姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉

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――数日後


 朝食を食べ終えたソフィアが自室に戻ってくると、そこではルイースがせっせと何かを準備していた。

「ねえルイース、どうして乗馬服なんて手にしているの?」

「旦那さまが、本日のソフィア様のお支度をそのようにせよとおっしゃられておりましたので……」

 聞いていらっしゃらないのですか、とルイースは首を傾げる。

「朝食の時に、今日は一緒に出かけようと誘われたけれど、馬で行くとは言っていなかったわよ?」

 イーサンと執務室で話して以来、彼とはよく会話をするようになった。
 屋敷内で一緒に過ごす時間が圧倒的に増えた。しかし、外に出かけるということはこれまでになかった。
 無料診療の日ではないし、てっきり街中を案内してくれるのかと思っていた。わざわざ服装を指定してくるのだから、どこかへ遠乗りでもするつもりなのだろう。

「てっきり馬車で出かけると思っていたわ。乗馬服なんて久しぶりねえ」

「ご実家に居られたころは、根を詰めて何かをなさっていると、いきなり馬に乗って飛びだして行くことがありましたねえ」

「あはは、全身で風を感じると、頭がすっきりするのよね」

 ソフィアがルイースの用意した服を着て玄関の外に出ると、すでにイーサンは身支度を整えて待っていた。
 彼の傍には二頭の馬がいる。一頭はイーサンの愛馬で、もう一頭は初めて見る馬だった。

「この馬は君のものだ。好きにするといい」

 ソフィアがじっと馬を見つめていたからか、イーサンが手招きしながら言った。

「――っえ、この馬を私にくださるのですか?」

 驚いてソフィアがイーサンの顔を見上げると、彼は得意げに頷いた。

「エイナル殿に話を聞きに行ったのだ。君は馬を走らせるのが好きなのだろう? だから、喜ぶかと思ったのだ」

「はい! とても嬉しいです」

 ソフィアが満面の笑みで答えると、イーサンは安堵した顔をする。

 会話をするようになったとはいえ、寝室はいまだに別で夫婦らしい生活はない。
 今さらどうやって距離を詰めるべきなのかわからないというのが、正直なところだ。ここ数日は、お互いにきっかけをつかみかねているという雰囲気を感じている。
 今日の外出の誘いは、互いの距離を縮めるための策なのだろう。イーサンがいろいろと考えを巡らせてくれているのであれば、ソフィアは素直に嬉しいと思った。
 それに、わざわざイーサンがエイナルのところまで話を聞きに行ったというのは意外だった。ここ最近は叔父と和解するために行動しているところも目撃しているし、良い傾向だと思う。

「ではでは、私はこの子に乗ってよいのですね?」

 ソフィアは笑顔で馬を撫でながらイーサンに問いかけた。

「もちろん。ここから一時間ほどのところに別宅があるから、そこまで一緒に行こう」

「はい、喜んで」 

 ソフィアが馬に乗ろうとすると、イーサンが手を差し出してきた。ソフィアはその手を借りて馬に乗った。
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