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「……ねえ、私たち帰ってもいいかしら?」
ライラは代表して口を開いた。
これ以上面倒くさいことに巻き込まれる前に、ここからさっさと立ち去りたい。
ライラは渡された書類を机の上にばさりと投げ捨てると、返事も聞かずに立ちあがろうとする。
「――ああ、待ってくださいぃいい! 大事な話はこれからなのですよー‼」
セアロが立ち去ろうとするライラの元まで、慌てて駆け付けてきた。
彼は立ちあがりかけていたライラの肩をがっちりと掴んでソファに押し戻す。
その必死すぎる態度にライラは驚きつつも、肩を掴まれた痛さに不満げな顔をしてセアロを見上げる。
すると、ここで隣に座るマスターがようやく口を開いた。
「そんな顔をしないでくださいよ。あなたに関係がある話だからお聞かせしているのですから」
そうでなければわざわざこんな日に呼びだしませんよ、とマスターは涼しい顔をしている。
「中央軍の調査部隊がきたら、冒険者なんていらないでしょう。あなたが書いた報告書だけで十分じゃないのよ」
ライラがため息まじりに言い返すと、マスターは口の端を上げて嫌な笑みを浮かべた。
「その調査部隊を指揮するのがクロードだって言ったら、大人しく座っていてくださいますか?」
「……なんでよ、そんなわけないじゃない。あの人は隣国との戦に出たはずでしょう?」
ライラはからかわれているのだと思ってマスターを睨みつけた。
「では、隣国と開戦したという話はお耳に入っておりますか?」
「……そういえば、戦況とかまったく聞かないわね。私が王都にいた頃にはすぐにでも開戦するという話だったけど……?」
ライラは軍人であるエリクに視線を向ける。
彼は真剣な顔をすると、すぐに口を開いた。
「外交ルートでぎりぎり開戦を回避できている。今も外交官たちは奮闘しているがな」
「……そう、だったのね。だけど、外交官が奮闘している状況なら危険に変わりはないじゃない。国境沿いに軍を展開しているのでしょう?」
「もちろんだ。国境警備は厳重にしている」
「だったら、あの人も国境近くに待機しているはずでしょう? こんなところに来られるはずないじゃない」
「わざわざあの方が前線まで出てきたことがもし隣国に知られれば刺激してしまう。外交官たちの努力が水の泡だ」
ライラはエリクの話を聞いている内に身体中から血の気が引いていく。
クロードは女関係にはだらしない男だったが、軍人としては周辺国家に名将として知られている。
エリクの言っていることは理解できるが、どうしても納得いかない。
「……戦地に行く必要がなくなったからって、どうして瘴気の調査部隊を指揮することになるのよ」
「まあ、瘴気の脅威は恐ろしいものですからね。その調査となれば指揮官は有能な方でないといけませんから」
ライラは肩を落とす。そんなライラに構わずマスターは話を続けた。
「あなたがここにいるのす。中央軍がこの街へ来る正当な理由ができたのなら、そりゃあいつは来たがるでしょうね」
「――っ本当に面倒くさい男! なんで捨てた女をわざわざ追いかけてくるわけ?」
「それはご本人に聞いてください。侯爵閣下がいらっしゃるなんてこっちはいい迷惑ですよ」
マスターが面倒くさそうに言うので、ライラは腹が立って盛大に舌打ちをした。
すると、室内の空気が冷たくなってくる。
ライラは代表して口を開いた。
これ以上面倒くさいことに巻き込まれる前に、ここからさっさと立ち去りたい。
ライラは渡された書類を机の上にばさりと投げ捨てると、返事も聞かずに立ちあがろうとする。
「――ああ、待ってくださいぃいい! 大事な話はこれからなのですよー‼」
セアロが立ち去ろうとするライラの元まで、慌てて駆け付けてきた。
彼は立ちあがりかけていたライラの肩をがっちりと掴んでソファに押し戻す。
その必死すぎる態度にライラは驚きつつも、肩を掴まれた痛さに不満げな顔をしてセアロを見上げる。
すると、ここで隣に座るマスターがようやく口を開いた。
「そんな顔をしないでくださいよ。あなたに関係がある話だからお聞かせしているのですから」
そうでなければわざわざこんな日に呼びだしませんよ、とマスターは涼しい顔をしている。
「中央軍の調査部隊がきたら、冒険者なんていらないでしょう。あなたが書いた報告書だけで十分じゃないのよ」
ライラがため息まじりに言い返すと、マスターは口の端を上げて嫌な笑みを浮かべた。
「その調査部隊を指揮するのがクロードだって言ったら、大人しく座っていてくださいますか?」
「……なんでよ、そんなわけないじゃない。あの人は隣国との戦に出たはずでしょう?」
ライラはからかわれているのだと思ってマスターを睨みつけた。
「では、隣国と開戦したという話はお耳に入っておりますか?」
「……そういえば、戦況とかまったく聞かないわね。私が王都にいた頃にはすぐにでも開戦するという話だったけど……?」
ライラは軍人であるエリクに視線を向ける。
彼は真剣な顔をすると、すぐに口を開いた。
「外交ルートでぎりぎり開戦を回避できている。今も外交官たちは奮闘しているがな」
「……そう、だったのね。だけど、外交官が奮闘している状況なら危険に変わりはないじゃない。国境沿いに軍を展開しているのでしょう?」
「もちろんだ。国境警備は厳重にしている」
「だったら、あの人も国境近くに待機しているはずでしょう? こんなところに来られるはずないじゃない」
「わざわざあの方が前線まで出てきたことがもし隣国に知られれば刺激してしまう。外交官たちの努力が水の泡だ」
ライラはエリクの話を聞いている内に身体中から血の気が引いていく。
クロードは女関係にはだらしない男だったが、軍人としては周辺国家に名将として知られている。
エリクの言っていることは理解できるが、どうしても納得いかない。
「……戦地に行く必要がなくなったからって、どうして瘴気の調査部隊を指揮することになるのよ」
「まあ、瘴気の脅威は恐ろしいものですからね。その調査となれば指揮官は有能な方でないといけませんから」
ライラは肩を落とす。そんなライラに構わずマスターは話を続けた。
「あなたがここにいるのす。中央軍がこの街へ来る正当な理由ができたのなら、そりゃあいつは来たがるでしょうね」
「――っ本当に面倒くさい男! なんで捨てた女をわざわざ追いかけてくるわけ?」
「それはご本人に聞いてください。侯爵閣下がいらっしゃるなんてこっちはいい迷惑ですよ」
マスターが面倒くさそうに言うので、ライラは腹が立って盛大に舌打ちをした。
すると、室内の空気が冷たくなってくる。
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