこの人。この方をご覧くださいー」
セアロは束になっている書類の最後の人物を見るように言った。
ライラは言われた通りにその書類に視線を落として首を傾げた。
「えっと……。この女は何者なのかしら? この方も行方不明ってことでいいのかしらね」
女の経歴はほとんど書かれていない。
はっきりとわかるのは名前と容貌だけだ。
「ずばり、この方が密輸組織の親玉ですう」
「――え! 犯人がわかっているの?」
セアロは女の似顔絵を自分の顔の横に持ってくると、得意げに指差しながらあっけらかんと言ってのけた。
ライラは自分にだけ聞こえる小さな声でぼそりと呟いてから、書類にもういちど視線を落とした。
書かれている内容とエリクの話が結び付かない。
ライラが目を細めて文字を追っていると、役人風の男がいきなり話し出した。
「――はい! では、続きは僕からお話をさせて頂きますう」
役人風の男は身体を前のめりにしてライラをまっすぐに見つめていた。
どうやらライラの呟きが聞こえてしまっていたらしい。
「僕は瘴気については専門じゃないのでさっぱりわかりません。ですが、モンスターがこの地に連れてこられた理由は明確ですう」
役人風の男は、ぴんと人差し指を立てて、軽快に話し出した。
「この街は隣国との国境が非常に近いのです。モンスターは密輸目的でここへ連れてこられたのだと思われますう」
「あんな大型のモンスターを、わざわざ生きたままで密輸するの? ……まったく、世の中には物好きな人がいるものね」
ライラはすっかり呆れてしまい、ソファに深く腰掛けてため息をついた。
しかし、すぐにあることに気がついた。ライラは真面目な顔をして役人風の男に尋ねる。
「……ねえ、まさかこの書類に書かれている行方不明っていう人たちは、モンスターと同じように売買目的でさらわれたってことだったりするのかしら?」
「はい、お察しの通りでございますう。私たちはそう考えておりますう」
ライラは改めて渡された書類に目を通す。
ざっと見た限りでも、ここ数ヶ月の間に数十人の若者が姿を消していることになる。
「……そんな、こんなにたくさんの人がですか? 私はまったく気がついていませんでした」
「しょうがねえよ。組合にだって行方不明者の捜索依頼とか出ていないしな」
ファルが泣きそうな顔をしながら声を上げた。
ひどく落ち込んだ様子のファルに、イルシアがうろたえながら彼女の背中を撫でて励まそうとする。
ライラもファルを落ち着かせるために、すぐに声をかけた。
「たぶん行方がわからなくなっているのが、素行の悪い者たちばかりだからじゃないかしら。誰も探そうなんて思わなかったのよ。ファルちゃんが責任を感じることじゃないわ」
書類にはどの行方不明者にも犯罪歴が漏れなく記載されている。
すりや窃盗、薬物の売買に強姦など、普通に生活をしているだけでは関わることが少ない者たちばかりだ。
模範的な市民であれば、このような犯罪者がいなくなっても気が付かない。
もし気が付いていたとしても、いなくなって清々したと思うだけでわざわざ探しだそうとはしないだろう。
「さすがですね、その通りですう! ……えっとー、誰さんでしたっけえ?」
役人風の男が、今になって互いの紹介をしていないことに気が付く。
ライラは男に呆れながら短く自己紹介をした。
「ライラよ。冒険者をしているの、よろしくね」
「僕はセアロです。この街の役所に勤めております。よろしくお願いしますう」
セアロから差し出された手をライラは握る。
彼はライラの手をぶんぶんと激しく上下に振った。
「……えっとー、どこまでお話をしましたか。そうだ、行方不明者は犯罪者ってところまでですねえ」
そう言って、セアロは乱暴にライラの手を離すと書類をぱらぱらとめくる。
「えっとー、この人ですこの人。この方をご覧くださいー」
セアロは束になっている書類の最後の人物を見るように言った。
ライラは言われた通りにその書類に視線を落として首を傾げた。
「えっと……。この女は何者なのかしら? この方も行方不明ってことでいいのかしらね」
女の経歴はほとんど書かれていない。
はっきりとわかるのは名前と容貌だけだ。
「ずばり、この方が密輸組織の親玉ですう」
「――え! 犯人がわかっているの?」
セアロは女の似顔絵を自分の顔の横に持ってくると、得意げに指差しながらあっけらかんと言ってのけた。
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