離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉

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「……えーっと、それって彼女もさらわれたってことなの? 密輸組織は彼女のものなのに、まさか仲間割れしたとでもおっしゃるのかしらね」

「それがよくわからないのですう。実は瘴気騒ぎのすぐあとに、エセリンド様を探して欲しいと、ご実家の商会の方々から役所の方にご相談がありましてえ……」

 先ほどまでの軽快さはどこへいったのか、ここにきてセアロの歯切れが悪い。
 セアロは腕を組んで悩ましげな顔をしながら、ゆっくりと話を続ける。

「ご実家の方々は、私どものところだけではなく、軍と冒険者組合の方へにも捜索のご相談をしにいらっしゃったそうなのですけどお……」

 セアロの話を聞きながら、エリクとマスターが頷いた。
 そこでとうとう、セアロは完全に言葉を詰まらせてしまった。

「……えっと、いくら不良娘とはいえ、いなくなればきちんと探そうとしてくれたのよね? とても良いご家族じゃない。それが何か問題があるのかしら」

 セアロが何も話さなくなってしまったのでライラが質問をすると、今度はエリクが話し出した。

「大型のモンスターの密輸や大規模な人身売買ができるような組織、あの女しか考えられない。それはあの女の裏の顔を知っている者なら誰もがそう思う。あの女の家族も瘴気騒ぎを耳にしてそう思ったはずだ」

 エリクが苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。
 それだけで、彼がエセリンドにはかなり悔しい思いをさせられてきたのだろうというのが伝わってくる。

「瘴気騒ぎを起こせばこの地に駐留している軍だけではなく、中央軍が出張ってくる可能性がある。商会の方はそうなる前にどうにかしようと思ったのだろう。娘が勝手にやったことで、自分たちには関係ないと主張するために、各方面へ娘の捜索依頼をしたと我々はみている」

 瘴気がなぜ、どうして発生するのか原因はよくわかっていない。
 そのため、瘴気による被害が発生すると、中央から原因追及のために軍の調査部隊がやってくることがある。
 この田舎街に中央軍の部隊がやってくるとなれば、大きな騒ぎとなるのは目に見えている。

「……ああ、なるほどねえ」

 ライラはエセリンドの似顔絵を見ながらため息まじりに言った。

「実際に裏稼業はお嬢さまが勝手にやっていたことで、ご家族は詳しく内情を知らない。だから、家族からは裏家業についての情報が引き出せない。お嬢さまが行方をくらませてしまったことで、起きている問題が彼女のやったことだと、あなたたちは確証が持てない。だからとても困っていると、そういう理解でいいのかしらね?」

 ライラが捲し立てると、エリクとセアロが悔しそうに頷いた。
 おそらくエセリンドという女が犯人です、では中央軍は納得しないだろう。
 犯人がわかっているなら、なぜ捕まえておかなかったと責め立てられるに違いない。

「お嬢さまが行方をくらませたのが、中央軍の追及を逃れるためと考えれば、それが犯人である状況証拠と言えなくはないと思うけれど……?」
 
 ライラはそう言いながらイルシアとファルに視線を向けた。三人で黙ったまま視線を交わす。
 その互いの視線が、この話に自分たちは必要なのか、ということを訴えていた。
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